FUJIROCK EXPRESS '23

LIVE REPORT - RED MARQUEE 7/30 SUN

SIRUP

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Posted on 2023.7.30 21:34

リアルなライブでしか救われない魂がある。

15曲。1時間のフェスのセットリストで15曲。そのせいでいつも恐ろしく長くなるMCは端的にまとめられていたけれど、それでも話す方だ。Soulfexという強靭なバンドの演奏もスタイリッシュな演出も、この場にいる人を一人も取りこぼさない空間作りも(そこに含まれるユーモアも)、社会に対する真摯なプロテストも、全部諦めない上で15曲なんである。こんなアーティスト、国内外でもほとんどいないんじゃないかと思う。

EP「BLUE BLUR」のツアーを経てきたから、バンドはもう出来上がりすぎるぐらい出来上がっている。レポートを書かなきゃいけないが、今日は踊る気、楽しむ気満々なんである。Soulflexの面々が現れるとソウルショーっぽいインストセッションでスタート。そして“スピード上げて”ではRED MARQUEEにどんどん人が増えてくる様子が嬉しいのか、シビアな内容の歌詞に関わらず思わず笑顔になるSIRUP。間を置かずどんどん演奏する。抜群のハイトーンで魅了する“Superpower”、背景に巨大水槽の映像が映し出され、面白い効果を生む“Pool”。初見の人も多そうだが、ボーカルの表現力で持っていく。セクシーでロマンティックな”Overnight“では映像でクラップする場所が分かるという、速攻で参加できる演出も。ぶっといベースラインで踊らずにいられない”Maigo“と、序盤で完全にダンスフロアと化すRED MARQUEE。

「2021年のテンションを取り戻しに来てます!」と言った時点では2021年のフジロック初出演のことだと思いつつ、ここにいる人の何割にそれが伝わったかな?という印象だった。まあ、冒頭から経緯を語るのもヤボではある。まあとにかく嬉しそうなのだ。だから可能な限り演奏し、歌う。AORの洒脱を感じるファンクナンバー“Rain”で、再び豊かなボーカル表現に圧倒され、「メロウに揺れて行きませんか?」の誘い文句からのイントロに一際大きい歓声が上がった“Loop”ではそこここでサビのシンガロングが起きた。エンディングのフェイクのうまさに痺れつつ、天井を見上げるとREDにはミラーボールが6個もあることをこの時遅ればせながら知った。深夜のダンスアクト仕様はSIRUPのライブの味方でもある。

SIRUPは曲の繋ぎで説明的になることなく、ちょっと唐突なぐらい語り出す。「見た目のこと言われんのダルない?好きな格好したらええやん」。そう、大阪弁で。ルッキズムについて自分の曲として消化できている日本の男性アーティストって、ほとんどいないんじゃないだろうか。今日はこの後、LIZZOが登場することも一つの線になっている感じだ。その曲“もったいない”はとても優しく誰をも認める曲だ。人の言葉を気にしている時間も、それで傷つくあなたの気持ちももったいない、と。そこから繊細極まりないラブソング“Hopeless Romantic”に繋いだのはなんとなく男子のマインドを救っている印象があった。

「フジロック、最高ですね。2年前は厳かな感じやったから、取り戻しに来て。こんなMCする時間もなさそうなぐらいセットリスト詰め込んできたから」と、先ほどのフリを回収しつつ、盛りだくさんのセットリストの理由も話す。が、どうしても一言だけ、と「戦争反対!差別反対!そういうの全部嫌い。あ、もう一つインボイス反対!」と、一瞬キョトンとするオーディエンスに説明を加えていく。若干、力技なのだが、自分の見解を示すことを彼はやめない。初めて見た人は後で「なんか言ってたな」ぐらいでも覚えていたら大成功だと思う。

どちらかといえばスイートだったりファンキーなナンバーで踊り続けてきた流れに、Skaaiを呼び込んでの“FINE LINE”はピリッとしたアクセントになり得ていたし、Skaaiのラップがフジロックで聴けたことも感慨深い。井上惇志のソロでバッチリ、エンディングが決まった。周りを見回すと見事にさまざまなオーディエンスがほとんど立ち去らずにこのグルーヴとSIRUPチームが作る居心地の良いセーフスペースで踊り続けている。バンドアンサンブルの良さもさまざまなリスナーを吸引する理由だろう。サックスソロがスイートだった“Need You Bad”、ともにアクションできる“BE THE GROOVE”、生活感を映すリラックスしたナンバー“SWIM”と、全く飽きさせず完全にこの場をロックしていく。完全にグルーヴが出来上がったところにお待ちかね、“DO WELL”のタイトルコールで、さらにブチ上がるオーディエンス。もうどうなってるんだ?全員ファンだった?という盛り上がりようである。初めてやってみる“Right Side、Left Side”のアクションもみんな楽しそうだ。

ぱつぱつに詰め込んで、もう少しで1時間経過しようとした時、ライブという場所について「俺もそっちにおることもよくあるから」と、音楽やアートでしか癒されない何かについて、癒されている友達をリアルで見た時の感動をもとに作られた“See You Again”を最後にセット。コロナ禍でライブから足が遠ざかっていた人も、沈んだ心が浮上するライブの瞬間を徐々に体感しているはずだ。このエンディングはSIRUPのライブでもあるし、久しぶりにほとんどの制限が解除された今年のフジロックにも共振する曲だった。

PS セットリストを詰め込みすぎたせいで、時間的な黄色信号をもらいつつも集合写真を撮影して、大急ぎで去って行ったのも思いの強さの表れだったのでは。

[写真:全10枚]

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7/30 SUNRED MARQUEE