FUJIROCK EXPRESS '23

LIVE REPORT - FIELD OF HEAVEN 7/29 SAT

優河 with 魔法バンド

  • 優河 with 魔法バンド
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Posted on 2023.7.29 13:37

歌を発する楽器のような

昼間の猛暑で初日から思いの外、体力を削られたものの、午前中の空気は美味しい。FIELD OF HEAVENのトップを務める優河 with 魔法バンドを見るために、ボードウォークを歩く。これはフジロック期間中に必ず体験した方がいい。もっと言うと、心地良すぎてここで優河のライブを音だけ聴くのも贅沢だなあと、重い足の言い訳を考えたりしている。

太陽から逃げ場のないHEAVENに出ると、ちょうどメンバーがステージに登場。全員、白からオフホワイト、ベージュの服で揃えている。優河がフルアコを弾き、歌い始めると、タイトル通り“さざ波よ”を擬似体験しているような気分に。彼女の声は爽やかな風というより、ちょっと冷たさもある流れる水に思える。いずれにしてもこんなに自然界の事象めいた声の持ち主は稀有だ。そしてメンバーが素晴らしい。千葉広樹(Ba)、岡田拓郎(Gt)、谷口 雄(Key)、神谷洵平(Dr)という、新世代のジャズやソウル、ニューエイジなどを抜群のスキルとセンスで切り開くアーティストばかりなのだから。

そんなバンドだから、簡単に形容はできないけれど、早くも冒頭3曲だけで、ニューエイジもフォークもネオソウルも楽しんだ。必要な音を遠慮なく鳴らしながら、その耳あたりはごく優しい。ハンドマイクで心の赴くままに動きながら歌う”June“で、さらに柔らかいのに軸に強さのある声に浸る。この灼熱の中で、動かずに省エネしながら、歌と演奏に耳を澄ますことにのみ体力を使っているようなオーディエンスに親近感を覚える。そう、ひたすら音を感じたいのである。

メンバー紹介のあと、新曲を披露する旨を告げ、“遠い朝”を披露。岡田のシンセのようなギターサウンドがイマジネーションを拡張してくれる。続く“夏の窓”では神谷のマレット使いが悠久の時間を作り出し、気分はHEAVEN。これが20℃ぐらいの薄曇りなら間違いなく幸せすぎて心身共に最高のコンディションを獲得できるはず。逆にそのシチュエーションは今後体験できなくもないのだ。

エゴがなくはないのだが、優河を見ているとだんだん歌を発する楽器のように見えてきて、あながち彼女の音楽の特徴と遠くない気がしてくる。

「とっても気持ちいい森ですね」

彼女の感想はそのまま彼女の音楽に返したい。最もポピュラリティのあるレパートリー“灯火”の歌い出しのキーを間違え、「間違えた!あぶねー!」と、一瞬素を出したところすら自然で、もっとこの声と声のようなアンサンブルに浸っていたいと思った。同時に魔法バンドは“魔法”を名乗るにふさわしい、現代の秘技の使い手集団でもあった。素晴らしいライブを見られた。

[写真:全10枚]

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7/29 SATFIELD OF HEAVEN