LIVE REPORT - FIELD OF HEAVEN 7/30 SUN
OKI DUB AINU BAND
Posted on 2023.8.1 00:39
自然と音と一体になる、神聖な空間
灼熱のフィールド・オブ・ヘブンに涼しい風を吹かせてくれたのは、OKI DUB AINU BANDだ。アイヌ民族に伝わる楽器「トンコリ」の奏者であるOKI (Vo/Tonkori)を中心としたグループで、フジロックには7年ぶりの登場だ。ステージにはHAKASE-SUN (Key)、Rekpo (Vo/Dance/Tonkori)、OKI (Vo/Tonkori)、Manaw (Tonkori/ Vo/Perc.)、奥に沼澤尚 (Dr)、中條卓 (Ba)が並ぶ。OKIとManawはアイヌの民族衣装を、Rekpoはアイヌ文様の書かれた着物を着て登場した。
まずはトンコリの音をアルペジオでゆっくり聴かせてくれると、“CITY OF ALEPPO”が始まる。どっしりとした沼澤のドラミング、エッジの効いた中條のベース。そのバンド名の通り、ダブ・ミュージックが展開されていく。OKIの奏でるトンコリは自然と共鳴して、空気や風を通すような透明感がある。「神聖な楽器」ともいわれるその不思議な魅力に早くも惹かれてしまった。“Topattumi”ではManawもトンコリを持つ。爪弾きではなくストロークするようなかたちで音が奏でられると、三味線のような強さと濁りを持つ音に変化した。コーンと抜けのよいドラム、ドープなベースライン。語り舞うようなOKIの歌声……音が止むと、そこかしこから「最高!」の声が集まった。
“KON KON”では、観客とOKIが交互に歌うことになったのだが、覚えるフレーズが長くてかなり複雑!OKIは数小節を一気に歌い上げ、こちらに「ハイ!」と簡単に投げかけてくるものだから、びっくりしつつも笑ってしまった。ぎこちなくて自信のない観客の歌ぶりだったけど、両手で丸を作ってOKサインをしてくれるOKI、なんと優しいことか。何度も何度も歌ってみるとコツは掴めて、観客とバンドの距離もぐっと近くなったと思った。
OKIの地元・旭川の遊び歌だという“ムイソー”の輪唱では、Rekpo、OKI、Manawの順に掛け声や言葉を重ねて繰り返していく。耳を済ますと、声でしか構成されていないのに、声の形をしていないあらゆる声が聞こえてきて面白い。祭りのような賑やかさに、心の底から熱い気持ちが沸き上がる。「スキーの歌」と紹介して始まった“ANKISMA KAA KA”は、雪山を滑走していくようなスピード感で爽快なスノー・ダブだった。
Rekpoもトンコリに持ち替えて、3本のトンコリで奏でられる“SAKHALIN ROCK”は、彼らの楽曲のなかでも少し毛色の異なるロック・ナンバーだ。どこかカントリー・ソングっぽさもあり、途中でジャズのような進化もするが、OKIが叫ぶ〈SAKHALIN ROCK!〉の一言は、思わず拳を上に突き上げたくなる。
オーディエンスのラブコールを受け、「滅びかけたトンコリだけど、ご先祖さまも喜んでいるよ!」と喜ぶOKI。自分のルーツを引き受け、表現を選んだOKIの思いが、この一言にあふれ出ている気がした。彼らの音楽は、この世に存在するあらゆる魂を、ありのままに肯定してくれる博愛心に満ちていた。
[写真:全10枚]