MOREFUN - AREA REPORT 7/28 FRI
僕たちがフジロックに行く理由
非日常の中に見出す日常
「実家に帰る感じですかね」
取材をしていると、コロナ禍を経て3年ぶりにフジロックに帰ってきたという人に出会った。実家に帰る感じ。言い得て妙だ。確かに、コロナ禍では実家に帰れなかった人も多いだろう。多少緩和された今年、帰省するお客さんも多いようだった。
「フジロックは非日常」とも言われる。極めて日常だからこそ、居心地が良いのが実家なのに、非日常のフジロックが実家と称されいるのは、どんな感覚なんだろう。単純にフジロッカーがぶっ飛んでいるのか?
初日のグリーンでのアクトが始まる前、恒例の封切りのMCで原島さんが「フルスペックのフジロック」と言っていた。フルスペックという言葉に観客も沸く。忌野清志郎が作ったフジロックのテーマソング“田舎へ行こう”が流れ、グリーンにいる観客が映し出されると、そこには僕たちが思うフジロックの光景が広がっていた。ここで改めて帰ってきたなあ、と思うのだけれど、今年は戻ったなあという感覚の方が強かった。
そしていよいよ、FEVER333が呼び込まれる。本当に一発目ですか? と感じるほどの熱量で盛り上げてくれる。こういうのって日本のバンドにはないパワーがあるんだよな。青空の下、グリーンステージの爆音、海外バンドの本気の叫び。そのひとつひとつにフジロックのエッセンスを感じて、琴線に触れるのだ。きっとこうやって感動するために、フジロックに来ているんだろう。
キャンプサイトにいたとあるお客さんがこう言っていた。
「前日までずっと緊張しているんですよ。ああ、今年も過酷なんだろうなって」
「準備とかも大変ですしね」
「実際来てみても、楽しさ2:辛さ8とかなんですけどね(笑)」
「どうしてフジロックにくるんですか?」
「ここでしか楽しめないことがあるからじゃないですかね」
初めてフジロックに来たとき、会場の規模の大きさや日常では考えられないようなことが起こるたびに、心が躍ったのを覚えている。雨の中テントを張り、当たり前のように斜面で寝た。それでも、どうして、こんなことしているんだろうとは思わなかった。翌年、当たり前のようにフジロックに行き、去年とはちょっとマシな過ごし方をして、また来年を迎える。その繰り返し。でもその過程では、友達が増えたり、毎回いるスペースができてきたりと、この広い苗場の会場の中に少しずつ自分の居場所ができてくることを実感する。その繰り返しできっと実家のような居心地の良さを生むのかもしれない。
非日常の中の日常。これがフジロックに魅了されるひとつの理由なのだろう。