FUJIROCK EXPRESS '24

LIVE REPORT - WHITE STAGE 7/28 SUN

THE JESUS AND MARY CHAIN

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PHOTO BY古川喜隆
TEXT BY三浦孝文

Posted on 2024.7.28 23:45

いつもと変わらぬ表現をただそこで

ジーザス&メリー・チェイン(以下メリチェン)が初めて苗場の地を踏みしめる。今年でデビュー40周年を迎え、新譜『Glasgow Eyes』を今年リリースしたばかりという絶妙なタイミングだ。言わずと知れた、シューゲイザーやオルタナティヴ系の後進アーティストたちの大きな影響源で、広く愛される数々のカタログを持つバンド。しかも出演するステージがホワイトステージときた。今に伝わる1999年のアンダーワールドをはじめ、極上のサウンドを創ってきたあそこでメリチェンがどう響くのか、観ないわけにはいかない。

早くも最終日を迎えたフジロック、16時過ぎ。曇り空に覆われ、雨がぱらついている。メリチェンは晴天よりは曇天で正解だろう。“Happy When It Rains”とか歌っているわけだし。お馴染みの「JESUS」と描かれたアンプが立ち並んでいる。開演前から多くの人が集結している。なかなかステージ前方の方へ行けないほど。さすがはUKロックの重鎮といったところか。メリチェンTをまとっている気合の入ったファンたちから、勝手な印象だがメリチェンを聴いたこともなかろうと思われるようなラッパー風の一団まで。様々な世代、性別、国の人たちがその登場を待ちわびている雰囲気だ。

無機質な電子ビートが鳴り響きバックにサイケデリックで雑なノイズ映像が流れる。これだけでメリチェンと一発で分かるのだから、やはり凄い。音だけではなくヴィジュアルやイメージにおいても、唯一無二の世界観を創り上げている。上下黒のシックな装いで統一したジムとウィリアムのリード兄弟とバンドがステージに登場。ベーシストは、プライマル・スクリームのシモーヌ・バトラーだ。最新作『Glasgow Eyes』からの最初のシングルとして先行リリースされた“Jamcod”から開演。倦怠感の漂うサウンドの上を気だるく歌うジム。フジロックだから、苗場の環境だからといって彼らの表現は何ひとつ変わらない。

「フジロック、良いヴァイブスだな」とジムが語りかけ“Happy When It Rains”と“Head On”を立て続けに披露。スモークがステージを覆い、霧の中にいる雰囲気の中でキャッチーなメロディが疾走感をもって駆け抜けていく。 バックの映像にメリチェンのアルバムやシングルなど過去カタログのジャケットが次々と映し出される中“All Things Pass”が披露された。40年間色んなところを通ってきて、今ここに立っている。淡々と演奏している中に、矜持が込められているように感じたのは私だけだろうか。

プリズムのような帯状の線が上から下へ流れていく映像が流れ、再び『Glasgow Eyes』からのシングル曲“Chemical Animal”へ。ギターの音が控えめなミニマルな音構成の本曲ではベースとドラムのビートが際立っている。ここホワイトステージならではの素晴らしい音響だ。続く“Some Candy Talking”のフック部で大歓声でに包まれ、疾走する佳曲“Far Gone and Out”の間奏部におけるベースとドラムが生み出すグルーヴの影響でオーディエンスも熱が入ってきたようだ。クラウドが波打っているのが見える。これに応えるかのように“Blues From a Gun”と名曲を連打してくるのだ。

ノイズまみれでひた走る初期のパンクチューン“In a Hole”。大ベテランにもかかわらず、いい意味でアマチュア感が抜けないメリチェンを体現するような曲だ。ウィリアムが十八番のフィードバックノイズを放出する怒涛のセッションで初期衝動感伴う締めくくりを披露。

続く2曲は女性ボーカルを迎えて歌う曲だ。まずはシモーヌが歌う“Something Always”。どこかアメリカ往年のルーツミュージックへの憧憬を感じるメロディと展開がとても心地よい。“Girl 71”ではゲストのレイチェル(Rachel Conti)が登場。終始ジムと手を握り恋人同士のような掛け合いをしたわけで、「誰!?」という感じだったと思うが、この記事によるとどうやらジムのパートナーのようだ。本曲の音源に吹き込まれているのも彼女の声とのこと。

続く“Darklands” から”Just Like Honey”の流れ。苗場の美しい木々に囲まれたこの環境で、誰もが親しめるメロディを堪能し歌う。極上の体験だ。

「立って観てくれてありがとう」とジムが感謝を伝える。淡々としていて愛想がないので、誤解されがちなリード兄弟だが、そんなことはない。真摯で真面目な人間性がジムの言葉や態度から伝わってくる。メリチェンのライヴでは定番の締め曲であり、理想の死に方願望ソング“Reverence”がはじまった。バックに過去作のジャケット、やメンバーの写真、スター、カセットテープにネオンサイン、ロバート・ジョンソンの写真やザ・クラッシュの『White Riot』のジャケットなどの画像が次々と差し込まれ、ギラギラと目を刺激する。何ともザ・メリチェンな世界観だ。冒頭の長いセッションでウィリアムがギターでノイズをまき散らし、フロアをガンガンに揺らせる。予定時刻を過ぎるまで音を出力し、ギターの残響を残してステージを後にした。ウィリアムが去り際、にこやかにフロアに向かってピースサインとそれを裏返したサイン(UK流のアレ)を繰り返し、投げキッスを飛ばした。

いつもと何も変わらぬあり方で、ただメリチェンでしかあり得ない世界観を苗場の地で描き切ってくれた。やっぱりメリチェンはめちゃめちゃかっこいいのである。

[写真:全10枚]

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7/28 SUNWHITE STAGE