FUJIROCK EXPRESS '24

LIVE REPORT - GREEN STAGE 7/28 SUN

NOEL GALLAGHER’S HIGH FLYING BIRDS

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Posted on 2024.7.29 01:00

ファンのためのものでもあった「原点回帰」

昨年12月に行われたノエル・ギャラガーズ・ハイ・フライング・バーズ(以下NGHFB)のジャパンツアーは、東名阪4公演全てがソールドアウト。新たなフェーズに突入しつつあるノエル・ギャラガー(Vo/Gt)の現在はミュージシャンとしても、ソングライターとしても、(何度目かの)円熟期に入っている。そのキーとなっているのは、最新アルバム『Council Skies』のテーマ「原点回帰」だ。昨年の単独ライブは、直近の曲から始まりオアシス時代まで時を遡るようなセットリストになっていて、その流れはまさに“原点”に“回帰”していく物語のようだった。そして、この日のヘッドライン・ステージもまた「原点回帰」なライブだった。

21時10分、ジョン・ポール・ジョーンズ(レッド・ツェッペリン)の“4-Minute Warning”をBGMにメンバーたちが入場。メンバーは、ノエルをはじめ、元オアシスのゲム・アーチャー(Gt)とクリス・シャーロック(Dr)に、同じく元オアシスのセッション・ピアニストだったマイク・ロウ(Key/Pf)、そしてNGHFB初期からツアーに参加していた元ザ・ズートンズのラッセル・プリチャード(Ba/Cho)。さらには前回のツアーから参加しているジェシカ・グリーンフィールド(Key/Ma/Cho)に、サポートのキーボーディスト1名と、コーラス隊が3名の10人編成。加えて、曲によってはホーン隊3名も登場するので最多13人編成、これはおそらくNGHFB史上最多人数の編成だ。

そんな豪華絢爛なバンド編成によるライブは、『Council Skies』からドラムマシーンのビートとダークさが感じられる“Pretty Boy”でスタート。続く最新アルバムのタイトルトラックでもある “Council Skies”はノエルにとっては新機軸のサウンドデザインで、トロピカルなリズムにビートとサウンド、そしてそこに生まれる緩やかなグルーヴが心地良い。NGHFB以降のノエル節全開の“We’re Gonna Get There in the End”や“Open the Door, See What You Find”からは、どちらもブリットなグッドメロディで、どうしても体を揺らさずにはいられない。

と、ここまで『Council Skies』からの曲が続いたが、ここからは新旧そして緩急のある展開をみせる。疾走感が心地よいギターロックの“You Know We Can’t Go Back”に、しっとりとしたバラードソングの“We’re On Our Way Now”と続き、“In the Heat of the Moment”ではノエル流ダンス・ポップ・チューンにオーディエンスを踊らせた。NGHFBも原点回帰するならば”If I Had A Gun…”や “AKA… What a Life!”も外せない。”If I〜”ではシンガロングも起き、”What a Life!” ではしっかりオーディエンスを踊らせ、改めて初期曲の人気の高さを感じさせる。ノエルとマイクだけを残し、他のメンバーが退出すると、まるでオーディエンスの昂った気持ちを落ち着かせるように、改めてノエルの天才っぷりを思い知らされる超名曲“Dead in the Water”をアコースティックスタイルで広大なグリーン・ステージに鳴り響かせる。曲が終わると、自然発生的に大歓声と拍手が湧き上がった。

この日のノエルはいつも以上にMC少なめで、口に出しても「ハロー」や「センキュー・ベリー・マッチ」くらいだったのだが、ひとつだけ印象的なやり取りがあった。客席最前列にサングラスをかけ “リアム立ち” をしていたファンに対して、「お前は(リアムの)スパイか?」といつものプチ毒舌を放っていた。そのあまりにノエルらしい毒舌っぷりに、特に機嫌が悪いわけじゃなかったんだなと少しホッとした。こういう瞬間はノエルのライブならでは。

しばしの静寂を挟み、みんな待ってましたのオアシスタイムに突入する。いつものライブならオアシス曲は演っても3,4曲くらいなのだが、今回のツアーでは全く惜しまず、しかも畳み掛けるように披露した。まずはB面曲集から“Going Nowhere”と“Talk Tonight”。“Going Nowhere”は今回のツアーで多くの会場のセットリストに組み込まれているのだが、書来ているのが必ずしもファンだけではないフェスティバルにおいては、初めて聴いたファンも多かったかもしれない。そんなファンへのプレゼントか、13人編成の強みを活かした新アレンジによる “Whatever”から始まり、“Half The World Away”、“The Masterplan”、“Little By Little”とシンガロング連発の時間はファンにとって最高の時間だった。本編ラストはおそらく日本初披露となる、同郷マンチェスターのポスト・パンクバンド、ジョイ・ディヴィジョンの名曲“Love Will Tear Us Apart”で締めた。

まだまだ物足りていないオーディエンスから、アンコールを催促するハンズクラップ音がグリーンの空間を充満する。間も無くメンバーたちが再登場すると“Stand By Me”を披露。全力でシンガロングしきったという満足感が残る中、ノエルのアコギの音と共にアンビエントなイントロで始まったのが“Live Forever”。グリーン・ステージ全体に響き渡る美しいアレンジによるサウンド、包み込むようなノエルのヴォーカル、無数の羽が舞う背景映像、それらがすべて合わさって、グリーンをスペシャルな空間に仕立てあげた。

ノエル・ギャラガーズ・ハイ・フライング・バーズ、9年ぶりのフジロックでのライブは、過去2回の出演時よりも、穏やかで温かくて優しいライブだった。そのラストを飾るのは、ロック界を代表するアンセム“Don’t Look Back In Anger”だ。オアシスファンにとって、ファンの皆と共に大合唱することの幸せを教えてくれたのはこの曲で、その曲がいつしか「オアシス/ノエルの歌」でなく「みんなの歌」になったことの喜びは、ファンにとっての大事な宝物である。だからこそ、ここ苗場で僕らは全力で歌うんだ───と、そんなことを再認識できたこの日のライブは、僕らにとっての「原点回帰」だったような気がする。

<セットリスト>
01. Pretty Boy
02. Council Skies
03. We’re Gonna Get There In The End
04. Open the Door, See What You Find
05. You Know We Can’t Go Back
06. We’re On Our Way Now
07. In the Heat Of The Moment
08. If I Had A Gun…
09. AKA… What a Life!
10. Dead In The Water
11. Going Nowhere (Oasis cover)
12. Talk Tonight (Oasis cover)
13. Whatever (Oasis cover)
14. Half The World Away (Oasis cover)
15. The Masterplan (Oasis cover)
16. Little By Little (Oasis cover)
17. Love Will Tear Us Apart (Joy Division cover)
─ENCORE─
18. Stand by Me (Oasis cover)
19. Live Forever (Oasis cover)
20. Don’t Look Back in Anger (Oasis cover)

[写真:全10枚]

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7/28 SUNGREEN STAGE