FUJIROCK EXPRESS '24

LIVE REPORT - WHITE STAGE 7/27 SAT

くるり

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Posted on 2024.7.28 01:59

21年ぶりのWHITE STAGE。とめどない挑戦と感謝の1時間

MCで岸田繁(Vo,Gt)も話していたが、フジロック初年度も2年目もオーディエンスとして参加し、苗場初年度の1999年には現在のROOKIE A GO-GOの前身であるリーバイスニューステージ。以降も2001年にはFIELD OF HEAVEN、2003年には今日と同じくWHITE STAGE、2005年にはGREEN STAGEに立ち、以降もコンスタントに出演を果たしている。日本国内のアーティストでくるりほどフジロックとバンドのキャリアが密接に絡んでいるバンドはいないだろう。90年代の豊かなオルタナティヴロックの重要バンドが日本で初めての本格的な野外フェスに出演するという黎明期の体験はもし今回、初回にも参加した人がいるならどれだけ重要なものか理解できると思う。

そして今年は苗場開催25回目。前回が2021年、まだコロナ禍の厳しい状況下でのGREEN STAGEだったことを考えるとかなり対照的なムードかもしれない。18時近くなってもまだまだ暑いWHITE STAGEに続々オーディエンスが集まり、最終的には入場規制となった。これは曲の強さのなせる技だろう。お揃いのテキスタイルのシャツやパンツを着たメンバーが前から見るとほぼ横一列に位置に着くと、オープナーは前回のラストナンバー“奇跡”だ。こんなの号泣である。勝手な想像だと、2021年からわれわれはいろんな苦悩を乗り越えてここで再会したのだ。それにしても岸田のボーカルは素直に上手くなっている。昨年、彼らが主催する「京都音楽博覧会」でも感じたが、さらに上回っている。層の厚いオーディエンスが感極まる中、“Morning Paper”でタメては走り出す、あのカタルシスを作り出し、さらに“ロックンロール”で各々好き勝手なシンガロングが巻き起こる。ロックンロールの髄を2024年に前進し続けるバンドらしく、アンサンブルに贅肉が全くない。それでいて豊かという、めちゃくちゃいい素材の料理のように演奏が更新されている。最近ライブで聴いた記憶のない“コンバットダンス”では野崎泰弘(Key,Cho)のクラビネットがムッチリしたリフを響かせた。

「ちょっと休憩するか」と、水分補給タイムをとったあと、噺家口調で「こんにちは、くるりです」と挨拶する岸田。そして入念なチューニング。時代はグッと最近になり、“California coconuts”。それでももう1年ほど経過しているのかと、ちょっと驚いてしまう。変わっていく雲の形を追いながら聴くくるりのなんと贅沢なことか。そしてフジロックの出演回数は数えていないという岸田に、WHITE STAGEは2003年以来だと佐藤征史(Ba,Cho)が助け舟を出し、改めて岸田が「ただいま」の一言。彼にとってはステージごとに異なるマインドセットがあるんだろうか。そんなMCの後に相応しいくるりがくるりをオマージュした印象の“朝顔”が披露される。リフや構成が“ばらの花”と酷似しているので、「???」となっているオーディエンスもいた様子。ぜひアルバム『感覚は道標』通して聴いていただきたい。ちなみにライブではギターの逆再生を生で弾く松本大樹(Gt)に見入ってしまった。

そして現在進行中のツアーでは演奏しているのかもしれないが、岸田が鍵盤ハーモニカを吹き、ダブっぽい印象を与えつつ、言葉の断片が生むケチャのようなループ感が面白い“永遠”。そして“WORLD’S END SUPERNOVA”に接続していく流れ。生演奏でこのビートの精緻さはすごい。ダンスミュージックの悦楽がありつつ、みんなシンガロングもしている。幸せすぎる。続いてUCARY&THE VALENTINEをゲストボーカルに迎えた“琥珀色の街、上海蟹の朝”。UCARYの甘み濃いめの声と、ラップ部分の精度が上がった岸田との対比も楽しいし、佐藤のベースはずっと聴いていたい練度だ。世の中に出た時からどれだけアップデートを重ねてきたのだろう。

最終盤、珍しくくるりにとってのフジロック、ひいてはロックがなんなのかを話した岸田。「僕はどこでも100%のステージをしますけど、(フジロックには)ほんまに出たかったんです」という。そしてフジロックで様々な音楽を体験すると「ロックってなんやろな?と思うけど、みなさん友達と来たり、恋人と来たり、上司と来たり……」、そこでオーディエンスから笑いが起こる。「してると思いますけど、一緒にいても孤独やんか。そばにいて一緒に走る音楽がロックちゃうかなと」(いうような意味)と発言した。ああ、なんだかその感じはずっと変わらないし、岸田繁というアーティストを駆動させてきた理由なんだろうなと思う。

ラストは近年のレパートリー屈指の名曲“潮風のアリア”だった。ベタに言うと、続いていく人生そのもののような曲だと思う。この日のセットリストには挑戦を続けるくるりも素直な感謝も含まれていた。次回は21年も開かないといいのだけど。

[写真:全10枚]

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7/27 SATWHITE STAGE