FUJIROCK EXPRESS '24

LIVE REPORT - GYPSY AVALON 7/28 SUN

アトミック・カフェ いとうせいこう is the poet with 町田康

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Posted on 2024.7.28 17:37

いとうせいこうと町田康。言葉の賢人二人がアヴァロンに立つ

フジロックの特徴として、ライブステージ以外に社会の課題について共に考え、発信するアトミック・カフェの存在がある。普段、社会的なテーマをもつトークライブなどに出かけない人も、Gypsy Avalonでご飯を食べたついでだったり、ここで行われるライブの前後に足を止める人もいると思う。グラストンバリーには数多のライブ以外のブースがあるそうだが、日本、いや、世界のフェスでも珍しい存在ではある。

今年は「The Atomic Caféの40年」「戦争と平和」「民主主義と自治」についてのトーク、そしてライブにはTOKYO TANAKA from MAN WITH A MISSION、七尾旅人、夏川りみ、ここで紹介するいとうせいこうis the poet with町田康が出演した。TOKYO TANAKAの登場は、ロックバンドのフロントマンということでちょっと珍しかったと思うし、“愛と平和”タオルを首に巻いた地球外生命体のDJはこれからいろんなアーティストが参加するきっかけになるんじゃないだろうか。

いとうせいこう is the poetは名前の通り、「ダブポエトリーユニットで、いとう自身の小説や詩、演説などの一節を即興音楽に合わせてその場で選びながら読んでいき、常にそれをダブ処理することで音と言葉を拮抗させる」と、“ITP”のXのプロフィールにある。それを可能にしているのは強力なバンドメンバー、Watusi(Ba)、會田茂一(Gt)、佐野康夫 (Dr)、 龍山一平(Key)/コバヤシケン(Sax)、SAKI(Tp)、ミキサーのDUB MASTER X (DUB MIX)の手腕だ。

活字もラップもとにかく常に言葉にするスピードと質に圧倒されるいとうの表現。この日は“POEM FOR GAZA”と題し、彼の地にいると友人に向けたという詩をタフな語調で綴っていく。私の友人を撃つな、高齢であっても撃つな、死んでいても撃つな、というごく真っ当な言葉から始まり、主義主張や宗教観が違っても共存してきた人間の歴史を終焉させるなという意味の言葉が続く。自分では発する機会がないけれど、誰もが思っていることだろう。音に言葉が乗ることで、この場では共通認識が生まれる。音楽のなせる技だ。

そして町田康が呼び込まれる。いとうの方が年上ではあるが、日本のパンク黎明期の突出した存在として注目し、今は稀な文学者になったことを尊敬していると話す、町田は先日、歌集『くるぶし』を刊行。本作からのいくつかの短歌に、この日のためにも書き下ろしたという短歌の原稿を束で持って現れた。詳細な言葉はわからないのだけれど、人間の尊厳に関する哲学が研ぎ澄まされた言葉に刻まれていたと思う。町田がいきなり河内弁丸出しで語気荒く「おどれは家で饂飩食うとれ!」と放った瞬間、個人的にはやはりこの人はパンク歌手であるよ、と笑いながら震えた。最近の朗読会などでどんな表現をしているのか知らないのだけれど、ダブの上で言葉を放ち合ういとうと町田はプロテストというより、歌をうたっていた。

残り2分と進行担当に知らされたいとうは2分で詠める一節を町田に選んでもらう。原稿用紙の束から選んだ言葉をアドリブのフロウも織り交ぜ展開。言葉の賢人二人の迫力は身一つでできる表現の極地を示した。たかが言葉されど言葉。言わなきゃ、書かなきゃ始まらないことがたくさんある。

[写真:全10枚]

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7/28 SUNGYPSY AVALON