LIVE REPORT - PYRAMID GARDEN 7/28 SUN
あらかじめ決められた恋人たちへ
Posted on 2024.7.29 03:04
帰りたくない人たちの夜
最終日の夜のPyramid Gardenは「まだ帰りたくない」人たちが続々やってくる。しかもまだまだ美味しい料理もお酒もある場所だけに、全然終わる気がしない。あらかじめ決められた恋人たちへの6人はかなり綿密にサウンドチェックを行っていることが、だいぶ遠くの苗プリの裏道まで聴こえてきていた。ステージ前にたどり着くと、サウンドチェックの段階ですでに熱演なんである。どうなるんだ、本編は。
オープナーは風がすり抜けていくようなSEから、“Round”が始まる。新作『響鳴』の1曲目を持ってきたのは今年のモードということだろう。薄暗がりのステージから発される演奏は生き物の蠢きのようでもあり、夜に外で聴くダブは格別だ。そしてアルバムの曲順と同じく“Stance”が始まる。池永正二の鍵盤ハーモニカはそろそろ夜もふける空間に夕焼けを感じさせるから、音色とは本当に不思議だ。OHTAKEKOHHAN(Gt)のブルージーなフレージング、幽玄なクリテツのテルミンの音色で時間帯が深まっていく感じだ。もちろん、音源と違いアンサンブルの生々しさは何倍にも増して、あら恋らしいメンバー各々の突発的なアクションも増えていく。3曲目に“Come”をセットしたところまでは新作からのチョイスで、一つの流れを作っていた。
それにしてもPyramidでのフルバンドの音響がこんなにいいなんて。これまでアコースティックか小編成のライブしか見たことがなかったので、これは新しい発見だった。中盤には風が強さを増し、なぜかそれと同時にさらに人も増えてきた。やはりまだ帰りたくない人が多いんだろう。
ループする鍵盤の音に明るさを感じるイントロの“前日”で軽快なインストロックに雰囲気が変わり、さらに“Back”と、人力トランスにも似た曲が続き、何度もためてはギターソロなどで小爆発と大爆発を繰り返す演奏に歓声が上がる。前方で体を揺らしている人も、焚き火を囲んでいる人も、みんなこのループにハマってなんとなく同調しているのがわかる。ライブが心地いいのは多分その安心感だ。しかもステージの上方はスモークじゃなく、天然のスモーク、霧がたなびき、あの緑色の光が反射してちょっと宇宙的。昼間と違って見える巨木も演出に一役買っている。そしてあら恋の演奏にすごく合う。
ラストは穏やかに始まり徐々に躍動感を増していく“火花”。メンバーそれぞれの見せ場も盛り込み、ステージの照明も明るさを増し、最終的に全体像が掴める明るさになったところで池永の大きな身振りとともに演奏はエンディングを迎えた。後半に派手になるというより、見えなかったものが見えるようになる、そんな演出に思えて深く感銘した。やまない拍手と歓声に応え、急遽アンコールも行った。さて宵っぱりたちはこの後どこにいくのだろう。お酒が進みそうなステージだったから、多分まだ終われない、ですよね。
[写真:全10枚]