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ジャパンシネモービル株式会社 佐々木元庸さんインタビュー
Posted on 2024.7.27 13:20
アーティストの搬送からFUJI ROCK go roundまで、会場内を走り回る
フジロック会場を歩いていると、「車両が通ります!」と声をかけられること、多いですよね。そこで通過するマイクロバスには、ステージ間を移動するスタッフやアーティストが乗っています。さらに昨年のFUJI ROCK PLUSや今年から始まっているFUJI ROCK go round(関連記事はこちら)では、お客さん専用の会場内を横断できるバスも運行しています。これらの車両手配と運行を担っているのが、ジャパンシネモービル株式会社さん。聞けば、フジロックとは98年からの付き合いだとか。ジャパンシネモービル株式会社の佐々木元庸さんに話を聞いてきました。
――早速ですが、ジャパンシネモービル株式会社さんってどんな会社なんですか?
撮影やイベント案件に特化したバスの会社です。ロケバスの会社って、例えば、映画、ドラマ、広告、テレビみたいに、畑が分かれているんですよ。それぞれに特化したバス会社があるんです。
――フジロックに関わったのは、いつ頃からなんですか?
1998年豊洲からです。97年の天神山では、観光バスが運行していたと思うんですが、観光バスの会社っていろいろ制約があって、フレキシブルに対応できないことがあったようで。
当時都内に、我々のような業態のバス会社が6社くらいしかなかったので、ウチに日高さんが電話をくれたんです。それからフジロックには毎年入ってます。
――マイクロバスの数が多いですが、会期中かなりの数が運行していますよね。
そうですね。アーティストの来日から帰国まで合わせると380本ほど出ていますね。
――アーティストの迎えにも行くんですか?
空港まで迎えに行って、東京のホテルに連れてきて、ここでオフがあるアーティストは買い物したりとか、それで苗場に入って、苗場からまた空港まで全て含めてですね。
――結構長期的な仕事になるんですね。
大体ロンドンのチームが来るのが7月15日くらいからで、アーティストの来日が始まって、フジが終わったら大体1週間後ぐらいですかね。みんな帰るの。その後、スマッシュの単独公演とがあるとまた稼働したりしますよ。
――現場では佐々木さんは何をしているんですか?
5日間の全ステージのアーティストの送迎をまとめています。各ステージのバンドとクルーとファミリーみたいに、乗る人リストが送られてきて、これら全部、分刻みでなんです。それを全部時間内に全ステージに並び替えて……。めちゃくちゃずっとパズルなんです(笑)。
――うわー。しかもそれ予定通りに行かないですよね。そういうときはどうやって対応するんですか?
そりゃもうワカチコワカチコですよ(笑)。ちっちゃいことは気にしない! これで3日間乗り切るから。イライラしても何も解決しないですからね。
――FUJI ROCK go roundのバスも走らせていますよね。
そうですね。マイクロバス6台で動いていますね。
――利用しているお客さんも多いですね。
朝ステージが始まる時間とか、あとヘッドライナーが絡む時間帯とかに混む印象ですね。
――アーティスト搬送だけでもこれだけ大変なのに、客動線のバスも増やすって話が来たとき、どう感じました?
よく考えたなあと思いました。お客さんにとってはめちゃくちゃありがたいことじゃないですか。お客さんは全部徒歩で、重たい荷物持ってキャンプ場にも行くしね。その話を聞いたときには絶対あってもいいなと思って。
――できるできないは考えなかった?
とりあえず、やれるやれないだと分からなかったから、やっていきましょう! ですよね。やりながらこうした方がいいとか考えていけばいい。0スタートなので、やってみないと分からないですねっていう気持ちの方が先行していました。これでうまく回るんだったら、絶対にお客さんが欲しいものだと思うので。痒いところに手が届いているから。
――アーティスト搬送も担っているということで、何か印象に残っているエピソードはありますか?
いろいろありますねぇ。例えば昨日の話だと、ドイツからバンドが入ってくる予定だったんですけど、飛行機がデモで飛ばないってなって。あれ、これ当日キャンセルか? みたいになったんですけど、どうにか頑張って来日して。それで苗場についたのは、オンタイム10分前。もう速攻で受付して、そのままステージ向かって演奏! みたいな。結局間に合ったんですけど、あれはシビれましたね。
――すごい話ですね。
あとは、ヘッドライナー級のアーティストとかだと、演奏後すぐに帰ったりするんですよ。すごかったのは、演奏終わって、まだ余韻の音が鳴っているのに、待機しているバスに乗って帰っちゃうみたいな(笑)。早っ! ってなりました。
――お客さんもまだ声援とか上げてるのに(笑)。あとは苗場入る前のオフも付き合ったりするんですよね?
去年は、ヘッドライナーのジャック・ホワイトを担当していて、買い物も付き合いましたね。先に僕は苗場入りして、「じゃあ後でね!」なんて言いながら別れたんですけど、後日担当の通訳さんから連絡が入って、ジャックがお礼をしたいから連絡先を教えてくれって。それで、いきなりイギリスから会社に小包が届いて、お礼の品が入ってて。ジャックからも「あのときはありがとう、楽しかったよ」ってメッセージをくれたんです。やばい、これは一生飾ろうってなりました。もう一気にファンになりますよね。
――めっちゃ良いエピソードですね。そしてジャック最高!
あと、今年ノエルが出ますけど、前回出たとき、ジャックのときのように僕が対応していて。苗場入り前に、銀座で買い物していたんだけど、ノエルが気に入ったパンツがあったんですよね。それで、彼はそれを着てフジロックに出たいんだ! ってなって。採寸とか間に合うのか微妙だったんですけど、アパレル側も頑張ってくれたんです。ノエルはもう苗場入りしていて、マネージャーや通訳は彼と一緒にいなきゃいけないから、僕がそのパンツを銀座まで取りに行ったんです(笑)。そのとき駐禁切られたんですけどね……。
――え!? それ先方には伝えたんですか?
言えないですよね(笑)。
――すごい。ノエルに貸しを作ったってことですね(笑) さて、最後にフジロッカーにメッセージをいただきたいです。
僕は今年でフジロック26年目で、若い時からいろんなフェスを見てきて、色々なライブ行ったけど、出演のアーティストというのは毎年毎年どんどん変わっていくし、時代で流れていくけど、“フェスティバル”というもので考えたら、俺は本当に日本一だと思っています。これ以上オーディエンスのこととか、出演者のこととか、ケアして考えてやっているフェスティバルというのは、フジロックが日本一、世界一だと思う。セーフティーだし。最高なフェス。環境もいいじゃないですか。東京も戻れないですもん、ここに慣れちゃうと。だから、フジロックに来ているみなさんには、1日1日を噛み締めて、最高に楽しんでほしいです。
フジロックエキスプレスでは、さまざまな裏方の方に話しを聞く機会がありました。そこで毎回思うのは、みんなフジロックを楽しみながら仕事をしているということ。もちろん佐々木さんもその一人で、想像を超えるような過酷なことをしているにも関わらず、終始笑顔で、質問に答えてくれました。こういう人たちが集まってフジロックは成り立っているんだと再確認できたのも嬉しかったし、ここでもフジロックらしさを感じることができました。
佐々木さん、お忙しいところ、ありがとうございました!
[写真:全4枚]