FUJIROCK EXPRESS '24

LIVE REPORT - WHITE STAGE 7/27 SAT

折坂悠太 (band)

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PHOTO BY古川喜隆
TEXT BY石角友香

Posted on 2024.7.27 21:18

健やかで朗らかであることのラジカルさ

「16時10分から、よろしくお願いします」。オーディエンスはサウンドチェックを見られるし、アーティストは観衆に直接言えるのがWHITE STAGEやRED MARQUEEの良さかもしれない。

登場すると10秒以上、深々とお辞儀。その瞬間から明らかに朗らかな今年の折坂悠太がいた。1曲目の“ 芍薬 ”でサックスのハラナツコも飛び跳ね、バンド全員が命を祝福するかのような躍動感に満ちている。ビジョンに映る折坂のフェイスラインがシャープになった印象を受けたのだが、新作『呪文』のインタビューを読むと、心身を健やかに保つために走ったり飲酒を控えめにしたりするようになったそうで、そのインタビューを読んだ時には意外に思っていた感情がストンと腹落ちした。

2曲目には早くも“ハチス”が披露される。早くもというのは、この曲に込められたメッセージが、現在のパレスチナの人々が置かれている状況に思いを馳せたもので、軽いものではないからだ。しかし軽い曲など、そもそもない。蓮の花が咲く池のスチールをバックに映し出し、深く命の根を張ること、他者を尊重するには自分の毎日に理(ことわり)が必要だというふうに取れる歌詞がリアリティを伴っていくのを感じた。折坂は珍しくスタンドマイクで歌っていて、そのあり方がとても自由だ。身振りも柔らかい。

「改めまして、折坂悠太です。精一杯やらせてもらいます」と気合を入れた彼を見て、「ああ、現世を生きるのは長期戦だな」と気持ちが引き締まる。良い感情だ。さらにこんなにギターロック然としたアレンジは初めてなんじゃないか?と新鮮な驚きに満ちた“針の穴”や、“努努”はギターリフにメタルのサウンド感すらある。と、同時にブラジル音楽の不屈の明るさのようなものも感じ取れる。シーンに登場以来、民謡や日本の古い音楽との呼応で存在感を示してきた折坂とバンドの基本トーンが、新作『呪文』で変化したことが、当たり前だがライブでも明確だった。

これまでもステージに何度も乗っかってきた曲“さびしさ”も以前のトラディショナルなアレンジから一歩外の世界に出た印象を受けた。何しろ“このまちにふいてくれ”の“くれ!”に力強さが増した。

いつもならフジロックでもライブ前日は緊張するらしいが、昨日から会場入りし多様な音楽に触れると、人間だったのがグニョグニョにされると言い、宇宙人になった心地なのだと言う。「色々な形があるから一枚の絵を成すわけです、何が言いたいかと言うと、フジロック大好きです。大好き」と、珍しい告白(!?)をしてくれた。

ギターリフで作るループミュージックの趣きの“凪”はどんどんグルーヴを増し、カオティックな様相を呈し、“夜学”では「ホッ!」という声をルーパーで拡張させて面白い効果を出していた。新曲も馴染みの曲も今のライブアレンジは冒頭の印象通り、タフで朗らか。ラストは生活の機微を飾らず描いた“スペル”。程なく私たち一人ひとりは苗場から家に帰るわけだが、現実に戻るなんてナンセンスな言葉を吐きたくない、普段の自分に影響を与えてくれるライブを届けてくれたと思う。私たちもここで一回、宇宙人になって、新たに1年始めましょう。

[写真:全10枚]

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7/27 SATWHITE STAGE