FUJIROCK EXPRESS '24

LIVE REPORT - WHITE STAGE 7/27 SAT

syrup16g

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Posted on 2024.7.27 18:49

あの頃、死なずに生き続けてしまったあなたと私へ

死ななくてよかった。ライブを観終わったあと、素直にそう思った。泣きすぎて、顔はボロボロではあるけれど。ずっと死にたいと思いながらもう十分すぎるくらいに生きながらえてしまって、それでも死なずにいたらフジロックのWHITE STAGEに立つsyrup16gの3人の姿を拝むことができた。もう癖みたいなもので、何度も死にたいと思い続けている。生きている意味も価値がないことも、もうわかりきっている。それでも生きて、音楽を好きでい続けたら、ほんの一瞬だけ自分の生活にパッと光が灯るような時間がある。この日のsyrup16gのライブは、そんな時間だった。生きていてよかった。本当にそう思う。

もう発表の時点でわかっていたけれど、syrup16gに昼間の時間帯が面白いくらい似合わなくて、笑いそうになってしまう。まずは、“パープルムカデ”……え、1曲目でいきなり?途中のMCで、中畑大樹(Drums)が夏フェスへの出演は20年ぶりだと言っていた。2003年ロッキンオンジャパンでの演奏も、パープルムカデが1曲目でしたよね。いかしたサングラスをかけながら、ギターをかき鳴らす五十嵐隆(Vocal/Guitar)の様子を記憶から掘り返す。
力強く鳴らされるドラムとベースに支えられ、何十回何百回と聴いてきたあたたかなギターのフレーズに不安定とも言える五十嵐の声。時折、しっかり歌いきれるのか見ているこちらが心配になる瞬間もあったのだが、流石にもう慣れている。この日は比較的調子がよかったように感じる。それでも、ものの数秒で惹き込まれる自分がそこにはいる。思い出補正や抱えきれないほどの気持ちの重さもあるのかもしれないが、命を削りながらあの場に立つ五十嵐の姿を祈るような気持ちで見つめてしまう。

“coup d’Etat”の「声が聞こえたら神の声さ」であれば、このまま“空をなくす”でしょう。観客からも歓声が上がる。この時点で、セットリストを完全にフジロックに向けて仕上げていることを確信する。この2曲が続くとき、曲調も相まって感じられる神々しさが好きだった。シャウトが、空高くに響いていく。
「お水いっぱい飲んでね!」と言ったお客さんも、きっと何度もライブに足を運んでいる人なのでしょうね。今日は彼らの音楽に救われた人たちへのご褒美のようでもあった。3人で顔を見合わせて頷いたあとは“生活”。成功するのかいつもソワソワしてしまうギターソロも見事に弾ききり、会場も安心感に包まれながら沸く。
そして、“神のカルマ”、“Sonic Disorder”。もうたまらないなあ。なんだ、これは。自分の人生に大きな影響を与えた曲のイントロが聞こえるたび、声をあげてしまう。親の声よりも聴いているであろうキタダマキ(Bass)のベースラインにはもはや安心感を覚えながら、ステージを見守るように眺める。
持ち時間をやっと半分すぎた頃ではあるが、五十嵐はダブルピースでステージに入ってきたことが嘘のように暑さにやられてヘロヘロになっているようにも見受けられる。あの、大丈夫なんでしょうか?MCでは、「アーティスト写真と全然違う!と思ったかもしれませんが」「夏フェスは20年ぶりで、『そりゃあ20年出られないわけだよなあ』と思われるかもしれませんが」と、自虐たっぷりの様子には笑いが起きる。こういうところもシロップですよね……。まあ確かに夏フェス向きのバンドではないとは思うけれど。

「辛いことばかりで 心も枯れて 諦めるのにも慣れて」「したいこともなくて する気もないなら 無理して生きてることもない」という歌詞が最底辺まで気持ちを突き落とす“明日を落としても”には、何度救われ、聴きながら泣いてきたんでしょう。自分の過去は走馬灯のようによみがえってくる。それでいて、どこまでも優しく響き、泣いてしまう。
シロップのなかでも比較的爽やかなメロディが耳に残る“翌日”、“宇宙遊泳”のあとには“Reborn”で、3人はステージを去っていく。最後の最後に力を振り絞ったのか、一体どこにそんな体力があったのか、今までの不安定さが嘘みたいに今日一番安定した声で歌うんだもんね……2日前に行われた中畑祭とはまったく異なるセットリストだったし、ずっと好きでい続けた人にも、初めてライブを観た人にも、たまらない時間であったように思う。

今年、2024年は再結成10周年らしい。嘘みたいだ。こんなに続けてくれるだなんて。同じバンドをずっと好きでい続けると、「昔のほうがよかった」と離れてしまう人もたくさん見てきた。でも、それは違うんじゃないか。今日のライブを観ながらしみじみ思う。こうしてバンドを再開することを決め、そこからの五十嵐はひとつの覚悟や決意みたいなものを持ったように見える。演奏に対する姿勢、新しく作られる曲たち、ライブでの表情や所作を見ていると、音楽そのものに対する考え方が変わったのではないか。そんな風に考えている自分がいる。50代になっても健康なままで、メンバーも変わることなく相変わらず関係も良好そうで、バンドを続ける覚悟を持って、魂を振り絞りながら歌い続ける姿はやっぱり一番かっこいいなと思う。ありがとうございました、ずっと大好きです。

[写真:全10枚]

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7/27 SATWHITE STAGE