LIVE REPORT - RED MARQUEE 7/27 SAT
NONAME
軽やかに話しかけるように
定刻18時の少し前にレッド・マーキーに行くと、PA横くらいまで人で埋まっている様子で、ステージMCの呼び込みにさっそく大歓声があがり、期待度の高さが伺える。2017年の朝霧JAM出演から、飛躍的に存在感を増したノーネームことファティマ・ワーナーの登場だ。
ギター、ベース、ドラムのバンドとともに登場したファティマ。アグレッシブなバンドサウンドの“Blaxploitation”やどっしりとしたビートの“Song 33”、クールだがダイナミックなボサノヴァ調の“Rainforest”など、骨太なバンドに乗せて彼女のラップがレッド・マーキーのフロアに響き渡る。“Song 32”ではフックの「yippee-ki,yippee-ki-yay」と最後の「too」をフロアに求めるが、なかなかややこしいタイミングだから「too」がいまいち合わない。でも最後はきっちり合って、フロアもあたたまってきたようだ。
“boomboom”でも話すような軽やかさで、語感の癖と戯れるようなラップが心地いい。ジャジーなサウンドの“namesake”では高速ラップを披露し、ソロのラップで「Free Palestine!」と高らかに叫ぶファティマ。レッドのオーディエンスもそれに続いて声をあげる。親密に語りかけるような彼女のライブだからこそ、こういったプロテストの表現も自然と馴染むのだろうし、こんな風にまずカジュアルに口に出してみることで、何か変化につながるかもしれない。それはささやかでも大きな一歩だ。
後半では“Forever”や“Diddy Bop”、“Reality Check”と、2016年の1stアルバム『Telefone』から立て続けに披露。柔らかい響きのシンセサウンドにレッド・マーキーはゆったりと揺れている。“baloons”もエレガントなサウンドと対照的にメロディの抑揚が控えめだからこそ、微細なニュアンスが伝わってくるようだ。
メロウなムードの“Yesterday”でだいぶ時間を残してステージを去ったかと思えば、時間を勘違いしたらしく、もう一曲と“Song 31”。「キャンプしてる人はどれくらいいるの?」と彼女が聞くと、かなりの人数が手を挙げて、驚いてる様子も親しみ深かった。そしてさらにもう一曲と“Oblivion”まで披露。少し噛み合わず戸惑っているような様子も見られたが、最後までフロアとのコミュニケーションを求め続けたファティマと過ごした時間は、ここにいた人の胸に残り続けるだろう。
[写真:全8枚]