LIVE REPORT - RED MARQUEE 7/28 SUN
WEEKEND LOVERS 2024 “with You” LOSALIOS / The Birthday (クハラカズユキ・ヒライハルキ・フジイケンジ)
涙をふいて
フジロック’24最終日、ここレッドマーキーはUSのロックンロールショウ後、まだ30分前にもかかわらず、次のステージに向け前へ前へと押し寄せる人たちであふれ返っている。
The Birthdayや「Thanks!」Tシャツをまとった人たち。「Rock n’ Roll Will Last Forever」と描かれ、真ん中には昨年惜しくもこの世を去ったあの男の写真がプリントされたTシャツを着ている者も散見される。そう、この後に控えるのは、11年ぶりに復活を遂げるロックンロールパーティー『Weekend Lovers』。ここに集まったファンたちにとっても、出演陣たちにとっても、彼が愛したこのフジロックという場所で追悼する大切な機会であるに違いない。
サウンドチェックに中村達也(以下達也)とクハラカズユキ(以下キュウ)が姿を見せるだけでフロアから「達也ー!」や「キュウちゃん!」といった大歓声が飛ぶ。TOKIEなど参加メンバーが続々と現れ入念に音合わせをしていく。いきなり達也が「1234!」とパンキッシュなブラストビートをかますもんだから場はライヴ本番さながらの熱に包まれた。
開演3分前。「千秋楽!」ステージからあの男の声が!『WEEKEND LOVERS 2013』の時に1ヶ月弱の間に作られたという未発表曲、『WEEKEND LOVERS』のテーマ曲だ。会場にバンドクラップが鳴り響く。「週末の恋人よ 爆音のチークタイム 愛ならここにある 踊ろよ踊ろよ」目頭が熱くなってくる。バックに「Weekend Lovers」の文字が映し出されると、LOSALIOSが登場。割れんばかりの大歓声だ。達也がドラムを叩き出し、怪しいフレーズが鳴り響くとバンドが一斉に音を出力し“HAE”からキックオフ。ずっしりと刻まれるTOKIEのベース、ワイゼンボーンのスライドの鳴りが耳をつんざく。達也のシャウトも完璧なタイミングで入ってくる。のっけから大爆音でぶっ放してロックンロールパーティーの開会を告げた。シンバルをクラッシュして“Hit Man”が軽快にスタート。3つのギターから出力される重量級で硬派な音は悶絶ものだ。“SICK”から“IQ69”へ鼓膜を打ちまくる大音量と大音圧まみれのパーティーが続く。2002年に、ROSSO & LOSALIOS presentsとして始まったジョイントライヴが 『WEEKEND LOVERS』のはじまり。当初のジョイントライヴ形態で進行していく様が何とも粋だ。
ここであの男に捧げる必殺の1曲“CISCO”が投下された。フロア前方にクラウドが押し寄せモッシュの嵐が吹き荒れる。当然だ!ここでThe Birthdayが登場し、LOSALIOSとともにあらん限りに音を叩きつける。フロアから飛ぶ「CISCO!」の怒号の様な咆哮。あの男が「死ぬなよ!」と叫んだ1998年のフジロックの熱気と興奮が今ここに渦巻いているのだ。
LOSALIOSがステージを後にし、The Birthdayの時間へ。キュウがビートを刻み、ベースのヒライハルキ(以下ハルキ)がステージ前方に出てくるとフロアが沸騰した。フジイケンジ(以下フジケン)が“月光”のフレーズを奏でる。「お前らの想像力が現実をひっくり返すんだ!」と繰り返すフジケン。常々、想像力の大切さを語っていたあの男を代弁する敬意に満ちた表現だ。フジケンがジャカジャカとギターをかき鳴らし“I Saw the Light”へなだれ込む。「I Saw the Light 光を見つけた」とここに居合わせた全員で大合唱。まずい…涙で視界がぼやけてきた。続けて披露されたのは“サイダー”。“I Saw the Light”も“サイダー”もあの男の遺志を受けてここにいるメンバー3名が完成させた曲。ライヴではあの男が歌うことはなかった曲だ。まずハルキが自分らしく爽やかに歌う。次はキュウ。ここ苗場であの男と過ごした日々の思い出、想いが込められてるような歌声だ。
ここで、ハルキは「割と皆さんの表情よく見えるんですよ、ここ。一人一人ね。俺の視界からだと、ね。ちらほら涙している人とかも見えて。泣きたきゃ泣いてもいいと思うんだけど。俺もさんざん泣いたし、やっぱりいまだに毎日思い出すしね。でも、せっかく年に一度のフジロックに来たわけでしょ?もうちょっと演奏していくかな。来ている人たちに一瞬でも笑顔になって帰ってくれたらいいなって俺は思う!」
“ハレルヤ”の優しいギターフレーズが鳴り響く。ここで登場したのはTHA BLUE HERBのBOSS。あの男が残した作品をまだどこかで生きているかのようにまだ暖かいと称える。そして「Happy birthday to you! Happy birthday today! ハレルヤ!」と誰も彼も1回きりの人生、なら愛し愛され、語りかけ、確かめ合って行こうとたった今、生きていることを祝福し、生きていくことの希望を真っ直ぐにここにいるあの男を愛するファンたちに語りかけた。バンドのBOSSの優しさと真摯な敬意の念に涙腺が崩壊してしまったのは私だけではないだろう。
達也を筆頭にLOSALIOSの面々が再登場。2人目のスペシャルゲストとして、YONCEを呼び込んだ。手を叩きながら登場したYONCEとロッキンナンバー“ローリン”を出演陣全員でプレイ。しゃがみ込んで頭を振りまくり、何度も「IT’S ALRIGHT」(それでいいんだ)と届けるYONCE。バンドがもの凄い音を爆発させ1時間のロックンロールパーティーを締めくくった。
フジロックを愛したあの男を、ここで我々に追悼する機会を与えてくれたこと、本日の出演陣のみならず、この機会に関わる人たちすべてに感謝しかない。今日の『WEEKEND LOVERS』には“with you”とついている。きっとあの男が天国からこの苗場の地に降りてきて、愛する仲間たちとのロックンロールパーティーを一緒に楽しんでくれたことだろう。
[写真:全10枚]