LIVE REPORT - RED MARQUEE 7/28 SUN
DJ KRUSH
深夜を漆黒に染め上げるグルーヴ
フジロック最終日、0時を回ってもOASIS周辺には音が鳴り響き、人でごった返している。眠そうにしている人もいるし、椅子でうなだれている人もいる。疲れていても帰りたくないんだ、ただここにいたいんだ。帰るとフジロックが終わっちゃうから。ぶっ倒れるほど遊び、みんなで朝日を迎えるのだ。
レッドマーキーでは『SUNDAY SESSION』と銘打たれた深夜のダンスパーティーが繰り広げられている。韓国からやってきたプロデューサーでDJの250(イオゴン)によるキャッチーなメロディ満載のビートに
フロアは踊りまくりだ。
私は、次に登場するアクトを観にやってきた。今年でソロ活動32周年を迎える生ける伝説、DJ KRUSH(以下クラッシュ)が2012年来、12年ぶりの苗場に帰還。2022年12月に独立し、今年新譜『再生-Saisei-』をリリースした絶妙なタイミングでのフジロックだ。気合の入ったものになるに違いない。刮目して見ておかなければならない。
深夜2時、深海のような青の照明が灯りクラッシュの「K」の文字が浮かぶ。ウェザー・リポートの“The Well”のテナーサックスが鳴り響く中、クラッシュがこれしかないところでスクラッチやビート、リバーブを入れ異世界へと我々を誘う。バックの映像がフラッシュし、スポットライトが眩しく光ると、どこまでもディープで地響きのようなビートが襲いかかってきた。Low PolyやFloret Loretなどのアメリカ気鋭アーティストのベースミュージックを駆使しクラッシュ唯一無二の世界観を描いていく。ダークで危ない鳴りのビートがもの凄い音圧で次々と繰り出され、フロアにいる全員を圧倒していくのだ。
目を刺激する照明とバックに流れるサイケデリックな映像と焚かれたスモークの中で、クラッシュがただ一人黙々とセットを進行している。その様は孤高の侍のよう。スクラッチやディレイを入れる所作のひとつひとつが美しく、そしてたまらなくかっこいいのだ。
蛇がとぐろを巻くかのようにベース音が唸りを上げ、後半に向けてビートのピッチも上がっていき、ハードコアな勢いまで加味されフロアをアゲにかかる。クラッシュでしか創り得ない「KING OF DOPE」たる音像と世界観。悶絶ものだ。
Baird Hersey & Prana“Asteya”お経のような声が入り、バック映像に赤いクラッシュマークが浮かび上がってきた。更に加熱したかのようなビートを叩き込み、場を灼熱のダンスフロアに染め上げ1時間10分のセットを締める。クラッシュは去り際、バックの自らのロゴを不敵に指差しステージを後にした。圧倒的な音世界の余韻にただ立ち尽くすしかない。
[写真:全10枚]