LIVE REPORT - FIELD OF HEAVEN 7/27 SAT
KITTY LIV
ソロでさらに深く鳴るオールディーズへの憧憬
去年の朝霧JAMでキティ・デイジー&ルイスを観た時、あまりにも晴れやかに鳴らすオールディーズへの憧憬が美しくて僕は泣いてしまった。むしろこれこそが最新鋭だと思った。だから今回のフジロックでは絶対に彼女が観たかった。ちょうどソロデビューアルバム『Easy Tiger』を3日前にリリースした絶好のタイミングということもあり、期待感が渦巻くフィールド・オブ・ヘヴンに、ソロではフジロック初出演のキティ・リヴ(Vo /Gt)の登場だ。
カラッとしたギターを颯爽と弾き鳴らしながら、ブルージーなこぶしの効いた力強い歌声をヘヴンに響かせるキティ。歌の合間に「ヘイ!」とか「カモン!」とか入れてくるのも心地いい。かなり隙間が多いシンプルな演奏だが、その隙間がグルーヴを生み出す懐の深さを感じさせるバンドサウンドだ。
“Lately”では弟のルイス・ダーハム(Ba)とかけ合いながらギターソロを披露し、「とても簡単だから歌ってみてよ」とシンガロング。そして細かいフレージングの指弾きのリフにシビれた“Money”では、セッションに突入し大歓声!サッポロのビールで乾杯と投げかけるキティ!どんどん楽しくなってきた。
ジャック・フラナガン(Dr)が先ほどからやたらといい顔で反応をくれるから、僕らも気分が上がってくる。彼はキティの夫でミステリー・ジェッツのベーシストでもあるそうだが、そんなジャックとルイスがパートチェンジした“The River That Flows”では、シンプルなビートに乗せたインディーフォークのニュアンスがあって、少し違った表情も見えてくる。
後半では陽気なビートのザ・イコールズのカバー“Laurel And Hardy”で和気藹々とした雰囲気が増してきて、さらに盛り上がりを増すヘヴン。最後の「タタン」でスティックあげたジャックの表情がすごくキラキラしていて、キティ・デイジー&ルイスともまた違う、新しい家族の絆が垣間見えた。本当にいいバンドだなあ。
“Keep Your Head Up High”ではキティがハーモニカを持ち出して、圧巻のソロを披露!ハーモニカの魅力はアスのライブでもみんな知ってると思うけど、スローなリズムだからこそ深まるグルーヴと情感を堪能。迫真のセッションの最中、マイクシールドで倒しそうなビールを素早くどかしてくれたスタッフに「ありがとう」と言ったのはなんだか微笑ましかった。
最後はブルースギタリストのエルモア・ジェームスのカバー“Cry For Me Baby”で、怒涛のパートチェンジが繰り広げられる。文字だととてもややこしいのでパートを補足していくが、ジャック(Dr→Ba)とルイス(Ba→Dr)がチェンジしたかと思えば、ルイス(Dr→Gt)とキティ(Gt→Dr)がチェンジして、キティがドラムソロを披露。さらにルイス(Gt→Ba)とジャック(Ba→Gt)、ジャック(Gt→Dr)とキティ(Dr→Gt)がチェンジし、見つめ合いながら夫婦のギターとベースのセッション。アグレッシブなドラムで姉夫婦を盛り立てるルイス。
書いててもわけがわからなくなってきたが、交代中もシンバルのリズムをキープしながら、どんどん流動していくこの一幕は本当に興奮したし、マルチプレイヤー集団のエキサイティングな好奇心にみんな拍手喝采大歓声。とてつもない高揚感が終演後のヘヴンを包み込んでいた。
随所に現代のSSWらしいポップやインディーの風味も感じられたが、蓋を開けてみればさらにどっぷりブルースやロックンロールの深淵に飛び込んでいったキティのライブ。これからもキティはキティの道を往くのだろう。信頼する家族たちとともに。
[写真:全10枚]