“石角友香” の検索結果 – FUJIROCK EXPRESS '24 | フジロック会場から最新レポートをお届け https://fujirockexpress.net/24 FUJI ROCK FESTIVAL(フジロックフェスティバル)を開催地苗場からリアルタイムでライブレポート・会場レポートをお届け! Tue, 13 Aug 2024 04:03:22 +0000 ja hourly 1 https://wordpress.org/?v=6.6 あれもない、これもないフジロック https://fujirockexpress.net/24/p_7583.html Fri, 09 Aug 2024 07:18:03 +0000 https://fujirockexpress.net/24/?p=7583 「おかえり!」と声をかけると「ただいま!」と応えてくれる……。前夜祭のレッド・マーキーにやって来てくれたみなさんと、そんな挨拶を交わして集合写真を撮影し始めたのは、2007年ではなかったか。初めてやったときには、オーディエンスがどう応えてくれるか、全くわからなくて、はらはら、ドキドキだったんだが、ものの見事にほぼ全員から「ただいま!」と返ってきたときにはめちゃくちゃ嬉しかった。フジロックが、あるいは、苗場が、年に一度、帰省するふるさとのようになっているのを実感したのは、この頃からだったかもしれない。

あれからすでに17年、相も変わらずそんなことを続けている。なにはともあれ、みんなの幸せな顔を見るのが嬉しいからだ。苗場音頭での盆踊りが一段落して、花火が上がったあと、レッド・マーキーの入口のテープがカットされると、この1年間、フジロックを待ちわびていた人達が、文字通り、堰を切ったように雪崩れ込んでくる。そして、DJ MAMEZUKAの絶妙な選曲で回されるレコードからあふれ出る音の洪水をかぶる彼らの幸せな表情ったら……ありゃあしない。それに魅入られた関係者や噂を聞きつけた出演者までもが、ステージからその光景を記録しようとカメラを構えている。どうやら、運営本部でもその様子が映像で確認されているようなのだが、ちっぽけなモニターで見るのと、現場にいるのとでは大違い。実際にそれを目の当たりにしてほしいと呼び出したのが、昨年までグリーン・ステージを担当していた、主催者スマッシュの新社長、佐潟氏。それに応えてわざわざやって来てくれた彼が「確かに、そうだね。実際に見ると……」と、口にしてくれたのが嬉しかった。

加えて、今年はステージ袖に腰をかけて、最初のバンド、USを待ちわびていたのが、フジロックを生み出した日高大将。言うまでもなく、彼の写真をフィーチャーして2021年に制作した「Wanted(指名手配)」Tシャツには「彼が最前線に戻ってほしい」という願いが込められていた。かつてfujirockers.orgが作ったTシャツで、これが桁違いのセールスを記録したのはなぜか? 多くのフジロッカーがそんな思いを共有していたからに違いない。嬉しいことに、昨年はクリスタル・パレスやどん吉パークに彼が出没。体調がすぐれないと耳にしていたにもかかわらず、今年はレッド・マーキーからグリーン・ステージにも姿を見せている。しかも、彼が惚れ込んだというUSのライヴを楽しんでいる姿を目撃したのは少なくとも2回。ひょっとしたら、それ以上足を運んでいたのかもしれない。

コロナ禍以降、なかなか本来のフジロックが戻ってこないことに苛立っているフジロッカーが多いことは百も承知だ。それでも、ここにいるだけで幸せを感じていた。奥地のカフェ・ドゥ・パリもストーンド・サークルもない。ジム・ウェストを中心に集まってきたDJたちがお気に入りの音楽を楽しむブルー・ギャラクシーは復活したものの、あの周りにあったワールド・レストランは見る影もない。昔からのフジロックを知っている人間にとってみると、かなり寂しい景色にも映る。それでも、「なにやら幸せ」な自分がいるのだ。どこかで読んだ記事に「フジロックで飲むビールがめちゃ旨い」というのがあったんだが、実にその通り。なにを食っても、なにを飲んでも、ここにいることでその全てが格別なものになっているのに気付くのだ。

何度もやってきている常連にとって、フジロックは盆と正月が一緒になった、里帰りのようなもの。懐かしい友や仲間に再会できる場所でもある。年に一度、ここでしか再会しない友人だって珍しくもない。それでも、どこかで同じような世界を引きずりながら生きていることを互いに確認したり、旧交を温めることになる。しかも、初めて出会っても、どこかで繋がっているような感覚に陥ることも珍しくはない。そして、この1年を振り返りながら、あ〜でもない、こ〜でもないと会話が続いていくのだ。

この1年でフジロックに馴染みのある人たちもこの世を去っている。そんな仲間やアーティストのことが頭をかすめるのも仕方がないだろう。そんなひとりがチバユウスケ。今年、1998年の「地面が揺れた」伝説のフジロックから、スタッフが記録し続けた彼の写真をフジロッカーズ・ラウンジで展示したのは、そんな勇姿が我々に焼き付いていたからだろう。土曜日にクラフトワークが、昨年亡くなった坂本龍一への敬意を示すように「戦場のメリー・クリスマス」を奏でて、「Radioactivity」への導入部のように使ったのが話題になっているが、彼も苗場に姿を見せたアーティストのひとりだった。

Photo by MITCH IKEDA

フジロック・エキスプレスの更新作業に使う本部テントの準備と取材活動のために、精鋭スタッフと共に苗場入りした火曜日、新たな訃報が飛び込んでいた。作業を終えた夕方、UKロックの源流と言っていいだろう、ジョン・メイオールが亡くなったことを知る。ご存知の方も多いだろう。彼の次男が、フジロックの第1回目から最重要スタッフとして行動を共にしてきたスマッシュUKのジェイソンであり、幾度となくDJとして、あるいは、ザ・トロージャンズというバンドを率いて出演してきたギャズは長男。いわば、ふたりともフジロックを語るときに欠かすことができない人物となっている。彼らにどんな言葉をかければいいのか……、かなり戸惑っていた。実の父親が他界したのだ。彼らが現場を離れても誰も文句は言えないだろう。が、ジェイソンは黙々とフェスティヴァルの準備に奔走し、少し遅れてやって来たギャズには予定通りにツアー続行することを告げられる。

規模で言えば、比較の対象にはならないことは百も承知なのだが、フジロックを触発することになった英国のグラストンバリー・フェスティヴァルに繋がる不思議な縁がメイオール親子かもしれない。後者の主催者で会場となる農場の主、マイケル・イーヴィスが大きな影響を受けたのは1969年に開催されたバース・ブルース・フェスティヴァル。そこで演奏したジョン・メイオールとブルース・ブレイカーズを見て、「自分もフェスティヴァルをやりたい」と思うに至ったと。今ではその中心人物として全てを仕切っている末娘、エミリーが口にしている。しかも、そのライヴのステージ裏にいたのが、まだまだガキンチョだったギャズとジェイソン。ずいぶんと大人になった彼らがフジロックで最もフェスティヴァル的要素を凝縮したパレス・オヴ・ワンダーからブルー・ギャラクシーの顔のような存在となっている。

1970年に始まったグラストンバリーは今年で54年目となり、1997年に始まったフジロックは、ちょうどその半分の27年目。苗場での開催が始まった1999年から25年の節目となることが今年は話題になっているのだが、フジロックのルーツと言ってもいい、アトミック・カフェ・ミュージック・フェスティヴァルが産声を上げたのは1984年と、40年前にさかのぼる。というので、あの時、スタッフとして関わった身として、今年はジプシー・アヴァロンで続けられているアトミック・カフェのステージに立って、当時の話をしている。

あれから、とてつもない時間が過ぎ去ったように思う。その間に多くの友達や仲間に関係者がこの世を去り、フジロックが始まった頃にはまだ40代そこそこだった筆者も、すでに高齢者となっている。今年、グラストンバリーの主催者、マイケルが車いすに乗ってザ・パークと呼ばれるステージに姿を見せている一方で、フジロック生みの親、日高大将は杖を片手に前夜祭のレッド・マーキーやグリーン・ステージに立っている。かつてのようにジープで会場内を走って、動き回っていた彼らを見られないのは残念だが、世界の西と東で目撃したこの光景は彼らの想いがそのままフェスティヴァルとなっているんだろうと思わせていた。

なにやら表向きには順調に復活しているように見えるかもしれないフジロックだが、さて、どうなんだろう。確かに、主催者からは「来年はあります」と耳にしているし、今年も会場を離れるときに見たゲートには、その日程が発表されていた。しかし、その言葉の裏に「再来年はわからない」というニュアンスを感じていた。なにせ、異常とも思える円安のピークが開催期間中。ギャラの支払いはドル建てが原則なので、おそらく、海外からやって来た出演者に支払われる金額が想定よりも遙かに膨らんでいるはずだ。加えて、チケットのセールスも全盛期から比較したら、貧しかったと聞いている。チケットが値上げされているといっても、利益が出ているとは考えられない。

だからなんだろう、どこかで唐突にフジロックがなくなってしまうのではないかという危惧感は拭えない。なんの前触れもなく、消え去ってしまうような怖さも感じているのが正直なところ。でも、もちろん、そうなって欲しくない。なぜなら、想像できないのだ。年に一度帰る故郷がなくなることは。フジロックのおかげで知り合ったり、仲良くなった友人たちと再会できる機会が失われるのには耐えられないように思う。

初めてここに来た人達はどうだった? 同じように感じる? また、来年もやってきたいと思った? もし、そうでなかったら、フジロックの魅力が失せているってことなんだろう。もし、そうだったら、フジロックがこれでも他に類を見ない野外コンサートではなく、フェスティヴァルと呼ぶにふさわしい存在だということを証明してくれているようにも思う。でも、かつてのフジロックを取り戻したいという想いは変わらない。

今回、嬉しかったことのひとつは、会場で、かつてワールド・レストランと呼ばれる場所で中心となって動いてくれていたエチオピア人の仲間、ソロモンを見かけたこと。なんと7年ぶりに来た彼がなにを思ったか? ひょっとして、また、彼を核にワールド・レストランのような趣を復活させてくれないだろうかと期待してしまうのだ。そして、もうひとつ嬉しかったのが、何年ぶりだろう、戻ってきてくれたジーンズのリーバイス(Levi’s)。初期のフジロックでコンスタントにサポートしてくれていた彼らが戻ってきてくれた背景に、昔のスタッフが関わっていることに驚かされていた。

さて、そんな今年の会場内外での顛末を伝えてくれたのは以下のスタッフの数々。会場で一生懸命動いてくれた彼らに感謝して、そして、また、ここに集まってきたみなさんと再会できることを祈って、〆の文章を終えようと思う。ありがとうございました。

■日本語版
森リョータ、阿部光平、丸山亮平、あたそ、阿部仁知、イケダノブユキ、石角友香、梶原綾乃、三浦孝文、若林修平、Asakawa Maho、東いずみ、越川由夏、泉みや、Eriko Kondo、YAMAZAKI YUIKA、渡辺紗礼、こっこ、ヌー子、浅野凜太郎、井上勝也、エモトココロ、堅田ひとみ、粂井健太、古川喜隆、小林弘輔、佐藤哲郎、白井絢香、suguta、髙津大地、HARA MASAMI(HAMA)、平川啓子、前田 俊太郎、松藤 万里子、ミッチ イケダ、宮田遼、安江正実、リン(YLC Photography)

■E-Team
Nina Cataldo、Jonathan Cooper、Park Baker、Sean Scanlan

■フジロッカーズラウンジ
mimi、obacchi、SEKI、yamato

■ウェブサイト制作&更新
平沼寛生(プログラム開発)、迫勇一、坂上大介

■スペシャルサンクス
三ツ石哲也

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NO PARTY FOR CAO DONG https://fujirockexpress.net/24/p_7003.html Tue, 30 Jul 2024 10:19:21 +0000 https://fujirockexpress.net/24/?p=7003 最終日のGREEN STAGEの午前の時間帯はあっという間だったフジロックを最後まで楽しもうと英気を養う人たちが集う。“田舎へ行こう!”が流れる中、カメラが捉えた人々がステージ左右のビジョンに映し出されるが、気づいた人はみんな笑顔で、中にはビールを一気飲みする人も。すっかり馴染みになったこの光景だが、朝イチのGREENのモッシュピットにいる人たちはトッパーであるNO PARTY FOR CAO DONGを熱く応援する台湾の人たち。もう何年も前からフジロックに訪れるアジアの人たちは増加の一途だが、目に見えて一つのバンドの元に集まる様子は個人的には初めてだ。客層は多彩。台湾の国民的な音楽賞を獲得していることが日本だとピンとこないのだが、それぐらいロックバンドとして大きな存在で、彼らと彼ら以降でインディロックの潮流が変わったとすら言われている。

黒いTシャツにハーフパンツのWood Lin (Vo,Gt)とJudy Chan (Gt,Vo)の黒づくめながら夏仕様なシンプルファッション、Dennis Chang(Ba)は日本のメタル/シューゲイズバンド「明日の叙景」のTシャツを着ている。そしてバンドの活動再開後、再びバンドに合流した初期メンバーBirdman(Dr)はアスリート風の鋭さを漂わせている。

イントロダクションのセッションでは自然を想起させる清冽なギターにメタル/エモもかくやなツインペダルが叩き込まれ、ポストロックでもシューゲイズでもないユニークな音楽性が屹立する。ハスキーでモノローグっぽいWood Linの声、時折シャウトするDennis Chang、メインボーカルも聴かせるJudy Chan。この3人がユニゾンで声を合わせる場面もパンク由来のエモではあまり見ない構成だ。誰か一人がカリスマなんじゃなく、音楽を構成する一人ひとりが過剰にならないように選び抜いたリフや声を加えていく。

ダンサブルなビートを独自に昇華した側面もユニークで、“醜 Gristy Me”や“大風吹 Simon Says”ではダンスビートを軸に引きながら、ダウナーなセクションに移行、そこから爆音アンサンブルへと、1曲の中で自在に感情を変化させていく。ファンは曲をよく知っているようで、ブレイクから爆発する瞬間の一体感は、音楽があればどこでもNO PARTY FOR CAO DONGのコミュニティが立ち上がる力強さがあった。

Wood Linは、「長くバンドをやってるけどシャイだからあまり喋れない」というようなことをボソボソ喋り、日本語は喋れないのでと、英語でタイトルコールをする。その一つ一つが必要最低限のMCなのだが、無愛想なわけじゃなくそのスタンスが彼らの音楽性にも通じる。「美しい山ですね……」とポツリと発した後の演奏曲が“人洞山 The Human, the Hole and the Mountain”だったのは偶然だろうか。広大なランドスケープを描く彼らの演奏はGREEN STAGEにハマりすぎだ。

ライブが進行するにつれ、キラーチューン“Emily the ghost”の天変地異レベルのアンサンブルでサークルモッシュが起きている。フジロックで初めて見るライブマナーもあったりして、つくづくこのバンドの求心力を見せつけられた思いだ。ラストは日本でも有名なナンバー“山海Wayfaner”。ようやくバンドロゴが大きく投影され、スマホを取り出す人多数出現。しかもサビのシンガロング率は恐ろしく高い。台湾を代表するバンドがポストハードコア、メタル、シューゲイズ、エレクトロダンスの要素をタフな胃袋で消化していることも衝撃だが、そのバンドの人気や魅力をオーディエンスの熱狂と共に伝えた今回のライブは海外のオーディエンスが数多く参加するフジロックならではの出来事だったんじゃないか。音楽が鳴っていることで、お互いを理解できることがある。そんな証左の1時間だった。

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あらかじめ決められた恋人たちへ https://fujirockexpress.net/24/p_1005.html Sun, 28 Jul 2024 18:04:08 +0000 https://fujirockexpress.net/24/?p=1005 最終日の夜のPyramid Gardenは「まだ帰りたくない」人たちが続々やってくる。しかもまだまだ美味しい料理もお酒もある場所だけに、全然終わる気がしない。あらかじめ決められた恋人たちへの6人はかなり綿密にサウンドチェックを行っていることが、だいぶ遠くの苗プリの裏道まで聴こえてきていた。ステージ前にたどり着くと、サウンドチェックの段階ですでに熱演なんである。どうなるんだ、本編は。

オープナーは風がすり抜けていくようなSEから、“Round”が始まる。新作『響鳴』の1曲目を持ってきたのは今年のモードということだろう。薄暗がりのステージから発される演奏は生き物の蠢きのようでもあり、夜に外で聴くダブは格別だ。そしてアルバムの曲順と同じく“Stance”が始まる。池永正二の鍵盤ハーモニカはそろそろ夜もふける空間に夕焼けを感じさせるから、音色とは本当に不思議だ。OHTAKEKOHHAN(Gt)のブルージーなフレージング、幽玄なクリテツのテルミンの音色で時間帯が深まっていく感じだ。もちろん、音源と違いアンサンブルの生々しさは何倍にも増して、あら恋らしいメンバー各々の突発的なアクションも増えていく。3曲目に“Come”をセットしたところまでは新作からのチョイスで、一つの流れを作っていた。

それにしてもPyramidでのフルバンドの音響がこんなにいいなんて。これまでアコースティックか小編成のライブしか見たことがなかったので、これは新しい発見だった。中盤には風が強さを増し、なぜかそれと同時にさらに人も増えてきた。やはりまだ帰りたくない人が多いんだろう。

ループする鍵盤の音に明るさを感じるイントロの“前日”で軽快なインストロックに雰囲気が変わり、さらに“Back”と、人力トランスにも似た曲が続き、何度もためてはギターソロなどで小爆発と大爆発を繰り返す演奏に歓声が上がる。前方で体を揺らしている人も、焚き火を囲んでいる人も、みんなこのループにハマってなんとなく同調しているのがわかる。ライブが心地いいのは多分その安心感だ。しかもステージの上方はスモークじゃなく、天然のスモーク、霧がたなびき、あの緑色の光が反射してちょっと宇宙的。昼間と違って見える巨木も演出に一役買っている。そしてあら恋の演奏にすごく合う。

ラストは穏やかに始まり徐々に躍動感を増していく“火花”。メンバーそれぞれの見せ場も盛り込み、ステージの照明も明るさを増し、最終的に全体像が掴める明るさになったところで池永の大きな身振りとともに演奏はエンディングを迎えた。後半に派手になるというより、見えなかったものが見えるようになる、そんな演出に思えて深く感銘した。やまない拍手と歓声に応え、急遽アンコールも行った。さて宵っぱりたちはこの後どこにいくのだろう。お酒が進みそうなステージだったから、多分まだ終われない、ですよね。

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bongjeingan https://fujirockexpress.net/24/p_987.html Sun, 28 Jul 2024 13:56:42 +0000 https://fujirockexpress.net/24/?p=987 苗場食堂には失礼だが、苗場食堂で見るには贅沢、見ることができたのがラッキーなアクトだった。韓国で知名度のあるバンドで各々活動してきた3人のメンバーが音楽でお互いを癒すために始めたのがbongjeinganなのだという。バンドのキャッチフレーズなのか、缶バッチに“Music Therapy Group”と印刷されているのはちょっと洒落かなと思うけど、音源を聴き、そして今、ライブを見たら確かに、と思う。互いが出す音に反応して大笑いする、そんな楽しさから始まっている感じなのだ。

彼らの音楽を嗅ぎつけて集まってきたオーディエンス。GREEN STAGEではノエル・ギャラガーがもうすぐ登場する時間だが、ここにいる人たちは目線とあまり変わらない高さのステージに釘付けだ。韓国から初めて日本、それも最初がフジロックのため(後日、ライブハウス公演もある)の来日というのもすごい。すごいのだけど、ちょっとその辺に出かけるようなラフな格好の3人がトライアングル状態にセット。そして、一音鳴ったところで「うわ、いいわ〜」と声が出た。シンプルに楽器のいい音にみんな笑顔になっている。昨年リリースのアルバムタイトル曲“12Languages”だ。こざっぱりしたシティボーイ、チ・ユネ(Vo、Ba)の声はクセがなくて聴き心地がいい。この声がバンドがどんな方向に振っても一つのトーンを保てる理由かも。

イム・ヒョンジェのギターとユネのベースのユニゾンがツボに入りまくる“KISS”は曲が進むとチョン・イルジュン(Dr)がクレイジーなまでのドラミングに突入。余談だが、今回のフジロックでのクレイジードラマーのトップ2はHedigan’sの大内岳とイルジョンに勝手に決定。クリーントーンの抜き差しで関節外しに遭うようなスリルを作り出していたが、中盤はさらにインダストリアルメタルと洒脱なファンクが1曲に同居するような“GAEKKUM”もライブで体験すると爆音が痛快でずっと聴いていたいぐらいだ。中学生男子とそのマインドで大人になったおじさんの大好物と思しき音楽性に、実際ロックオンされている人々が踊る。でももちろん若い女性もすっかりハマっている。“尼崎の魚”の頃のくるりだったり家主、君島大空のバンド形態が好きな人にも大いにおすすめしたい。

まずメンバーを笑わせることから始まっているんだろうなと思える曲が、ただ面白いだけじゃなくライブチューンとして機能するタフさを伴ったことで、きっと彼らは日本に来て、フジロックに出演しているのだ。

時間を気にせず演奏していたのか、8曲披露した後にユネが客に日本語で「今何時?」と聞く。「32分?OK」と確認した後、GREEN STAGE から聴こえてくるノエルの歌に合わせて一瞬口づさんだりしている。こんな光景、他の場所で見られない。グッと彼やバンドのパーソナリティが掴めて、30分も経っていないのにみんなこのバンドを大好きになっている。
ラストはダンスミュージック脳を経由したバンドサウンドの“Without you”が、もうこのまま一晩中踊りたい気持ちを加速させた。いやー、初来日の一発目としてかなり大きなインパクトを残してくれたんじゃないでしょうか。気になった人は明日、7月29日に開催される青山月見ル君想フに行ってみては。

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Mega Shinnosuke https://fujirockexpress.net/24/p_986.html Sun, 28 Jul 2024 11:19:56 +0000 https://fujirockexpress.net/24/?p=986 連日、苗場食堂にはチェックしたかったライブハウスを主戦場にしているアーティストやバンドが絶妙なブッキングで顔を揃えている今年。前回国内アーティストのみで構成された2021年にRED MARQUEEに出演したMega Shinnosukeが登場。トラックメイキングもするシンガーソングライターの中でも、カラフルなポップやラッパーのフィーチャリングなどでオリジナリティが際立つアーティストだ。

今日はDJセットで、マニピュレーターとギター、そしてドラムと共にオンステージ。苗場食堂馴染みの出囃子が流れ、メクリがめくられるとカタカナで「メガシンノスケ」の文字が現れる。夏の田舎感満載なすだれをめくって出てくるのが面白すぎるのだが……。しかもそこでライブ見てたよね?と言われそうなアウトドアジャケットをフードまで被り、ハーフパンツといういでたちだ。“10000回のL.O.V.E.<3”のリミックスバージョンでサラッと始めたが、やっぱりギターとドラムが生なのは必要にして十分だし、サポートの二人が非常にパワフルで盛り上げる。すかさずキラーチューン“桃源郷とタクシー”のイントロが流れるとワッと歓声が上がる。それもかなり幅広い年齢層のオーディエンスからだ。今晩はさらに新たなリスナーも足を止めたんじゃないだろうか。さらに“愛とU”ではステージにスポーツヨーヨーの達人(!?)が飛び入りし、メロディに合わせた技を繰り出すという面白すぎる展開に、何が起きてるの?とばかりに足を止める人が増えていく。

序盤はアクションこそ、スキップしたりステージ前方のきわギリギリまで出てきていたが、割と淡々とうたっていたMegaも、中盤以降どんどん火がついてワイルドになっていく。「苗場のみんなそんなもんか?今日は最終日、どこの誰よりも踊れ!」と、煽りに煽って音源ではSkaaiがフィーチャーされている“iPhone”で暴走。フロア(地面だが)に降りて、オーディエンスに囲まれながら、iPhoneのカメラにも囲まれながら、このスマホの本質(我々の日常におけるそれ)について歌うというコンテンポラリーアートみたいなことになっていた。フェスの現場は予期しないことが起きるから瞬間を見逃せない。どんどんハードさとスピードを増す選曲が踊ることをやめさせない。グリッチ音がさらに歪んでマシンがぶっ壊れそうな“SHIBUYA BOY”のリミックスバージョンでも無尽蔵に動き回った彼は思わずMCで「死んでまうぞ!フジロック、クソ最高です」と、ヒートアップしてしまった自分を楽しんでいる模様だ。「フジロック、力残すな、ここで全部使え、俺もノエル見れるかわかんねえ」とまで言っていたから、多分そうだろう。

苗場食堂を通りかかる人にアピールするために何度も自己紹介していたのも、「今度はメインステージで!」と強い気持ちを表明したのも、本気中の本気。ポップであることは軟弱なんかじゃなくてラジカルなことなんだと教えてくれるMega Shinnosukeのフルセット、また必ずメインステージで見たい。

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アトミック・カフェ いとうせいこう is the poet with 町田康 https://fujirockexpress.net/24/p_943.html Sun, 28 Jul 2024 08:37:19 +0000 https://fujirockexpress.net/24/?p=943 フジロックの特徴として、ライブステージ以外に社会の課題について共に考え、発信するアトミック・カフェの存在がある。普段、社会的なテーマをもつトークライブなどに出かけない人も、Gypsy Avalonでご飯を食べたついでだったり、ここで行われるライブの前後に足を止める人もいると思う。グラストンバリーには数多のライブ以外のブースがあるそうだが、日本、いや、世界のフェスでも珍しい存在ではある。

今年は「The Atomic Caféの40年」「戦争と平和」「民主主義と自治」についてのトーク、そしてライブにはTOKYO TANAKA from MAN WITH A MISSION、七尾旅人、夏川りみ、ここで紹介するいとうせいこうis the poet with町田康が出演した。TOKYO TANAKAの登場は、ロックバンドのフロントマンということでちょっと珍しかったと思うし、“愛と平和”タオルを首に巻いた地球外生命体のDJはこれからいろんなアーティストが参加するきっかけになるんじゃないだろうか。

いとうせいこう is the poetは名前の通り、「ダブポエトリーユニットで、いとう自身の小説や詩、演説などの一節を即興音楽に合わせてその場で選びながら読んでいき、常にそれをダブ処理することで音と言葉を拮抗させる」と、“ITP”のXのプロフィールにある。それを可能にしているのは強力なバンドメンバー、Watusi(Ba)、會田茂一(Gt)、佐野康夫 (Dr)、 龍山一平(Key)/コバヤシケン(Sax)、SAKI(Tp)、ミキサーのDUB MASTER X (DUB MIX)の手腕だ。

活字もラップもとにかく常に言葉にするスピードと質に圧倒されるいとうの表現。この日は“POEM FOR GAZA”と題し、彼の地にいると友人に向けたという詩をタフな語調で綴っていく。私の友人を撃つな、高齢であっても撃つな、死んでいても撃つな、というごく真っ当な言葉から始まり、主義主張や宗教観が違っても共存してきた人間の歴史を終焉させるなという意味の言葉が続く。自分では発する機会がないけれど、誰もが思っていることだろう。音に言葉が乗ることで、この場では共通認識が生まれる。音楽のなせる技だ。

そして町田康が呼び込まれる。いとうの方が年上ではあるが、日本のパンク黎明期の突出した存在として注目し、今は稀な文学者になったことを尊敬していると話す、町田は先日、歌集『くるぶし』を刊行。本作からのいくつかの短歌に、この日のためにも書き下ろしたという短歌の原稿を束で持って現れた。詳細な言葉はわからないのだけれど、人間の尊厳に関する哲学が研ぎ澄まされた言葉に刻まれていたと思う。町田がいきなり河内弁丸出しで語気荒く「おどれは家で饂飩食うとれ!」と放った瞬間、個人的にはやはりこの人はパンク歌手であるよ、と笑いながら震えた。最近の朗読会などでどんな表現をしているのか知らないのだけれど、ダブの上で言葉を放ち合ういとうと町田はプロテストというより、歌をうたっていた。

残り2分と進行担当に知らされたいとうは2分で詠める一節を町田に選んでもらう。原稿用紙の束から選んだ言葉をアドリブのフロウも織り交ぜ展開。言葉の賢人二人の迫力は身一つでできる表現の極地を示した。たかが言葉されど言葉。言わなきゃ、書かなきゃ始まらないことがたくさんある。

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Nikoん https://fujirockexpress.net/24/p_1076.html Sat, 27 Jul 2024 21:53:04 +0000 https://fujirockexpress.net/24/?p=1076 2日目のヘッドライナー、クラフトワーク終わりのお客さんが大挙移動する中、ご飯屋さんに目移りする23時前。そこをグッと堪えてROOKIE A GO-GOを目指す。と、お目当てのNikoんにはそこそこのオーディエンスが集まっていた。宿やテントに戻るにはちょっと早く、でもゴリゴリに踊る気分じゃないとき、この場所は人を捕獲するように開かれている。

今年のフジロックに出演するルーキーの音源をちょいちょい聴いて、SNSなんかもチェックしていた時に「見たい」と思ったのがNikoんだ。大雑把に言えばオルタナティブロックに分けられる(このカテゴリも曖昧なもんだが)音像で坊主頭のオオスカ(Gt,Vo)が正体不明なムードで切れ味鋭いギターを弾いているショート動画を見たり、素直じゃない感じの投稿に興味が湧いたり。果たしてライブはいかに。

まずオオスカとマナミオーガキ(Ba,Cho)の、例えば遠い親戚でもあまり接点がなさそうな二人の妙なバランスが最高で、面白いなと思うか思わないスピードで、めちゃくちゃメロディアスなベースフレーズを全身を使ってガンガンに弾き倒すマナミオーガキに目が釘付け。さらについさっきまでKID FRESINOを見ていたせいか、坊主頭のオオスカに「向井秀徳的ソリッドなギターをテレキャスからブチ鳴らすKID FRESINO」という謎イメージが立ち上がってしまった。アクションも通りいっぺんのものじゃなく、痙攣系というか、感情が動きに乗っかる感じだ。しかもサウンドはギターメインのオルタナ、でも歌メロは存外ポップで洒脱だし、ダンスミュージックの機能も備えている。こりゃどんどん人が集まるわけだ。

ハードで踊れるオオスカボーカル曲とは打って変わって、マナミオーガキが歌うナンバーは青春とか切なさとか、スーパーカーとかベボベとか……そうしたワードが浮かんだ。それらは個人的なイメージだけど、そのあたりの取捨選択具合がめちゃくちゃセンスいい。

オオスカはフジロックに出演する名誉より、たった今、物販やCDが売れて欲しいようだったが、それがどこまで本音なのか分かりかねる部分もある。よくも悪しくも素直ないい子が多いインディシーンで、その音楽もキャラクターも勝手に浮いてるNikoん、まだまだいろんな曲を聴きたいぞ。

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くるり https://fujirockexpress.net/24/p_865.html Sat, 27 Jul 2024 16:59:21 +0000 https://fujirockexpress.net/24/?p=865 MCで岸田繁(Vo,Gt)も話していたが、フジロック初年度も2年目もオーディエンスとして参加し、苗場初年度の1999年には現在のROOKIE A GO-GOの前身であるリーバイスニューステージ。以降も2001年にはFIELD OF HEAVEN、2003年には今日と同じくWHITE STAGE、2005年にはGREEN STAGEに立ち、以降もコンスタントに出演を果たしている。日本国内のアーティストでくるりほどフジロックとバンドのキャリアが密接に絡んでいるバンドはいないだろう。90年代の豊かなオルタナティヴロックの重要バンドが日本で初めての本格的な野外フェスに出演するという黎明期の体験はもし今回、初回にも参加した人がいるならどれだけ重要なものか理解できると思う。

そして今年は苗場開催25回目。前回が2021年、まだコロナ禍の厳しい状況下でのGREEN STAGEだったことを考えるとかなり対照的なムードかもしれない。18時近くなってもまだまだ暑いWHITE STAGEに続々オーディエンスが集まり、最終的には入場規制となった。これは曲の強さのなせる技だろう。お揃いのテキスタイルのシャツやパンツを着たメンバーが前から見るとほぼ横一列に位置に着くと、オープナーは前回のラストナンバー“奇跡”だ。こんなの号泣である。勝手な想像だと、2021年からわれわれはいろんな苦悩を乗り越えてここで再会したのだ。それにしても岸田のボーカルは素直に上手くなっている。昨年、彼らが主催する「京都音楽博覧会」でも感じたが、さらに上回っている。層の厚いオーディエンスが感極まる中、“Morning Paper”でタメては走り出す、あのカタルシスを作り出し、さらに“ロックンロール”で各々好き勝手なシンガロングが巻き起こる。ロックンロールの髄を2024年に前進し続けるバンドらしく、アンサンブルに贅肉が全くない。それでいて豊かという、めちゃくちゃいい素材の料理のように演奏が更新されている。最近ライブで聴いた記憶のない“コンバットダンス”では野崎泰弘(Key,Cho)のクラビネットがムッチリしたリフを響かせた。

「ちょっと休憩するか」と、水分補給タイムをとったあと、噺家口調で「こんにちは、くるりです」と挨拶する岸田。そして入念なチューニング。時代はグッと最近になり、“California coconuts”。それでももう1年ほど経過しているのかと、ちょっと驚いてしまう。変わっていく雲の形を追いながら聴くくるりのなんと贅沢なことか。そしてフジロックの出演回数は数えていないという岸田に、WHITE STAGEは2003年以来だと佐藤征史(Ba,Cho)が助け舟を出し、改めて岸田が「ただいま」の一言。彼にとってはステージごとに異なるマインドセットがあるんだろうか。そんなMCの後に相応しいくるりがくるりをオマージュした印象の“朝顔”が披露される。リフや構成が“ばらの花”と酷似しているので、「???」となっているオーディエンスもいた様子。ぜひアルバム『感覚は道標』通して聴いていただきたい。ちなみにライブではギターの逆再生を生で弾く松本大樹(Gt)に見入ってしまった。

そして現在進行中のツアーでは演奏しているのかもしれないが、岸田が鍵盤ハーモニカを吹き、ダブっぽい印象を与えつつ、言葉の断片が生むケチャのようなループ感が面白い“永遠”。そして“WORLD’S END SUPERNOVA”に接続していく流れ。生演奏でこのビートの精緻さはすごい。ダンスミュージックの悦楽がありつつ、みんなシンガロングもしている。幸せすぎる。続いてUCARY&THE VALENTINEをゲストボーカルに迎えた“琥珀色の街、上海蟹の朝”。UCARYの甘み濃いめの声と、ラップ部分の精度が上がった岸田との対比も楽しいし、佐藤のベースはずっと聴いていたい練度だ。世の中に出た時からどれだけアップデートを重ねてきたのだろう。

最終盤、珍しくくるりにとってのフジロック、ひいてはロックがなんなのかを話した岸田。「僕はどこでも100%のステージをしますけど、(フジロックには)ほんまに出たかったんです」という。そしてフジロックで様々な音楽を体験すると「ロックってなんやろな?と思うけど、みなさん友達と来たり、恋人と来たり、上司と来たり……」、そこでオーディエンスから笑いが起こる。「してると思いますけど、一緒にいても孤独やんか。そばにいて一緒に走る音楽がロックちゃうかなと」(いうような意味)と発言した。ああ、なんだかその感じはずっと変わらないし、岸田繁というアーティストを駆動させてきた理由なんだろうなと思う。

ラストは近年のレパートリー屈指の名曲“潮風のアリア”だった。ベタに言うと、続いていく人生そのもののような曲だと思う。この日のセットリストには挑戦を続けるくるりも素直な感謝も含まれていた。次回は21年も開かないといいのだけど。

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KID FRESINO https://fujirockexpress.net/24/p_881.html Sat, 27 Jul 2024 14:55:04 +0000 https://fujirockexpress.net/24/?p=881 なんなんだろう。ワンマンライブでもフェスでもKID FRESINOのライブの後、「敵わないなあ」という当たり前の気分に陥ってしまう。フェスの狂騒の中でなんでわざわざ殴られにいくのか。

2日目、RED MARQUEEのトリを担うKID FRESINOの人気はすごい。今日の他のラインナップからして、ヒップホッププロパーというよりロックもヒップホップもなんならオリジナルで完成度の高い音楽に目がないオーディエンスという感じか。最近のワンマンではキング・クリムゾンやルースターズのカバー(というか一部をピックアップ)しているらしく、それはこの三浦淳悟(Ba), 佐藤優介(Key), 斎藤拓郎(Gt), 石若駿(Dr), 小林うてな(Steelpan, MainStage), ⻄田修大(Gt)という音楽ヒストリーを理解する辣腕たちだから形になるんだろう。ちなみに石若は1時間前にWHITE STAGEでのくるりのライブを終えたばかり。文字通り鬼神である。近年、フジロック最多出演ミュージシャンなんじゃないだろうか。

バックライトメインのライティングにメンバーのシルエットが浮かび上がり、そこにタイダイ(プリントはセーラームーン!)にフレアパンツという70sな出立で登場したフレシノ。バンドセッションが緊張感を増し、そこにラップが切り込むと降りられないジェットコースターに乗ってる気分だ。息ができないほどの演奏のスリルは“Coincidence”での石若、怒涛のドラムソロで早くもピークに。一転、オールディーズな新曲ではパンクなシナトラみたいな雰囲気を醸し出す。高速で展開する音楽劇を見ている気分なのだが、ハイコンテキスト過ぎるのか?プチョヘンザ!的なライブを期待した人は前線を離脱していく。
畳み掛ける凄まじい生演奏の間に打ち込みメインの“rose”を挟み、緩急をつけながらその後にルースターズのカバー“ロージー”をセットしたフレシノの意図はなんなんだろう。女性の象徴的な名前で繋がっているんだろうか。その次の“lea seydoux
-Band ver-”のリズムにマンチェっぽいものを感じて、だんだんオールジャンルDJを生バンドで実現している感覚になってきた。そしてどこまでもフレシノとバンドはハードボイルドな世界観を描く。
ストイックに演奏とラップで畳み掛ける流れの中に華やかな盛り上がりを作ったのは“Arcades”のイントロが鳴り、NENEが現れた時だ。フジロックに出演している流れで登場を想像したオーディエンスもいたが、なんとゆるふわギャングからryugo ishidaもゲスト参加したのだ。この3ショットをこのバンドで見られたのもフジロックらしい光景かも。

そして何らかのカバーはまだありそうだと踏んでいたところに、ビリー・アイリッシュの“CHIHIRO”の披露というサプライズ。とはいえ、サビでようやっと確信したのだが、三浦のベースラインが生バンドアレンジのキモになっていた。もう、立て続けに新たなトピックや音楽的な驚きが押し寄せてくるし、酸欠になりそうな高速ラップに射抜かれるわで、凄まじい情報量だ。

十二分に濃い展開の中、”Youth”での“SEの長谷川白紙”に続き、なんと生身のハナレグミが登場。ここまでの流れで最も大きな歓声が上がり、ソリッドだったムードが一気に柔らかくなる。歌メロと声のパワーを存分に“that place is burning”で味わうとともに、ゲストが登場するとスイートな笑顔を浮かべるフレシノにちょっとホッとしたりも。後方からREDに足早に入場してきた人に「この人、ハナレグミの?」と訊かれたりも。さすがの存在感である。
ものすごい濃度に高めた物語を高速で見てきた一時間のセットは小林うてなのスティールパンが清冽に響く“No Sun”に着地。毎回何かすごい衝撃を受ける彼のライブの最高値をまたしても更新してしまった。

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折坂悠太 (band) https://fujirockexpress.net/24/p_866.html Sat, 27 Jul 2024 12:18:29 +0000 https://fujirockexpress.net/24/?p=866 「16時10分から、よろしくお願いします」。オーディエンスはサウンドチェックを見られるし、アーティストは観衆に直接言えるのがWHITE STAGEやRED MARQUEEの良さかもしれない。

登場すると10秒以上、深々とお辞儀。その瞬間から明らかに朗らかな今年の折坂悠太がいた。1曲目の“ 芍薬 ”でサックスのハラナツコも飛び跳ね、バンド全員が命を祝福するかのような躍動感に満ちている。ビジョンに映る折坂のフェイスラインがシャープになった印象を受けたのだが、新作『呪文』のインタビューを読むと、心身を健やかに保つために走ったり飲酒を控えめにしたりするようになったそうで、そのインタビューを読んだ時には意外に思っていた感情がストンと腹落ちした。

2曲目には早くも“ハチス”が披露される。早くもというのは、この曲に込められたメッセージが、現在のパレスチナの人々が置かれている状況に思いを馳せたもので、軽いものではないからだ。しかし軽い曲など、そもそもない。蓮の花が咲く池のスチールをバックに映し出し、深く命の根を張ること、他者を尊重するには自分の毎日に理(ことわり)が必要だというふうに取れる歌詞がリアリティを伴っていくのを感じた。折坂は珍しくスタンドマイクで歌っていて、そのあり方がとても自由だ。身振りも柔らかい。

「改めまして、折坂悠太です。精一杯やらせてもらいます」と気合を入れた彼を見て、「ああ、現世を生きるのは長期戦だな」と気持ちが引き締まる。良い感情だ。さらにこんなにギターロック然としたアレンジは初めてなんじゃないか?と新鮮な驚きに満ちた“針の穴”や、“努努”はギターリフにメタルのサウンド感すらある。と、同時にブラジル音楽の不屈の明るさのようなものも感じ取れる。シーンに登場以来、民謡や日本の古い音楽との呼応で存在感を示してきた折坂とバンドの基本トーンが、新作『呪文』で変化したことが、当たり前だがライブでも明確だった。

これまでもステージに何度も乗っかってきた曲“さびしさ”も以前のトラディショナルなアレンジから一歩外の世界に出た印象を受けた。何しろ“このまちにふいてくれ”の“くれ!”に力強さが増した。

いつもならフジロックでもライブ前日は緊張するらしいが、昨日から会場入りし多様な音楽に触れると、人間だったのがグニョグニョにされると言い、宇宙人になった心地なのだと言う。「色々な形があるから一枚の絵を成すわけです、何が言いたいかと言うと、フジロック大好きです。大好き」と、珍しい告白(!?)をしてくれた。

ギターリフで作るループミュージックの趣きの“凪”はどんどんグルーヴを増し、カオティックな様相を呈し、“夜学”では「ホッ!」という声をルーパーで拡張させて面白い効果を出していた。新曲も馴染みの曲も今のライブアレンジは冒頭の印象通り、タフで朗らか。ラストは生活の機微を飾らず描いた“スペル”。程なく私たち一人ひとりは苗場から家に帰るわけだが、現実に戻るなんてナンセンスな言葉を吐きたくない、普段の自分に影響を与えてくれるライブを届けてくれたと思う。私たちもここで一回、宇宙人になって、新たに1年始めましょう。

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