LIVE REPORT - GREEN STAGE 7/26 SAT
STUTS (Band Set)
さながら1時間の濃縮STUTSフェス!
先ほどまでの灼熱がウソのように豪雨と呼んでも差し障りない雨。至るところで悲鳴が上がっている。15:00からのSTUTSの機材が心配だ。と、思っていたらやはり機材を雨から守るために少しスタートが押している。それでもGREEN STAGEにはモッシュピットはおろか続々人が集まっている。フジロックのGREEN STAGEにかける思い入れはアーティストなら誰だって半端ないと思う。結果的に“STUTSフェス”と呼べるほど音楽的にもゲストの豪華さでも全力でこの日に臨んでくれたことが伝わるすさまじい内容だった。
駆け込むようにMPCの元にたどり着いたSTUTS。怒涛の開幕ドラムサウンドを全身を使って鳴らす。意気込みがすごい。スタッフパスを外すのを忘れたと慌てているのも彼らしいが、「僕のことを知らない方もいらっしゃると思うので、説明すると、ヒップホップアーティストのSTUTSと申します」との自己紹介になんだかグッときてしまったが、まさにその自己紹介通りの内容だから当然と言えば当然か。バンドがインしての”Renaissance Beat“の打ち込みと生音のバランスがいい。辣腕バンドのメンバーは岩見継吾(Ba)、仰木亮彦(Gt)、TAIHEI (Key)、高橋佑成(Key)、吉良創太(Dr)、武嶋聡(Sax,Flute)、佐瀬悠輔(Tp)という現在のポップミュージックを演奏で支える面々だ。
最初のゲストはtofubeats。STUTSにとって初のボーカルナンバーである“One”を一部、生の鍵盤などを使ったライブアレンジで披露。STUTSはもちろん、tofubeatsがこんなにアクティブにパフォーマンスするとは意外だった。さらに矢継ぎ早にDaichi Yamamotoと鎮座DOPENESSとのフル生演奏の“Mirrors”では2人の異なる個性のラッパーの強い存在感を見せつける。続いてはKaneeが招き入れられ“Canvas”を披露。エンディングからTAIHEIの叙情的なピアノ・ソロで繋ぎ、インスト曲“Conflicted”が、突然の豪雨という自然現象と不思議な調和を見せていた。
変わりやすい山の天気を「さっきまですごく暑かったのになんのせいなんですかね」と、次を匂わせるSTUTS。ん?と思った次の瞬間、「先輩が来てくださいました」と、スチャダラパーがおそろいのシャツ姿で登場した。若いオーディエンスが多いが、リアクションは最高潮。もちろんSTUTSの前フリといまの季節からこの曲以外ない“Summer Jam ‘95”をドロップ。STUTSのMPCプレイとSHINCOのDJプレイのコラボという歴史的な場面を目撃できたのは豪雨に負けなかったご褒美といったところ。夏休みの退屈とチルが混じり合う日本的なサウダージ感はスチャダラパーならではだ。さらにバンドサウンドで“Summer Situation”を共演したあと、この2組と言えば、さらにもう一声でもないが、あの人の客演も観たいと思っていたらやはりPUNPEEの名前がコールされる。去年リリースの昭和〜平成〜令和の記憶をミックスした新しいエバーグリーン“Pointless5”の生共演が実現した。STUTSはもちろん、バンドメンバーも嬉しそうな表情にこちらもつられてしまう。
世代を超えた共演のあとはSTUTSが長い友人でもあるKMCを呼び込み“Rock the Bells”を披露。隙間なくストレートな言葉を熱量高く発し続けるKMCのスタイルはある種愚直ではあるけれど、この1曲にすべてを込めようとする彼のスタンスは胸を打つものだった。続いてはSTUTSの最新ワークスであるSTUTSとZOT on the WAVEによるプロデューサーユニット、STUTS on the WAVEの楽曲が続けて展開される。まずZOT on the WAVEを呼び込み、ワークスの説明をすると、Yo-SeaとLEXをフィーチャーした“Shall We”。滑らかなボーカルが素晴らしいYo-Seaはよく口から音源なんて表現が巧さの評価になりがちな昨今、文字通り音源なのか?と思えるスムーズさで、こういう人のことを指すんじゃないかと思えたぐらいだ。そして再び鎮座DOPENESS、そしてCanpanella、Candeeを招き入れての“Final Destination”と、今夏きっての話題のユニットのワークスをライブで体験させてくれたのだった。
ヒップホップアーティストとしての現在地を網羅しつつ、ユーモアも織り交ぜるSTUTS。ポカリ一気飲みに笑いが起こるのも当然で、しかもあざとくないのは人徳か。そのままタイアップ曲である“99Steps”をフィーチャリングアーティストのKohjiyaとHANA HOPE、さらにTVCMに出演した現役高校生ダンサーも加わり、それぞれの才能を思い切り表現して見せた。
唐突だが、GREEN STAGEと言えば、以前ここでPUNPEEが見せた広範な音楽と接地する彼のヒップホップを思い出した。一つのジャンルに特化したフェスじゃないからこそむしろ自分のバックグラウンドを明示するスタンスが活きるのははPUNPEEもSTUTSも近いんじゃないだろうか。そんな渾身のセットリストを組んできた2人が再び大名曲“夜を使い果たして”のバンドセットでオンステージした光景は記念すべき瞬間かもしれない。すごくあっさりステージを後にしたPUNPEEに贈るように感謝を述べるSTUTS。
そしてエンディングは「音のなかでは会えるから」と、力強く言ったものの感極まった表情でJJJをフィーチャーした“Changes”を彼の映像を背景にプレイしたSTUTSのこの選択はさまざまな音楽好きがいるこの場で外せないものだったのだろう。STUTSの芯の強さを見た1時間だった。