LIVE REPORT - RED MARQUEE 7/25 FRI
MARCIN
肉体は音楽で、音楽は肉体だ
一雨降ったかと思えばまた晴れてきて、蒸し暑いレッドマーキー。ステージ上には、間隔を開けて数本のギターが置かれている。登場したのはポーランドの出身、24歳のギタリスト。MARCINことマーシン・パトルザレクだ。10歳でクラシックギター、フラメンコギターを習い始め、13歳でアコースティックギターでのフィンガースタイル奏法をスタートさせるなど、その経歴からすでにとんでもない。センター分けにされた美しい髪と甘いマスクが特徴的、SNSのフォロワーも多く、その人気ぶりを一度は目に見てみたいと、レッドマーキーへ向かった。
彼はギターを掲げて登場。「こんにちは〜フジロック!レッツゴー!」と流暢な日本語を披露し、“Guitar is Dead”が情熱的に始まった。彼のギタープレイは「片手で弦を押さえて、もう片手で弦をはじく」そんなルールがまるでなかったかのように展開される。タッピングでメロディを奏で、ギターボディを叩き、細い指で繊細なメロディを弾きこなす。これが素早く行われるものだから、演奏に躍動感がある。しかも右手と左手のポジションにルールはなくて、空いている手は全部楽器を鳴らすために動かされる。その軽やかなギターさばきに釘付けだ。
そのままクイーンの”Innuendo”が始まり、彼はこちらの反応を確かめ語りかけるような表情でプレイする。ステージをうろうろと歩きながら、でも両手はびっしりギターから離れず動き続けていて、全身で忙しい彼から目が話せない。続いてはグローヴァー・ワシントン・ジュニアの“Just the Two of Us”。MARCINはこのカヴァーを、日本人ギタリストIchika Nitoとともにリリースしている。椎名林檎”丸の内サディスティック”を筆頭に、「耳馴染みのよい進行」の代表曲であるが、彼がカヴァーするとまた違った印象を受ける。アコエレを叩いた軽やかな音が強調され、縦割りにノレる楽曲に進化しているような気がした。
続いて“Life Force”から、“Art of Guitar”へ。彼の個性が色濃く出た楽曲だ。エレキに持ち替え、メタリックな音色がビシビシと鳴らさている。赤いライトに照らされたMARCIN。あどけなさの残る24歳は年齢不詳のギターの悪魔になったようで、不気味に美しく照らされていたのが印象的だった。
途中、音を重ねていくソロプレイを披露。「音楽はリズム、メロディ、ハーモニーから作られる」と言いながら、それをすべて一人で、ギター1本で重ねていく様は圧巻だった。もうどこまでが鳴っていて、どこまでが鳴っていないかわからない。ギターは弾くだけではなく、叩いて完成するものなのかもしれない。最後の“Carmen”は、まさにフラメンコ・ギターの良さを凝縮したような情熱的なプレイ。肉体は音楽で、音楽は肉体だ。彼の演奏を見ると、そう思えるはずだ。
「ありがとうありがとう〜!」「ギターひとつだけ!」「人生は美しい、マジで」「日本の人、外国の人、ポーランドの人〜?」など、日本語でのMCもまた面白くて名言揃いだった。サービス精神旺盛でギターもバカテク、なんて面白いアーティストなんだ。またぜひ日本に演奏しに来てほしい。
[写真:全10枚]