FUJIROCK EXPRESS '25

LIVE REPORT - RED MARQUEE 7/26 SAT

サンボマスター

  • サンボマスター

Posted on 2025.7.26 23:55

君と伝説を作りに、サンボマスターがやってきた!

疲れた社会人だから、励ましてもらいたくてサンボマスターに来た。グリーンステージでは山下達郎がまだプレイしているころだけれど、レッドマーキーには人、人、人。さすがの人気、それはそうだ。大きな拍手で迎えられた彼らは、力いっぱいの”輝きだして走ってく”を披露する。正直、最初から「かかってこいよ!」「準備はいいか、レッドマーキー!」とか、煽ってこられてもあまりノレなかったひねくれ者リスナーもいただろう。私もちょっとそうだった。しかし、山口隆(Vo&Gt)は想像以上に本気でぶつかってくる。“ミラクルをキミとおこしたいんです”で「おめえとミラクルを起こしにきた」「お前らがヘッドライナーだ!」という強い言葉たちに、心を動かされずにはいられない。「全員優勝」コールが会場を包む。このステージの目指すところは、フジロックでの全員優勝。仕事だいじょうぶかなとか、次の移動どうしようかとか、そういう焦りやモヤモヤをすべて打ち消すくらいのでっかい気持ちだ。

スクリーンに8時のカウントダウンが表示され、「時間は8時になりました!」と、夜20時すぎの苗場に“ヒューマニティ!”が始まる。朝の情報番組「ラヴィット!」のタイトルロゴと背景が表示され、お茶の間と苗場がつながってひとつになった。会場のテンションはMAXを更新し続ける。続いて“青春狂騒曲”では大シンガロングが起こり、山口のギター・ソロがパシッとハマる。“とまどうほどに照らしてくれ”では、近藤洋一(Bs)、木内泰史(Dr)が確かなリズムを前進させ、山口の強い願いの込もった歌声が響き渡る。レッドマーキーの屋根を突き破り、苗場の高い空から降り注ぐように。呪いを解きにきたんだと語る山口に、会場では涙を流す客も。今日までつらかったよね、と私は心の中でそっと声をかけた。

「戦争を止めるぜ、愛と平和!」という叫びが印象的だった”世界はそれを愛と呼ぶんだぜ”、フルで大合唱が起こった”できっこないをやらなくちゃ”など、キラーチューンがずっと続いていく。私は疑い深い人間だから、愛とか平和とか言われてしまうと、「それは本当なの?」って思っちゃうタイプ。でも、サンボマスターのライヴは嘘がない。本当の本当の本当に愛と平和を目指しているし、その瞳は全員で優勝を目指しているんだ。

山口は語る。自分がいなくてもいいと気づいてしまったのは、こんな土曜の夜だった。そんな自分の前にロックンロールが現れた。ロックンロールは死にたくなった人を探しに来ると。その流れから”Future is Yours”に突入する流れは、とてもドラマチックで、完全に心打たれてしまった。繰り返される「君はいたほうがいいよ」の言葉は、かつて死にたくなっていた山口と、死にそうになっていたリスナーたちと、これから生まれるロックスターの原石たちすべての心をほぐしていくようだった。泣いている観客に「なんで泣くのよ。冷静になっておじさんの顔よく見てみろ?ほら、笑った!」というMCの展開もとても愛おしかった。

今回、山口はしきりに「伝説」と「ロックンロール」を強調していたが、その答えがここにあった。「おい、こんちゃん、木内、思いっきりやってやろうぜ」と言うと、突如ザ・クロマニヨンズ“タリホー”が演奏される。会場がざわめくと、そこに、ヒロトとマーシーが登場した!!喜びとパニックでいっぱいになる会場で、ザ・クラッシュの“White Riot”が披露され、山口もこちらも感極まってしまった。あっという間のステージを2人がはけていき、最後は“ロックンロール イズ ノットデッド”でライヴを締めることになる。今振り返っても頭がふわふわしていて、あれは夢だったのかもしれない。でも、自分の前にロックンロールが現れて、「君はいたほうがいいよ」と確かに言われ、めちゃくちゃ元気に生きたくなった。山口がかつて体験したことを、我々もここ苗場で体験したのではないか?

「俺、なにも新しいことはしたくねえ。おんなじことやるだけ」と山口は言っていた。サンボマスターはロックンロールの列に並んでいて、さあ次は誰が続く?こうして伝説は引き継がれていくんだろうなと思った。

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