FUJIROCK EXPRESS '25

LIVE REPORT - NAEBA SHOKUDO 7/27 SUN

鈴木実貴子ズ

  • 鈴木実貴子ズ
  • 鈴木実貴子ズ
  • 鈴木実貴子ズ
  • 鈴木実貴子ズ
  • 鈴木実貴子ズ
  • 鈴木実貴子ズ
  • 鈴木実貴子ズ
  • 鈴木実貴子ズ
  • 鈴木実貴子ズ
  • 鈴木実貴子ズ
  • 鈴木実貴子ズ
  • 鈴木実貴子ズ
  • 鈴木実貴子ズ
  • 鈴木実貴子ズ
  • 鈴木実貴子ズ
  • 鈴木実貴子ズ
  • 鈴木実貴子ズ
  • 鈴木実貴子ズ
  • 鈴木実貴子ズ
  • 鈴木実貴子ズ
PHOTO BY古川喜隆
TEXT BY梶原綾乃

Posted on 2025.7.27 17:08

歌え、鈴木実貴子ズ!悔しさ、不安、後悔、すべての感情をここに置いていけ!

リハーサルの時点で、GREEN STAGEにも聞こえちゃうんじゃない?ってくらい全力で歌っている姿を見ていると、それだけで気合いの入り方というか一発かましたろうという思いが感じられるようでもあった。そうだよね、とも思う。鈴木実貴子ズの曲って、どうしても不器用で、うまくいかないことばかりの人が作っていると思うから。
苗場食堂の聴きなれた出囃子に、颯爽と登場する鈴木実貴子(Ag.Vo.)とズ(Dr.)。早速漫談みたいなMCで、ふたりの仲が悪くて、名古屋から苗場まで移動も泊まりもずっと一緒で、ストレスが溜まっていて、そのストレスという名の負のエネルギーで盛り上げていけたらと話す2人の様子には笑いが起こる。ねえ、ほんとに仲悪いんですか?

まずは、“音楽やめたい”。やめようとしたって、やめられない人の歌なのにね。実貴子のすべての感情をぶち込んだような大きな歌声が力強く響く。2人の演奏を見ている観客は、手を挙げている人はまばらで、ほとんどが微動だにしない。でも、わかるよ。すでにステージからあふれ出ているパワーに引き込まれてしまっているということが。
“生きてしぬ”、“チャイム”と、時間が進んでいくたび、背中を押される気持ちになる。扶助ロックのプロフィールだって「結成13年、30代半ばでメジャーデビュー。」で、MCだってもうなんか、本当に音楽を諦めたくても諦められなくて、嫌いにもなれなくて、なのに全然うまくいかなくて、そういう人が作る、カッコつけることもおしゃれでいることも丸投げにしたような、自分の生活をそのまま投影した歌詞が、いちいち突き刺さる。
「ハッピーエンドばかりではないけど、エンドばかりにこだわらず、自分が選ぶということ。その決断を受け入れるということ。それこそ、決断/決意だと思う」というMCから始まった“かかってこいよバッドエンド”は、まるで普通とか一般常識とか、そういう普通とされるものに対するカウンターパンチであるようにも思えた。目の前の死に物狂いで歌う人の様子を見ながら、自分の人生で諦めてしまったこと、選べずに、決断できなかったことを思い出しながら、私もこんなに(せめて人前に立つときくらいは)かっこよくいられたらいいのに、と思ってしまう。

3年前にROOKIE A GO-GOに出演しているが、緊張や不安のために思うように演奏ができず、悔しい思いをした旨を話してくれる実貴子。その悔しい気持ちを「払拭できるチャンスをくれてどうもありがとう」とそのときうまく演奏ができなかったという“正々堂々、死亡”を披露する。爆発するようなドラムとアコースティックギターの音、冒頭のMCでもあったようなストレスだけではなくて悔しさや後悔、そういう負の気持ちをすべてつぎ込んだ歌声が心を打つ。最後の“ファッキンミュージック”は、前回フジロックに出たときに思ったことを歌にしたという。そんなこと言っちゃって大丈夫?なんて心配になってしまうけれど、やっぱり音楽が好きで、ずっと諦められない人なのだと実感する。こんな不器用で、自分のすべてを振り絞るような40分に心が掴まれるのは当然のことのように思う。ものすごい現場を目撃してしまった。

[写真:全10枚]

TAGS
7/27 SUNNAEBA SHOKUDOXSUMI