FUJIROCK EXPRESS '25

LIVE REPORT - GREEN STAGE 7/26 SAT

CA7RIEL & PACO AMOROSO

  • CA7RIEL & PACO AMOROSO

Posted on 2025.7.26 21:33

友情も愛情も全部あって、地獄も一緒に過ごせそうな2人

まず、全力で彼らを呼んでくれてありがとうございます!(叫ぶ)。Tiny Desk Concert史上最多再生回数を叩き出したYouTube動画を機にブレイクスルーを果たし、急激な状況の変化そのものを作品にしたような『PAPOTA』のリリースに伴う2025年のワールドツアーの一環の今でしか味わえないライブが実現した。しかも成功の渦中にありつつ、その捉え方は自嘲を含むウィットに富んだもの。このリアリティはギリギリ今しか味わえない。再びありがとうございます。

グリーンの初っ端からアーティストの顔写真のバックドロップが吊るされるのも珍しければ、朝イチのステージで火柱が上がり、Co2がたかれるのも珍しい。本編ツアー中であると同時にコーチェラにもグラストンバリーにもベルリンとパリのロラパルーザにも出演するという、旬の中の旬。11:00からの出演にも関わらず続々人が押し寄せてくる。モッシュピットにはコアファンが詰めかけ、カメラがPACO AMOROSO(以下、パコ)とおそろいのファーハットを被ったファンを抜く。バンドメンバーもファンを獲得しているキャラの立った面々で、長いサングラスのフィリペ・ブランディ(Ba)、ずいぶん洗練されてきた若き鍵盤マスター、ハビエル・ブリン(P/Key)、パワフルなエドゥアルド・ジャルディーナ(Dr)とマクシ・サジェス(Perc)に加え、ホーン隊という布陣だ。

南米のイージーリスニングっぽい音楽に続き、生演奏が入るとこれがグリーン本日一発目とは思えないテンションに。主役のCA7RIEL(以下カトリエル)とパコが現れると、もう男性も女性もその他の人もみんな2人に恋してしまったような熱狂ぶりだ。カトリエルはオールブラック、パコはピンク基調の空調服。毎回違う衣装で臨む2人が酷暑の苗場仕様をデザイナーとともに考えたのかもしれない。野外の労働に不可欠なこの技術を衣装に用いたアーティストは他にもいるのだろうか。

ラテン/レゲトンな“DUMBAI”からスタートしたが、なんとご丁寧にもダブル・ビジョンに歌詞の翻訳が!これ、彼らを知らない人にもこの後、ストーリーを伝える役割を十二分に果たしていたと思う。着座スタイルなのにめちゃくちゃ湧くのは曲のキャッチーさと2人の頭のてっぺんから爪先までポップな存在感のせいだろう。パコは空中遊泳みたいなアクションを見せ、大いに湧かせる。“BABY GANGSTA”“MI DIOSA”と、ライブで馴染のショートチューンを繰り出し、“AMINO”ではカトリエルのメロディアスなラップの精度にあらためて驚かされる。もう何をやっても人間的・音楽的な筋力が半端ないのだ。

イントロで大歓声が起きた“IMPOSTOR”はビッグディールを交わすチャンスにも、自分がそんな大した人間だと思えないという逡巡が綴られる。成功を俯瞰してすぐ曲に昇華できるクレバーさが、下ネタとラブアフェアだらけの歌詞世界を笑えるものにしてくれる。カトリエルのギタリストとしての腕も素晴らしく、抹茶ミルク色のテレキャスから洒落たフレーズを連発。1曲のあいだに何度かギターを弾くのに、わざわざ手のひらに乗せたり、一度置いたり忙しい。インタビューで「魂と指先が直結してる者がどんな時代でも本物」という意味の発言をしていた彼。その意味を目にしている気分だ。その後も“BAD BITCH”など人気曲をシームレスにグリーンに放流していく。バンドも演奏することが異様に好きな連中だ。

おのおのソロを取る曲も挟みながら、“SHEESH”でいよいよ立ち上がり、しなやかなアクションでちょっと驚くほどのオーラを放つ2人。後半の見ものはカトリエルがポーズをキメつつ空調服の電源をオフにしたのか?空気が抜けたと同時に鍛えられた半裸を見せてパフォームするという流れ。こんなステージパフォーマンス、他で見たことないよ。対照的にパコは空調服の丸いシルエットのままライブを続け、そのシュールさもまたカトパコならではのユーモアに感じる。

2人ともエキサイトしてるのは手に取るようにわかるが、言葉にするのはパコの役目なのか「お前らマジでアツいな!センキュー!センキュー!センキュー!」そして、「また戻って来る」を5回繰り返してオーディエンスは熱狂&爆笑。何もかもがトゥーマッチだけど、それが似合うスター性を前にすると久しぶりに何か濃厚な料理とアルコール度数の高いお酒を食らったように完全降伏してしまう。

人生に起きた突然の成功物語は幼馴染の友情を歌う“DIA DEL AMIGO”で終着点にたどり着くのだが、旅先でたまたま「俺たち同じ女の子と寝てたのか!?」というよくない仲の良さを発揮しつつ、女の子や会社の偉い人なんかに騙されてたまるか、友情の方が大事なんだという結末に至ると不思議と泣けてくる。「君は友達」というシンガロングはオーディエンスを巻き込んでカトパコの凸凹した人生を祝うようだった。それでエンディングかと思いきや、おもむろに再登場。若きテクニカルなキーボーディスト、ハビエル・ブリンのソロも盛り込んだ“EL UNICO”、そしてエンディングへ。最後はキスを交わす2人。もうなんか無敵である。友情も愛情も全部あって、地獄も一緒に過ごせそうな2人のとんでもない人生の苛烈な季節を見せてもらったのだ。

ちなみに秋からはケンドリック・ラマーの南米ツアーに参加するそうである。もうどこまででも行ってくれ、と思う。

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