FUJIROCK EXPRESS '25

LIVE REPORT - WHITE STAGE 7/25 FRI

おとぼけビ〜バ〜

  • おとぼけビ〜バ〜
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Posted on 2025.7.25 18:07

時を経て突きつけられた「愛という憎悪」

「おとぼけビ〜バ〜」への期待は、MCが注意事項を述べている時点から自然発生的に立ち上がる手拍子に表れていた。

フジロックに限定した経歴では、2017年にルーキー・ア・ゴーゴーで初の出演。2022年には、開けてみてのお楽しみこと、ビックリ箱的な前夜祭(レッドマーキー)への抜擢があり、呑んだくれにとっての憩いの場こと苗場食堂へ。そして今年、ホワイトステージへと駒を進めたとのことだ。

フェスならではの限られた時間、「(フジロッカーを)待たせる時間すらもったいない」とばかりに、すぐさまステージに現れたポップな佇まいの4人。背後のスクリーンに大写しにされているバンドのロゴは、極めてゆるいフォントである。しかしながら、いざ口を開けば「デストロイ!」などやたら物騒な言葉が並び、絶えずこちらを殴りつけてくるかのようなMCを繰り出す。全方向を口撃し尽くし、ステージと相対するオーディエンスは、ライブの開始早々に僕(しもべ)となってしまった。

MCにおいてオーディエンスを思うがままにいじってくるのはギタリストで、ヴォーカリストでないのは意外だった。しゃがれた声でパンチの効いた単語を矢継ぎ早に投げてきて、その単語自体は尖っているものの、要所要所には隠せない可愛げがある。RATMのトム・モレロか、あるいはバタやん(田端義夫)かというほどに高い位置でギターを構え、まるで神経の反射をどれひとつとして取りこぼさないように弦を掻きむしり、爆音を繰り出す。そして、そのフレーズを活かすリズム隊はといえば、太く強靭な音の壁でぶちかます。ヴォーカリストは歌詞を用い、何気ない日常のワンシーンを罵倒へと作り変えては、楽器に力負けしない声量と圧でもって塗りつぶしていく。

それぞれの表情は実にバラエティ豊か。歌詞とは裏腹に、どこを切り取ってもネガティヴな要素はなく、常に自信と充実がみなぎっている。ファンには怒られるかもしれないが、私は初見。「SNSでバズっている」とのことで、それにはなるだけ遭遇しないよう、苗場での初見のために温存してきた。それほど話題を呼んでいるならば、予備知識を入れずに、生で浴びたいと思ったのだ。

いざ初めて見たらば、パンツ上等、中指上等。世間一般的なメディアにおいては、即レギュレーションに抵触する所業である。「webの生配信? 関係ないわ!」と言わんばかりに、全身全霊のパフォーマンスを繰り広げており、清々しさすらある。静と動のメリハリ、放送事故ばりの時間停止など、セオリーをやすやすとぶっちぎる肝の据わった振る舞いは、さんざん罵倒されようが応援したくなるものだった。そのエネルギーには「性別の別」などなかった。ただただホワイトステージに誇らしげに立つ強い奴らが、日本のロックンロール史に刻まれた「愛という憎悪」をことさら増幅して、オーディエンスに叩きつけていたように思うのだ。

フジロックは、世間という「下界」から離れる口実であり、しがらみを捨て去る場所として機能していると思う。2025年のフジロック、朝イチのホワイトへと来てみたらば、色違いのワンピースで揃えた、やたらと強いバンドが「やりたいようにやっていた」。週6で働いていた過去の苦労を歌詞に落とし込み、笑い飛ばしながら、さらに上へ上へとのしあがる気概は、ジャンルというくくりを破壊する芯の通ったパンク精神があり、ハードコアそのものだった。

ホワイト・ステージは、かつてイギー・ポップが「デストロイ!」と声を大にして叫んだステージである。今後は着実にフジロックの常連となっていくであろう彼女たち。そう遠くない未来に、グリーン・ステージで見られるはず。これからも、フェスのみならずライブハウスにおいても、正対してボコボコに殴られたいと思うほどに、愛に溢れ、楽しく刺激的な時間だった。

[写真:全10枚]

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7/25 FRIWHITE STAGE