LIVE REPORT - WHITE STAGE 7/27 SUN
羊文学
変わっていくけど、変わらないもの
2016年の光景を覚えている。私は、ルーキーアゴーゴーで彼女たちを目撃し、急いで物販の列に並んだ。かつて想像できた売れ方を遥かに超えた人気の今、とても驚いている。羊文学のような繊細な音楽が広く人々に受け入れられていることが素直に嬉しい。
照明が落ちて、塩塚モエカ(Vo.Gt.)、河西ゆりか(Ba.)、サポートは元CHAIのYUNA(Dr)が登場。“Addiction”のベースとドラムのビリビリとした音像にすっと入ってくる塩塚の透き通った歌声。手をくねらせ笑い、喜びがいっぱいのスタートだ。
塩塚と河西が向き合いながら音をあわせ、よりドープな空間になっていく“Burning”。底の知れない羊文学の世界にうずぶずぶ沈んでいくようだ。脈打つドラム、キレイなファルセットが苗場の自然に抜けていく“絵日記”など、休みもなく立て続けに披露していく。“深呼吸”から“Flower”の流れでは、塩塚の目がときに憂いときに殺気立ち、曲の強弱をより確かなものとしていた。“光るとき”のスモークにあふれる中、世界は美しいと歌う塩塚の優しく儚い笑顔が眩しかった。
赤い照明がステージを包み、“FOOL”に突入。その勢いで“祈り”に流れ込み、後半からは力を増していくばかり。塩塚と河西の織りなすハーモニーが美しく立つ。エフェクターをいじり、ぐわんぐわんと歪む会場の中、ストンと“more than words”に落ちる。“GO!!!”ではクラップが湧き、観客もまるごと一斉にGO!をする。“OOPARTS”をしっとりと聴かせたら、最後に飛び跳ねたり音をかき鳴らしたりして、時間を惜しむようにHAIMにバトンを託していった。
暗闇の中から手探りでランタンを探すような不安感、人生の苦悩などを、か細くときに力強く描いていく羊文学のサウンド。より多くの人の耳に入ったことで、孤独でも孤独じゃないと人々は思えるようになったはずだ。リハーサルで演奏した“1999”をはじめ、“あいまいでいいよ”、“マヨイガ”などを抜いた攻めのセットリストだった。ヒットに恵まれた中で今一度羊文学の現在地を見直すようなステージに、こちらも背筋が伸びたような気がした。
[写真:全10枚]