LIVE REPORT - RED MARQUEE 7/26 SAT
downy
Posted on 2025.7.26 19:21
静と動へ、蠢く唯一無二の轟音と雄たけびを
この日のdownyは、少しでも気を抜いてはいけないような緊迫感を常にまとっていて、気合いとか緊張感とはまた異なる雰囲気を終始帯びていた。それは、冒頭の青木ロビン(Vo/Gt)の咆哮からも感じ取れるようでもあった。
SEもなく、後ろのスクリーンには砂嵐が映し出され、メンバーがゆっくりと持ち場に入る。正式メンバーで見られない悲しさはもちろんある。しかし、ギターはeksperimentojの若命優仁、Sampler/SynthにはAureoleの森大地と、どう考えても絶対に今見ておきたいサポートメンバーで固めている。
1曲目は“春と修羅”。仲俣和宏 (Ba)と秋山タカヒコ (Dr)の複雑なドラムとベースのフレーズに、不安を覚えるようなピアノが一音ずつ乗せられていく。タイムテーブルが発表された時点で思っていたけれど、やっぱり朝が似合うはずなんかない音がステージ上から聴こえてくるのだから、ふっと笑いそうになってしまう。ピアノに気を取られながらも、金属音のがなるようなギター、そして体内から絞り出すかのようなシャウトが、徐々に場の空気を変格させていく。目の前の演奏に釘付けにならざを得ないので各メンバーに視線を送ってしまうが、背後に映し出される楽曲を抽象的に体現した映像を含めて、downyのひとつの演奏であり、体験であるというのを思い出す。
“日蝕”を聴いていると、よくもまあこんなに難解な曲を人前で演奏しようと思ったな……なんて考えてしまう。一寸の狂いも、少しのミスも許さないような空気を感じつつも、フジロックのステージに対しての気負いのようにも思えた。静から動へと蠢きながら、それは今この時間にとってとてもいい効果を与えているようでもあった。次は、“枯渇”。今年の5月にリリースされたアルバムからの楽曲が続き、それぞれのフレーズは入り込んでいくかのごとく混ざり合っていく。ボーカルだってひとつの楽器のようだった。周りの観客たちも身体でリズムを取るのは難しいでしょうに、肩を揺らしながら、それぞれの思う形で楽しんでいるのがわかる。
青木ロビンがアコースティック・ギターに持ち替えて、重なっていくギターの音と濁流に飲まれたかのような重低音から始まった“視界不良”、「朝が似合わないのは俺たちが一番よくわかってるよ」というMCに笑いが起こったあとの“Night Crawlin’”では、クリーンなギターがメロディアスに鳴らされ、ベースをアクセントにしながら耳に飛び込んでくる青木ロビンの繊細な歌声が強く印象に残った。
そして、サイケデリックな映像をバックに全身に浴びるような轟音が気持ちよく、何かがキマりそうな“foundyou”、そして豪雨のようなギターサウンドが印象に残る“弌”で40分間のステージがあっという間に過ぎていく。雄たけびともいえるシャウト、各々の音がぶつかり合い、こんなに鬼気迫った演奏を聴くことができる唯一無二のバンドなのだと改めて実感できた。
今回演奏された曲は、“弌”以外が再結成後に発表された楽曲であったし、7曲中4曲が3月にリリースされた新アルバムからであった。結成25周年を迎え、活動休止や再開、青木裕の逝去などさまざまな出来事があり、それでも前を見ながら自身やバンドと向き合い、続けていく覚悟のように思えたし、一切の妥協を許そうとしない彼らの姿勢を見受けられたような気もした。
演奏後、RED MAQUEEの外側を指さしながら、「俺ら、そこらへんで飲んでるから、よかったら挨拶してね!」と言っていたけれど、あんなに凄まじい演奏をする人たちに、軽々しく話しかけられませんっ!(笑)
[写真:全10枚]