FUJIROCK EXPRESS '25

LIVE REPORT - RED MARQUEE 7/27 SUN

THE HIVES

  • THE HIVES

Posted on 2025.7.29 09:19

ハイヴスがそうさせたのだ

定刻5分前くらいにレッド・マーキー後方から入ってみると、すでに屋根のエリアになんとか入れるかくらいの人が溢れていて、登場の気配だけで歓声が飛び交う異様な熱気を放っている。SEが止まった時の大歓声に早速圧倒され、クリックに合わせてカウントダウンのように加速する手拍子の熱量にも圧倒され、ライブがはじまる直前の前方につまるやつ(なんか名前ないのかこの現象)も、今まで感じたことのない勢いがあった。始まる前でこれってなんなんだ。これからなにがはじまるんだ。

“Bogus Operandi”、“Main Offender”と繰り出し、最初からもうトップギアの熱狂を見せている2005年以来のハイヴスとレッドのオーディエンス。隣のブルー・ギャラクシーやGAN-BAN SQUAREから苦情がくるんじゃないかってくらい爆音のバンドサウンド。そして、挙動ひとつひとつがフロアの熱気のためにあるかのようなハウリン・ペレ・アームクヴィスト(Vo)の目が離せない立ち振る舞い。もう知ってる曲かどうかとか関係なく、わけがわからず巻き込まれてしまう。BBCが「自然の力」とか評したのはこういうことか。こりゃあ体感しないとわからない。

“Rigor Mortis Radio”でも凄まじい手拍子が巻き起こり、全部聞き取れるわけじゃないが、大袈裟な手振りとテンションでもうなんかアツいペレのMCにも、挙動ひとつひとつに大歓声。一曲一曲これでもかと煽りを入れ、すっげえタイトルだなと思ってた来月リリースの最新作『The Hives Forever Forever The Hives』から収録曲を演奏するたび、タイトルをコールアンドレスポンスする用意周到っぷり。フロアを楽しませようとするホスピタリティが溢れる、極上のロック・エンターテイメント。こんなの他では味わえない!

そんな最新作からの“Paint A Picture”では曲の途中で深々とお辞儀するペレ。なんかアスみたいで清々しいな、いやアスがハイヴスみたいなのか。北欧の先輩の魂を受け継ぎながら我が道を行くんだぞ。とか思っていると、ステージの5人がフリーズ。ペレもお辞儀の姿勢のまままったく動かない。さすがにそろそろだろと思ってもまだ動かない5人の姿にどんどん歓声が大きくなり、満を辞して動くと同時にフロアも大爆発。“Legalize Living”も最高潮に盛り上がり、ハイヴスの5人は単なるレジェンドではなく、現行最前線のライブバンドだということをリアルタイムで更新していく。

「BIG HIT IN FUJIROCK!」と繰り出した“Hate To Say I Told You So”はちょっとディレイする入りにゾクゾクしたし、ハイ・ヴォルテージをさらに大きくする緩急が随所に織り交ぜられた百戦錬磨のライブバンドの貫禄。だからこそ異様に速い“Trapdoor Solutinon”も際立っていて、“Enough Is Enough”、“Come On”などでも、終盤に向かって熱量を膨張させていくレッドのオーディエンスがそこにはいた。僕も汗だくでかなり消耗しているが、音漏れじゃなくて意地でもフロアに食らいついていたいなにかがここにはある。

何度も繰り返して来た「レディース!ジェントルマン!レディース&ジェントルマン!」という煽りも一際歓声があがり、最後は言うまでもなく“Tick Tick Boom”。台に乗って盛り立てたり日本語で「大好きだよ!」と繰り出したり、後半ではかなり長尺のメンバー紹介を織り交ぜたりと、ここでもフロアを高揚させるペレ。右と左に寄って中央を空けてくれという指示にウォール・オブ・デスか!と思っていると、フロアに降りてペレがPA前あたりまで来ているらしい。何が起こってるんだ?そしてペレに言われるがままみんなしゃがんで(とはいえ何が起こってるか気になりすぎるので中腰気味)、ブレイクで一気にステージに向かって駆けていくペレとジャンプするオーディエンス。もうこれには大興奮で、残っているものを全部ぶちまけてハイヴスのライブは終幕を迎えた。

疲れてたしうしろの方でゆっくり観るつもりが、いつの間にかかなり前に来ていた。全部ハイヴスのせいだ。このあと少し休むつもりだったのに、気づいたらこの熱狂を共有した人たちの流れに乗ってグリーン〜ホワイトに向かっていた。全部ハイヴスのせいだ。でもさらに疲れたはずの心と身体に再びギアが入り、消耗感さえ心地いいのは、全部ハイヴスのおかげだ。完全燃焼して再起動というわけのわからんことをやってのけた、ハイヴスとオーディエンス。「地球上で最高のライブバンド」「ロック界最高のフロントマン」は伊達じゃないことが証明された、今年のレッド・マーキー大トリのステージであった。

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