FUJIROCK EXPRESS '25

LIVE REPORT - RED MARQUEE 7/27 SUN

kanekoayano

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PHOTO BYfujirockers.org
TEXT BY石角友香

Posted on 2025.7.27 22:52

バンドkanekoayanoの自由と覚悟

正直びっくりした。ライブ、こんなサウンドだったっけ?パッと思いついただけでもMy Bloody Valentine、ときに初期のRadiohead、曲によってはOGRE YOU ASSHOLE……。バンドKanekoayanoの初作にして最新作『石の糸』のインタビューで、彼女はシンガーソングライターのバンドアレンジみたいなのが嫌と言っていたが、そのニュアンスはすごいわかると思った。カネコアヤノが「バンドにしよう」と提案したことは彼女を自由にしたと同時にミュージシャンとして腹を括らせたところもあったんじゃないか。もう、そのことがダイレクトに伝わるライブだった。

RED MARQUEEは外まで人が溢れる盛況ぶり。テントの中の音はかなりの轟音で、外に出るとベースのローが他の音より強く響いてしまい、やはり中で観るのが正解ではある。ステージ上はほぼ観えないが出音を確かめるべきだろう。どうやらバックライトでシルエットになっているようだ。のっけから林宏敏(Gt)のリバーヴィなサウンドが空気を揺さぶる“石と蝶”。カネコのボーカルはただ伸びやかというより柔らかさと鋭さが交互に来るのが破壊力になっていると思っていて、いまのシューゲイズなバンドサウンドにより自然にハマっている。のっけから10分近い体験的な演奏が聴けた。バンドkanekoayanoを演奏と音でわからせた感じ。

“アーケード”もいまのアンサンブルと音になり、“太陽を目指してる”は音でメンバー同士が喋ってる印象で、“僕と太陽”はサイケなギター、ダンスミュージックのようにベースのローが効いている。どの曲もぐっとフィジカルに来る。カネコの表情など細かい部分はわからないが、遠目に伸びた髪とシンプルな黒いワンピースがフォークの女性シンガーみたいに見える。印象としてはジョニ・ミッチェル。仲間とともにバンドを始めたばかりの、しかし自分が作詞作曲した楽曲をやるバンドのメインソングライターの凛々しい感じだ。

新作からの“さびしくない”はカネコのボーカルがこちらに「おまえ、なんか嘘ついてんじゃないか?」と過度な褒めとか誇張に対する忌避感があって、それが彼女の歌を「まっすぐ」だと形容することにつながるのかな、と思った。なかなかすごい曲である。「さびしくない」のリフレインがとぐろを巻いて、大きく振りかぶったカネコの髪が揺れた。

“気分”に続き、フリーなセッションぽい“ラッキー”でミュージシャンそれぞれの個性がわかる。ブルージーだったりダブセクションぽい箇所があったり体験的なライブアレンジだ。以前の曲もバンドアレンジになって彼らが何を試行してるのかがわかるし、長いギターソロも自然に聴こえる。

さらに新作からの“WALTZ”、難しいという気持ちをそのままの純度で叫ぶ“難しい”はフューシャピンクのライティングがより意識をそっちに向けさせたのかもしれないが、マイブラの“Loveless”じゃん!と心の中で呟いてしまった。楽器がノイズを放ちまくりエンディングを迎えたのも痛快だった。フジロックで、しかもキャパとしては大きくはないRED MARQUEEでバンドkanekoayanoはその実相をしっかり刻みつけたのは偶然じゃなかったと思いたい。

メンバー:カネコアヤノ(Vo/Gt)、林宏敏(Gt)、takuyaiizuka(Ba) / サポートメンバー:SEI NAGAHATA(Dr)、宮坂遼太郎(Perc)

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7/27 SUNRED MARQUEEXSUMI