LIVE REPORT - ORANGE ECHO 7/25 FRI
ALKDO
オレンジエコーで沸き立つ祭りの鼓動
今年のフジロックで新設されたオレンジエコー。ステージの設営は愛知県豊田市で開催されている『橋の下世界音楽祭』のチームが手がけるという情報はキャッチしていたが、現場に行ってみると想像以上に橋の下を思わせる装飾になっていてテンションが上がる。橋の下のステージが苗場にやってきたみたいだ。
初日の夕方には、橋の下世界音楽祭を主催するタートルアイランドのフロントマン・永山愛樹と竹舞のユニット『ALKDO』が登場。ステージ前には橋の下のTシャツや手拭いを身につけた人たちが集まっていた。きっと、このステージで見るALKDOを心待ちにしていたのだろう。自分もその一人だ。
ギターボーカルの永山と太鼓の竹舞という部隊に、ゲストとしてベースの鈴木栄治(dachambo)が加わる編成。ゆったりと、しかし足腰の強さを感じるグルーヴが真新しいステージに渦巻いていく。
永山の歌は、言葉の一つひとつが意味だけでなく、意思を伴って聞こえてくる。時に鋭い矢のように、時に動物の遠吠えのように響き渡る竹舞の声は、一瞬で聴く者の意識を振り向かせる力強さがある。気づけばステージ前には多くのオーディエンスが詰めかけていた。
ライブの後半には“イムジン河”が演奏された。この曲について永山は「これは朝鮮半島で生まれた歌なんだけど、朝鮮半島の歌というよりは、国家というバケモノみたいな得体の知れないものに翻弄された民衆の歌なんだと思っている」と語った。
続けて、「うちのじいちゃんは約100年前、朝鮮半島が日本だったころに渡ってきました。働いて働いて、差別もされながら、優しくもされながら。そうやって親父が生まれて、俺が生まれたんです。まさか今の時代に外国人を排除しようとする声が高まっているなんて、僕には信じられなくて。今の国の礎を作るために働いた人たちのなかには、日本人以外もたくさんいます。国というのはもちろん大事だと思うけど、それよりも大事なのは一人一人の命だし、そういう観点で物事を考えていきたいと思います。もう21世紀ですから」と語ると、会場からは大きな拍手が巻き起こった。
オレンジ色に染まり始めた夕空に「誰が私たちを分けてしまったの 誰が世界を分けてしまったの」という歌詞が響き渡る。言葉、声、景色が相まって、胸が掻きむしられるような光景だった。
そこからライブは一気に加速していく。多くの人が待ち侘びていたであろう“この世讃歌”が演奏されると会場のボルテージは最高潮に。民衆が一斉に踊りだす。そのままセックス・ピストルズの“アナーキー・イン・ザ・U.K.”の曲に永山が独自の歌詞をつけた“穴あき音頭”へと雪崩れ込み、オレンジエコーはお祭り状態になった。
様々なワールドミュージックが演奏されてきたオレンジコート(オレンジエコーの前身)が、フジロックで1番好きなステージだったという永山。戦争に反対し、自分たちで祭りを作り続けてきた彼らの音楽が、フジロックに誕生した新たなステージに鳴り響いた日のことを、僕はきっと忘れない。
[写真:全10枚]