LIVE REPORT - ORANGE ECHO 7/26 SAT
LEENALCHI
韓国伝統音楽とニューウェーヴの美味なる出会い
サウンドチェックからものすごい丁寧な詰め方で期待が高まっていたものの、ORANGE CAFÉのエリアから人がほぼいなくなってかなり心配していた。が、杞憂だった。20:20にはワラワラと人が集まり、オンタイムに動物をおびき寄せるような声色が夜の山に似合い過ぎな曲でスタート。アン・イホ(Vox)、チェ・スイン(Vox)、パク・スボム(Vox)、ラ・ソジン(Vox)という男女2人ずつの歌とラップに似た語りのメンバーとチャン・ヨンギュ(Ba)、チェ・イジェ(Ba)のツインベース、オ・ヒョンソク(Dr)という変則的な構成だが、声の個性が強いため、ギターや鍵盤の音域が不要なんだと思う。
韓国の口承伝統であるパンソリとニューウェーヴ、ポストパンクなビートが出会った彼らの音楽は端的にダンス・ロック好きに刺さりまくる。女性ふたりの人間じゃない生き物の声の要素や民謡っぽい声の震わせ方は初見でもキャッチー。さすがに物語を声で伝えるパンソリがベースにある基礎体力の違いというべきか。しかもツインベースであることの旨味も大きく、個人的にはニュー・オーダーやクラウトロックも思い出すプレイの女性ベーシストにメンバー中最も惹かれた。誰一人欠けてもこのバンドは成立しないだろうけど、際立った個性は彼女が担っていると見た。
すべての曲名まではわからないのだが、例えば、韓国観光協会とのコラボ映像で世界的に視聴回数が伸びた“Tigar is Coming”のクールなビートとユニークな声の表現は自然に踊りだしてしまうし、メロディは新鮮この上ないし、ステージングはダンスロックバンドのソリッドさとポップボーカルグループの華やかさを兼ね備える。クールなビート以外にもヘヴィ・ロックっぽいナンバーもある。が、すべて声の表現が格別に新鮮なのだ。しかもグッズの紹介もサラッと行い、リーダーはオーディエンスに自分が持っていたTシャツを投げ込む勢い余った(?)アクションも。
演奏そのもので十分楽しんだが、1曲1曲のストーリーを知ればさらに楽しめるはずで、またどこかで再会したいとせつに思った。世界中をツアーする彼らのこと、きっとどこかで会えるだろうし、なんなら韓国旅行の理由がまた増えたとも言える。
PS それにしてもORANGE ECHO、未知の音楽に出会えるし、時間によってはこのエリアのごはん屋さんも空いていて穴場です。
[写真:全10枚]