FUJIROCK EXPRESS '25

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政治と音楽、そして

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Posted on 2025.7.30 02:37

フジロック2025をふりかえって

フジロックは、自由な場だとよく言われる。それはたぶん、大自然の中で自由に音楽と向き合えるからだ。そして、排外主義が蔓延する社会で声を上げる自由があるのもフジロックである。

今回のフジロックでは、DYGLの秋山信樹がレッドマーキーにて「あらゆる差別と、あらゆる区別と、あらゆる構造的差別、あらゆる植民地主義に反対します」とはっきりと言葉を発した。そして、バスクの独立を掲げて活動してきたフェルミン・ムルグサは、ホワイトステージで力強く「Free Free Palestine!」と訴えた。他にも、戦争、差別、平和について言及しているアーティストは少なくなかった。これらの言葉は、音楽が持つ連帯の力を信じるような、切実な表現のように思える。

その一方で、観客側でもパレスチナの旗が掲げられていた。振っていたのは、インディペンデント音楽メディア「漂流音楽」のメンバーたちだ。彼らはフジロック2025開催に向けて、ガザやスーダンの人道危機を忘れてはならないというメッセージを発信していた。旗を振るという行為は観客の意思表明でもあり、この激動の時代にパレスチナの旗を掲げる人がいてくれてよかった、と私は思った。正直な話、グラストンベリー・フェスティバルに比べて、フジロックでは政治的な意思表示や旗が少ないと感じていた。それが悪いと言いたいわけではなく、フェスの楽しみ方に正解はないし、特に意思表示をせずに帰るのも一つの過ごし方だ。

しかし、音楽はいつだって政治と無関係ではいられない。時にはプロパガンダに利用される。ロックが反権力の象徴となることはよく語られるが、そうではない時だってある。例えば、エルヴィス・プレスリーは徴兵され、1958年から2年間、西ドイツの米軍基地で勤務していたことがある。実際、当時のNATO(北大西洋条約機構)の機関紙でも音楽を利用することが言及されており※、ロックスターである彼が、冷戦下の西側の象徴として、国家や軍という権力に利用されていたといっても過言ではない。

「音楽に政治を持ち込むな」という言葉を聞くこともあるけれど、私はいつも違和感を覚える。私たちリスナーが自分の聴いている音楽がどのような位置づけをされるのか、どのような立場でいるのかを考えることは、音楽を聴くという行為の一部でもあると思う。今年のフジロックで語られたこと、掲げられた旗。それらは、何かを信じろと押しつけてくるものではない。むしろ、どう受け取るかはあなた次第だ。

政治と音楽、そして

その先に、どんな言葉を続けるのかは、私たち一人ひとりに委ねられている。

※半澤朝彦編『政治と音楽ー国際関係を動かす“ソフトパワー”ー』晃洋書房,(2022)を参照。

[写真:全3枚]

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