FUJIROCK EXPRESS '26

LIVE REPORT - ORANGE ECHO 7/25 SAT

タデクイ

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Posted on 2026.7.25 21:18

フジロックで見せつけた“底知れなさ”

ライブの直前まで激しい雨に見舞われていたオレンジエコー。そんな状況を気にする素振りもなく、タデクイはリハから全開だった。

気持ちがこもった演奏に、最前列に陣取ったオーディエンスからは早くも歓声が上がる。「気持ちいいね。もう(ギターを)降ろしたくなくなっちゃった」と呟く下倉幹斗(Vo / Gt)の姿を見て、初めてのフジロックでのライブに期待が高まる。

依然として雲は厚いが、雨は止んだ。かんかん照りの晴天よりも、雨上がりのしっとりした雰囲気のほうが彼らの音楽には合いそうだ。1曲目に選ばれたのは“青空”。ゆったりしたイントロに、艶のある下倉の声が重なっていく。力強いベースラインで曲を引っ張っていく廣野大地(Ba)と、どっしりしたリズムでバンドを支えるOMI(Dr)。淡々とした表情で演奏をする2人からは、まるで気負いを感じない。幼馴染でもある2人に身を任せて、下倉は時に独り言をこぼすように、時に感情を爆発させるように歌う。静かに節目がちに佇む姿と、人の心を射抜くような視線でがなる姿が、まるで別人のようで目が離せない。

「北海道から来ました」というMCに続いて演奏されたのは、ボサノヴァ風な曲調の“夢を見ながら”。先ほどまでの骨太なロックからのギャップにやられてしまう。このバンドが持つ音楽的な幅の広さを、まざまざと見せつけられた。ブルースやジャズ、サイケなど様々な音楽を吸収してきた彼らの、独自の解釈を恐れない姿勢はバンドを唯一無二の存在へと押し上げている。

タデクイのライブを初めて見たのは、彼らの1stアルバム『MOTHER』をプロデュースした加藤修平(NOT WONK)が主催するFAHDAYでのことだった。加藤の地元である北海道の苫小牧市民会館で開催されたイベントにタデクイも出演していたのだ。メインステージから出たところにある階段の踊り場でライブをしていたバンドの曲に足が止まった。なんてかっこいいバンドなんだと駆け寄ると、想像以上に若い3人が演奏していた。そのときのタデクイのイメージは寡黙で、少し近寄りがたい印象だった。たしか、3人ともスーツを着て演奏していた気がする。

しかし、今日のステージでは印象がガラッと変わった。MCでは下倉が「フジロックって憧れじゃないですか。僕、バンドを始めてよかった」と屈託のない笑顔で語り、お客さんとの掛け合いもほのぼのしている(3人ともTシャツでステージに立っていた)。最近のインタビューで「肩の力が抜けてきた」と話していたが、そういった影響なのかもしれない。バンドの変化をリアルタイムで感じられるのは、ファンとしては嬉しいものだ。

ギターの弦が切れるハプニングを経て、リズミカルなメロディにのせて物語が展開していく“グレア”、曲が変幻自在に転調していくブルージーな“やさしさ”と、アルバムの曲順で2曲が披露された。どこまでも届きそうな伸びやかな声で歌い上げられる「あーあ」という歌詞の鳴り方は、生で聴くとより一層鮮烈だ。下倉の歌声は、聴いている人に様々な景色や感情を描かせる力を持っている。

気がつけばオーディエンスはPA席の後ろまでいっぱいになっていた。もう戻れない日々を想い、静かな焦燥感が歌われる“屁理屈”は、タデクイ屈指の名曲だと思う。音数が少ない分、言葉がクリアに胸を打つ。「憧れで夢を語るには大人になりすぎたみたいだ」と歌う下倉が、絞り出すような声で「生きていたいの」と曲を締めくくる場面は鳥肌ものだった。

「愛とリスペクトを持って暮らしていきましょう。そうすればきっと幸せになれるんで。元気でちゃんと飯食って、ちゃんと寝て、たまに温泉入ったりして、それがいいと思う。本当に温泉は大事だと思います。マジで、マジです」。最後のMCで語られた言葉からは、彼らが何を大切に暮らしていて、タデクイの曲がどのように生まれているのかが垣間見えた気がした。

壮大な物語の幕開けを思わせる“舟”のイントロに、会場にはこの日一番の静寂が訪れる。美しいメロディを奏でながら、バンドがグルーヴを加速させていく。「悲しいね 終わりが来なくて 苦しいね いつまでも変わらない景色で」と叫ぶ下倉の歌は、彼が見てきた景色も感情もすべてをこの場に連れてくるように鳴り響いた。

新たな一面を知れたかと思ったら、また遠くへ離れていくような感覚。人としての魅力も、音楽的な可能性も、底知れないバンドだと思った。次はもっと大きなステージで観たいと思ったのは、自分だけではないはずだ。喜びも悲しみも携えて、またフジロックに帰ってきてほしい。

[写真:全10枚]

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7/25 SATORANGE ECHO