FUJIROCK EXPRESS '26

LIVE REPORT - WHITE STAGE 7/26 SUN

SOFIA ISELLA

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Posted on 2026.7.26 16:55

ホワイトステージは劇場になった。SOFIA ISELLAという名の総合芸術

フジロック最終日も早くも、16時を回った。祭りの終わりを告げる足音が、少しずつ近づいている。雲が垂れ込め、ときおり小雨がぱらつくホワイトステージ。薄暗い空模様は、次に姿を現すアーティストを迎え入れるために用意されたかのようだ。登場するのは、SOFIA ISELLA(以下、ソフィア)。「ダーク・ポップ」、「アート・ロック」、「スポークンワード・ポエトリー」を自在に横断し、クラシックで培ったヴァイオリンの素養と文学的なリリックで、世界中で注目を集める新世代の表現者だ。

開演時刻。「SOFIA ISELLA」の文字がスクリーンにゆらゆらと揺らめく。不穏な低音ビートとノイズが場内を覆い尽くすと、顔も全身も泥にまみれたような姿のソフィアが、妖しく踊りながら登場し、“Out of Garden”で幕を開ける。

ステージを舞うように踊りながら、不敵な眼差しでフロアを見据え、つぶやくように、静かに歌いはじめる。やがてギターを手に取ると、高々と掲げる。そのひとつひとつの所作にソフィアの世界観を形づくる感情が宿っているようで、まるで一編の演劇を観ているかのよう。

不協和音を伴うビートが鳴り響くと、ソフィアは「Hello Japan! How are you fuckin’ feeling!?」と叫び、そのまま“Hot Gum”へなだれ込む。ステージでは、しゃがみ込み、ふらつくように歩きながら囁くように歌ったかと思えば、次の瞬間には感情をむき出しにして絶叫する。胸元のTシャツを引き裂かんばかりにつかみ、挑戦的な眼差しで言葉を吐き出す。

やがてTシャツを脱ぎ捨て、黒いキャミソール姿になると、ヴァイオリンを手に取る。幼少期からクラシックヴァイオリンを学んできた確かな技術に裏打ちされた演奏は、鋭くも美しく、轟音サウンドの中でも圧倒的な存在感を放っていた。

雨脚もさらに強まってきた。しかし、その冷たい雨さえも、ソフィアが生み出すダークで退廃的な世界観をいっそう際立たせる演出の一部のように思えてしまう。

「聞こえないよ、フジロック。 What do you want!?」静かにソフィアが挑発するようにあおり、“Josephine”へ。敬愛するトレント・レズナーを彷彿とさせる重厚なビートがじわじわとフロアを侵食していく。髪を振り乱しながら歌い、しゃがみ込んではヴァイオリンを激しくかき鳴らす。その姿は、美しさと狂気が紙一重で共存している。

自ら手を上げ、バンドクラップを巻き起こすと、そのまま“不穏”という言葉がぴったりの“Cacao and Cocaine”へ。歪んだギターが鋭くうなり、ふてぶてしく発されるスポークン・ワードがビートの上を踊る。

「コンニチハ」と親密な空気を作るソフィア。棒付きキャンディーをくわえ、マイクスタンドにもたれかかりながら、“Muse”では澄み切ったハイトーンボイスを響かせる。揺らめくイエローのスポットライトがステージを柔らかく包み込み、それまでの緊張感との鮮やかなコントラストを描き出す。

“Dog’s Dinner”ではベースを抱え、腹の底まで響くような重低音を刻む。床を這うように動き、虚空を見つめながら歌う姿はどこか憑依的に映る。背後では不穏なビートとうねるシンセサイザーが楽曲の緊張感をさらに高め、最後は深いため息をひとつ残して静かに終息。その余韻を引き継ぐように、スプーキーなピアノで始まる“Crowd Caffeine”が幕を開け、ホワイトステージ一帯はなおも妖しく揺れ続けるのだ。

“The Chicken is Naked and Afraid”ではマイクスタンドを肩に担ぎ、不敵な面構えで歌いはじめる。やがてノイズが渦巻く中、バンジョーを手に取り、寡黙に爪弾く。ダークでインダストリアルな世界へ、異質なカントリー&ウエスタンの風を吹き込むそのセンスには息をのむしかない。

さらに“Above the Neck”では、ズボンを下ろし、日本の日の丸が描かれたパンツをあらわにする。挑発なのか、ユーモアなのか、それともメッセージなのか。その真意を明かさぬまま、ソフィアは何事もなかったかのようにパフォーマンスを続ける。常識や固定観念を軽々と飛び越えていく姿勢こそが、彼女という表現者としての本質なのだろう。

「聞いていい? 日本にはじめて来たから、みんながどう答えてくれるか分からないけど…クラウドサーフをしてもいいかな?」と問いかけると、フロアからは大歓声が返ってくる。自らカウントを刻み、“Orchestrated, Wet, Verboten”がスタート。ソフィアは迷うことなくステージを降り、オーディエンスの頭上へ身を預けた。初来日にして初演となるフジロックで、堂々たるクラウドサーフ。観客に支えられながら波に乗るようにフロアを進み、フォトピットへ戻ると、そのままステージ中央から左右へと歩き回る。ひとりひとりと視線を交わし、手を握り、互いの熱を確かめ合っていく。ステージとフロアを隔てる境界線は、もうどこにもなかった。

「日本はチルで静かだと聞いてたけど…そいつら何を言ってんの?って感じね」そう言い放った。ミニマルなピアノと吐息のようなボーカルが漂う“The Doll People”で、再び観客を妖しく深いソフィアの世界へ引きずり込んでいく。

倒れ込むように“Sex & Concept”へ。「フジロック!」と叫ぶや否や、ステージの台から高々とジャンプ。フロアをのたうち回り、仰向けに寝転がったままギターをかき鳴らす。さらにマイクスタンドを頭上高く掲げる姿は、まるで勝利の旗印を掲げる戦士のよう。フィナーレへ向かうにつれ、身体ごと音楽に身を委ね、ソフィアのパフォーマンスはさらに大胆さを増していく。圧倒的な表現に呼応するように、ホワイトステージの熱気は最高潮へと達していく。

ラストを飾ったのは“I Looked the Future in the Eyes, It’s Mine”。フロア前方へ向かって投げキッスを送ると、ソフィアは穏やかな笑顔で語りかけた。「初めて日本に来ることができた。最初のショーを観に来てくれてありがとう。みんなの顔、ちゃんと見えてるよ。後ろのほうまで。これはここにいる、ひとりひとりに対しての、パーソナルで、激しい(intense)感謝だからね。」その言葉を残すと、再びステージを降りてフロアへ。オーディエンスと握手を交わしていく。ステージへ戻ると、くるくると舞うように踊り、膝をついてヴァイオリンを激しくかき鳴らす。ソフィアの呼びかけに応え、観客も一斉に膝を使って跳ね続ける。演者と観客が完全に一体となり終幕へ。バックスクリーンいっぱいに「SOFIA ISELLA」の文字が力強く映し出される。大歓声に包まれながらソフィアは静かにステージを後にした。

21歳とは到底思えない表現力と大胆さ、観客とダイレクトに触れ合い、巻き込んでいく圧倒的な求心力。音楽と演劇、文学、パフォーマンスアートを自在に横断する約1時間は、まさに唯一無二の体験だった。しばらく、その場から動くことができなかった。ただ「とんでもないものを目撃してしまった」という実感だけが、雨が降り続くホワイトステージにいつまでも残り続けていた。

[写真:全10枚]

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7/26 SUNWHITE STAGEXSUMI