LIVE REPORT - FIELD OF HEAVEN 7/25 SAT
柴田聡子 (BAND SET)
雨粒とも戯れるように
史上最速で完全ソールドアウトとなった今年の土曜日は、土砂降りの雨からキックオフ。初参加の人も多いであろうこの日にこれだけ降るのは、なんとも強烈なフジロックの洗礼だ。通りがかったグリーン・ステージでは、MCのジョージ・ウィリアムズが「これがフジロックです!」と叫び、それに歓声で応えるオーディエンス。そう、これがフジロックです。
定刻5分前にフィールド・オブ・ヘヴンへ着くと、雨にもかかわらずすでにたくさんの人が集まっていた。この人と2日目を始めたいという気持ちは、きっとみんな同じだったのだろう。昨年の朝霧JAMでも素晴らしいライブを披露した柴田聡子が、ついにフジロック初出演。挨拶代わりの”ワンコロメーター (Dub ver)”を投げかけると、アンニュイでありながらじわじわと熱を帯びていくダブのフィールが、雨のヘヴンをゆっくりとほぐしていく。PAにはDub Master X。これは楽しくなりそうだ。
ハンドマイクでラフに歌う”Reebok”、小気味よいギターが柔らかな歌声を引き立てる”結婚しました”。ファンタジックでありながら、どこかフリースタイルのような自由さも感じさせる独特のニュアンスを、6人編成の潤沢なバンドセットがさらに豊かに膨らませていく。ギターはいつもの岡田拓郎(明日ORANGE ECHOに出演予定)ではなく、Tocago(今日ROOKIE A GO-GOに出演予定)でも活動する森飛鳥。事情はわからないが、いつもとは少し違うギターの質感が、この日のバンドに新鮮な彩りを添えていた。
「みんな元気? 私も元気!」
ぶっきらぼうで飾らないこの一言も、柴田聡子らしい。ざっくりとしたストロークでトロピカルな空気を運ぶ”旅行”や、雨粒とも戯れるような情感をまとった”後悔”では、散文のような言葉の中にふと詩情が立ち上がる。まきやまはる菜のベースを起点にシームレスに始まった”白い椅子”ではソウルやジャズを思わせる深みを漂わせ、続く”Your Favorite Things”ではワルツのリズムからシンフォニックなアウトロへと大きく景色を変えていく。降ったり止んだりを繰り返す空模様のように、柴田聡子のライブも次々と表情を変えていった。
ツアータオルを振り回しながら跳ねるように歌う”Pool”や”Side Step”を経て、“Synergy”ではちょっとだけ見えた晴れ間がシナジーを生んでセッション感を増したいいグルーヴが広がってきた。そしてエレキの弾き語りにそっとバンドが寄り添う”雑感”では、日々のやるせなさごとこの非日常へ預けるように、静かに聴き入るオーディエンスの姿があった。あまり多くは語らない柴田だが、いつもの「せんきゅう!」と口にするまでのほんのわずかな間から、この景色を噛み締めているような感慨が少しだけ伝わってきた。最後は”Movie Light”をフィールド全体へ向けて穏やかに歌い上げ、晴れやかな余韻を残していく。
大雨に降られた2日目の朝だったが、不思議と気持ちは晴れていた。前を向いてまた歩き出そうと思わせてくれる、フィールド・オブ・ヘヴンらしい素晴らしい幕開けだった。
