FUJIROCK EXPRESS '26

LIVE REPORT - FIELD OF HEAVEN 7/26 SUN

ANGINE DE POITRINE

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Posted on 2026.7.30 01:20

フジロック史に刻まれた超現象!ヘブンを呑み込んだ覆面デュオの怪演

カナダ発の二人組インストゥルメンタル・ロックバンド、「時空の旅人」アンジーヌ・ド・ポワトリーヌ(以下アンジーヌ)がフィールド・オブ・ヘブンで魅せたパフォーマンスは、単なる名演を超越した言語化できない「超現象」で、とにかく「すげぇものを見た!」と思わせる体験だった。

そんな「超現象」は、ライブのかなり前から始まっていた。アンジーヌの前にヘブンで出演していたザ・ブレイクスの途中から、チラホラと見られ始めたアンジーヌ目当てと思われるファンたち。実際、ライブが終わっても客の動きはほとんどなく、むしろ人は増え続け、あっという間に入場規制がかかった。自分の記憶を遡っても、ヘブンのフィールドがこれほどまでに客で埋め尽くされた光景を見たのは今回が初めてだ。ステージに目をやると、彼らのアー写にも写っている白と黒のポルカドットがあしらわれた壁がそびえ立っていた。その前にクンとクレックの二人が陣取る光景を想像するだけで、感覚的ではあるが分かったような気がした。これがまさに「アンジーヌ・ド・ポワトリーヌの世界」なんじゃないかと。

期待感がむくむくと膨れ上がる中、ポルカドットの全身タイツに身を包み、異様に大きな仮面を被ったクン・ド・ポワトリーヌ(Gt/B、黒タイツ×白仮面)と、クレック・ド・ポワトリーヌ(Dr、白タイツ×黒仮面)が、ヘブンを埋め尽くしたファンたちへ手を振りながらステージに現れた。そのあまりにもシュールな出で立ちで闊歩する姿は奇妙奇天烈そのもの。しかしながら、客席からは「かわいい〜!」といった声も聞こえ、「え、かわいいのか……?」と思わず心の中でツッコミを入れてしまうほど、それは少し意外な反応だった。そんな眼前に広がる光景に、未だかつて味わったことのない不可思議な高揚感が胸に込み上げてくる。二人が所定のポジションに着き、“色々”とセッティングを始めると、ヘブンのMCを務めるジョージ・ウィリアムズがステージに登場。「伝説のライブになる可能性がありますよね!フジロック!楽しんで!」と叫び、オーディエンスの期待感をさらに煽って会場を盛り上げた。

ジョージがステージを去ると、まるで呪文のような“アンジーヌ語”で会話を始めた二人。何を言っているのかさっぱりわからないが、両手で三角形を象る不敵なポーズを決めると「アンジィィィーヌ・ド・ポワトリィィィィィィィィィン!」と高らかに叫び、ライブは始まった。

遂に幕を開けたアンジーヌのライブは、オープニングを飾った“Angor”のイントロ一音が鳴った瞬間、フロアの空気は一変。いきなり彼らの真骨頂が炸裂する。通常の倍の量のフレットが打たれたマイクロトナル(微細音)仕様の変態的ダブルネック・ギター&ベースを抱えたクンが、リアルタイムでルーパーを駆使し、ベースラインとギターリフのレイヤーを重厚に構築。そこにクレックによるポリリズミックでダイナミックなドラミングが叩き込まれると、まるで異次元の呪文のような異彩を放つグルーヴが立ち現れ、オーディエンスの身体をじわじわと揺らし始める。二人のその不可思議な容姿とは裏腹に、一曲目から超絶テクニックを魅せるクレックとクンの二人。

“YorZarad”へ間髪入れずに雪崩れ込むと、前衛的サウンドはさらに加速していく。クンはギター側のネックとベース側のネックを自在に行き来しながら、ペダルを踏み分けてリアルタイムに何重にも音を重ねて操っていく。それは、まるで何人ものギタリストとベーシストが同時にサイケデリックなリフを奏でているかのような異次元の音像だ。幾何学的なアンサンブルでありつつも、クレックの叩き出す変拍子ビートが肉体的なダンス空間を力技で生み出した。長尺の曲も後半に突入すると、その超絶変態性にダイナミズムが加わっていった。圧倒的な音量で鳴らされる二人の凄まじい演奏に、僕らは条件反射的に全身で細かなリズムを刻まずにはいられない。

そんな演奏があまりに凄すぎて、気がつくと夢中に見入らされてしまう彼らのパフォーマンス。しかし、曲が終わると、クンとクレック二人の「奇行」は、ヘブンの空気は一気に緩ませた。薄明かりの照明に照らされる中、クレックが得体の知れない”謎ドリンク”を長いストロー(というよりチューブ?)で飲み、二人は再び三角ポーズを作り会話を交わす。その状況から話している内容を想像してみるも、やっぱり何を言ってるかはさっぱりわからない。

そんな光景に軽く頭を悩ませていると、気づいたら“Tamebsz”が始まっていた。観る側スイッチは再び彼らの演奏を聴き漏らすまじと集中モードに切り替わった。この曲の変拍子を多用した複雑なアンサンブルと、どこかキャッチーなノリを失わない彼らのユニークなポップセンスが観客を魅了。続く“MataZyklek”では一転してパンキッシュで攻撃的なアプローチを見せ、重厚な低音と切り裂くような高音リフの応酬が凄まじく鳴り響いた。間奏でクレックのドラムビートが鳴り響く中、クンがおもむろに頭を叩くと額の三角マークが発光。そこから始まった超絶アウトロは圧巻そのものだった。ギターリフとベースラインの抜き差しが計算されたループ・ワーク、そして徐々に熱量を帯びていくサイケデリックなサウンドとビートで曲が締めくくられると、会場に賞賛の大歓声が上がった。

これだけ凄まじい演奏を魅せるアンジーヌだが、それ以外の一挙手一投足にも、つい目を持っていかれてしまう。演奏中、唐突に「ポワトリーーーヌ!」と絶叫しながら三角形を作るムーブ。凝視しなければ判別不可能なほどに細やかな、それでいて不可解なクンのステップの数々。さらには曲のイントロ中に二人してアクロバティックな姿勢で謎ドリンクを摂取し、挙句の果てには反復するループサウンドを背に奇怪な咆哮を上げながらスクワットに興じる始末だ。もはやこれは、単なるコミカルな演出などではない。気づけば僕らは、底知れぬ「アンジーヌ・ワールド」にズブズブに引き込まれていたのである。

あまりにも未体験すぎる領域へと肉体と精神を持っていかれる感覚の中、ライブは後半戦に突入する。クレックのジャズをベースとした変則的なドラミングから始まったのが“Ababahôtel”。どこかオリエンタルでエキゾチックな旋律が浮遊し、ブルージーさを感じさせるグルーヴィな展開が心地よいトランス空間を生み出す。曲の終盤では、「フゥー!」「ウォー!」という掛け声からのコール・アンド・レスポンスで締めくくられた。

曲が終わると、おもむろにクンがオーディエンスとの“交信”が始まった。両手を広げ、頭に両手をかざし、空に向けて指をなぞり、「ヨォ」と口にする。それに応えて、客も「ヨォ!」と返す。そして、頭に両手をかざし、「フォ」と口にすると、額の三角マークが発光した。交信成功だ(笑)。ちなみに、この間ローディがドラムの調整をしていたのだが、そのローディにクレックが三角マークを作り「ヨォ」と言って、感謝の気持ちを伝えていた。ローディとの交信も成功だ(笑)。

そんな心温まる(?)空気感を貫くように始まったのが“Sarniezz”だ。序盤はゆったりとしたテンポで始まったのだが、徐々にピッチを上げていくと、手数の多いドラミングと複雑なループがギッチギチに詰め込まれた高密度マスロックへと変容していった。そのまま矢継ぎ早に、彼らの名を世に知らしめた代表曲“Fabienk”が投下。イントロの印象的なギターフレーズが流れると大歓声が上がり、マイクロトナル・ギターが放つ不穏ながらも強烈に癖になるリフから、後半に入ると二人の奇声が上がるとともに、一気に狂気的なダンスビートへと加速していく展開は圧巻そのものだった。

“Fabienk”が終わり、ヘブンの空に音律の余韻が充満する中、クレックが三角マークを作り「アリガット」(日本語!)と感謝の言葉を口にすると、ラストを締めくくるのは、これもまた彼らの代表曲である“Sherpa”だった。クンが印象的なイントロのギターフレーズを弾くと、「待ってました!」と言わんばかりに歓声が湧き上がる。ループするギターリフが鳴り響く中、クレックとクンの二人は互いに向き合い、“何か”を話しながら(やっぱり何言ってるかわからない)三角ポーズを送り合い、そして超満員のヘブンの客の方を向くと、再び三角ポーズを送った。そして、クンが「フォー!」と咆哮すると、曲が本格スタート!アヴァンギャルドな実験性と肉体的な躍動感が劇的に融合したダンサブルなマスロック/サイケデリックなこのナンバーで、アンジーヌの二人は最後の最後で自らの超絶テクニックを最高潮に発揮。最高にパワフルなグルーヴを生み出し、ヘブンにカオティックな高揚感とともに圧倒的で奇妙なカタルシスを生みだした。

ポルカドットの全身タイツに大きな仮面姿という、「出オチ」感すらも踏み台にして、緻密な構造美と肉体的な衝動を高次元で融合させてみせたアンジーヌ・ド・ポワトリーヌ。アヴァンギャルドでありながら、理屈抜きに踊れてしまう彼らのバンドアンサンブルは、僕らを異空間へと導いた、まさに快演であり、奇演だった。

<セットリスト>
Angor
YorZarad
Tamebsz
MataZyklek
Ababahôtel
Sarniezz
Fabienk
Sherpa

[写真:全10枚]

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7/26 SUNFIELD OF HEAVEN