LIVE REPORT - GREEN STAGE 7/24 FRI
LOYLE CARNER
条件付きじゃない愛を信じさせてくれた最高のリリシスト
LOYLE CARNER、苗場という地、オーディエンス、バンド。あらゆる関係性で愛のキャパシティが尻上がりに増していく素晴らしいライブだった。性差はあまり関係ないだろうけど、もしあなたが彼と同世代の30代の父親だったらなおのこと。どんな男になりたいか?という自分の物差しと、理想だけでは生きづらい現実の矛盾を全部抱えたラップとパフォームが美しかった。
ADHDとディスレクシア(読字障害)を持つことを公表していて、ADHDを持つティーンエイジャー向けの料理教室「Chilli Con Carner」を開くなど社会活動家の側面も持つ彼。その表現は誠実さもフランクさも感じるものだ。そして最近のインスタを見ると渋谷のスクランブル交差点、ラーメン屋、バッティングセンターと東京を楽しんでいる姿に、他の多くのインバウンドと同じ生活者目線を感じる。マーキュリープライズノミニー、UKラップの代表格、ストリーミングで10億再生を超える人気アーティスト、そんな事実も生活者目線もどっちもLOYLE CARNERだ。
フジロックのグリーンステージで見る彼はどう映るんだろう?と思ったらなんのギャップもなかった。まずバンドメンバーが登場する。新世代ジャズとUKヒップホップの融合は生バンドの演奏でさらにLOYLEの言葉に寄り添っていることが理解できる。近作『hopefully!』からアコースティックなグルーヴが緩やかな導入を見せる“ALL I NEED”でライブはスタート。マイクスタンドに手拭いが括り付けられていて、終盤それがtoeのグッズでLOYLEのTシャツも共にtoeの山嵜からのプレゼントらしいことがわかった。そ
次々に披露されるナンバーは比較的ショートチューンばかりだが、オリジナル以上にジャズ的かつ生音ヒップホップのアンサンブルで、日本のバンドでも例えばOvallとか、もっと歌モノのバンドでも親しみのある感触。ラッパーのライブというより現在のバンドシーンのシンクロニシティを感じる。メランコリックなサックスのSEが流れると大きな歓声が上がり“AIN’T NOTHING CHANGE”の端正なラップが繰り出され、近くにいた白人男性はサビを一緒にラップしている。パーソナルな内容こそが共感されるということなのかもしれない。曲が重ねられるごとにつくづくいいバンドだなと思う。親密かつ緊張感のあるスタジオセッションを見せてもらっている気分だ。
ショートチューンばかりじゃない。ピアノソロをフィーチャーした“NOBODY KNOWS”ではLOYLEがキーボードの音色に目を閉じて浸ったり、森を見て感慨に耽る表情も見せる。スキルフルというより流れとループ、清冽な和声が特徴的なピアノのセクションは坂本龍一に通じるニュアンスもあり、高いエネルギーを保持しつつ大げささや冗長さとは無縁だ。
次の曲はフェイバリットソングだというと、アコギを主体に柔らかいアンサンブルの“LYIN
”で軽快なフロウを聴かせ流。オーディエンスの手が自然に揺れると、次の“STILL”の途中でフロアに降り柵に登って手を振り、最前列のファンのスマホに収まる。どんな思いつきの行動も煽りじゃなく心のままなんだろう。この頃にはタンスタやハイスタ待ちの人たちの体も揺らしていた。
ラストは“A LASTING PLACE”。永住の地を意味するタイトルは愛憎半ばする父、自分も父親になって妻が自分の中にその父の姿を見るという、家族の不可避性も描かれている。男らしさとか父親らしさの固定概念から解放されたいと願いながら、喜びもプレッシャーも一面的じゃないということなんだろう。リリックの意味合いはもちろん、その切実さをフレージングで支えるバンドメンバーとの関係がなんともいえずいい。絶妙なシンコペーションやブレイクを挟むスキルフルなドラミングすら、曲の切実さと共にある感じというか。メンバー紹介に大きな拍手が贈られるのも、フェスフィーバーと言い切れない。ちなみにこの辣腕ドラマー、ダブステップやドラムンベースの名手、Richard Spavenだとメンバー紹介で判明!
フジロックに特大のダブルピースを掲げたLOYLE CARNER。条件付きじゃない「愛」をまだ信じてもいい気がした。
《Setlist》
ALL I NEED
PLASTIC
AIN’T NOTHING CHANGE
YESTERDAY
DAMSELFLY
HORCRUX
DESOLEIL
NOBODY KNOWS
LYIN
STILL
SPEED OF PLIGHT
ABOUT TIME
OTTOLENGHI
A LASITNG PLACE
[写真:全10枚]









