FUJIROCK EXPRESS '26

LIVE REPORT - RED MARQUEE 7/24 FRI

SNAIL MAIL

  • SNAIL MAIL
  • SNAIL MAIL
  • SNAIL MAIL
  • SNAIL MAIL
  • SNAIL MAIL
  • SNAIL MAIL
  • SNAIL MAIL
  • SNAIL MAIL
  • SNAIL MAIL
  • SNAIL MAIL
  • SNAIL MAIL
  • SNAIL MAIL
  • SNAIL MAIL
  • SNAIL MAIL
  • SNAIL MAIL
  • SNAIL MAIL
  • SNAIL MAIL
  • SNAIL MAIL
  • SNAIL MAIL
  • SNAIL MAIL

Posted on 2026.7.24 21:19

静寂は、やがて轟音へ

18時。フジロック初日も夕暮れを迎え、苗場の空気が昼の熱気から夜の高揚へとじんわりと移り変わるころ、RED MARQUEEに姿を現したのは、2022年以来4年ぶりに苗場へ帰ってきたリンジー・ジョーダン率いるSnail Mailだ。

それまで場内を軽快に満たしていたFcukersの“L.U.C.K.Y”がゆっくりとフェードアウトすると、ステージは暗転。続いてDossの“Strawberry”が流れ始め、深い赤の照明とスモークが空間を包み込む。背後のスクリーンには最新作『Ricochet』のジャケットが映し出され、静かに期待感を高めていく。

4人のバンドメンバーとともにリンジーが笑顔で手を挙げながら登場すると、「What’s up, Fuji Rock!?」と一声。会場から大きな歓声が返る。そのまま“Tractor Beam”でライブは幕を開けた。透明感のあるギターフレーズが会場いっぱいに広がり、エレクトリックチェロの音色が楽曲の爽快感をさらに引き立てる。

「はるばるアメリカからやって来たよ!ありがとう、フジローーック!」
メロイックサインを掲げて叫ぶリンジーの姿にフロアも一気に温まる。続く“My Maker”ではアコースティックギターに持ち替え、軽やかなストロークで清涼感あふれるサウンドを紡ぐ。後半にはキーボーディストとセカンドギタリストによるコーラスも重なり、一気にスケールアップ。さらにピンクのストラトキャスターを手にした“Dead End”まで、冒頭3曲はいずれも最新作『Ricochet』から。親しみやすいメロディと洗練されたアレンジで、はじめてSnail Mailに触れる観客の心も自然と掴んでいく。

この日のハイライトのひとつが“Heat Wave”だった。リンジーはテレキャスターを手に流れるようなギターソロで会場を魅了する。ドライブ感あふれるベースと、ざっくりと刻まれるサイドギターがどっしりと土台を築き、その上をリンジーの繊細で伸びやかなギターが自由に舞う。静かなアルペジオから始まった楽曲は、少しずつ熱を帯び、やがてフルストロークの轟音へ。静と動を自在に行き来するダイナミクスこそ、Snail Mailの真骨頂だ。続く“Hell”でも、そのコントラストはさらに鮮明になる。静寂から轟音へ、抑制から爆発へ。感情の振れ幅そのものを音で描き出すような演奏に、場内は完全に引き込まれていった。

照明演出もまた、この日のライブを彩る重要な要素だった。“Cruise”では淡いブルーのスポットライトがステージを静かに照らし、アンニュイな空気感を美しく際立たせる。“Headlock”ではピンクとパープルに染まる幻想的な空間の中、跳ねるようなキーボードの音色が鮮やかに響く。一転して“Agony Freak”では、赤とピンクの照明が交互に激しく切り替わり、楽曲の重苦しく複雑な感情を視覚でも表現。“Buttery”では、ゆったりとした前半では柔らかな光を、疾走感あふれる中盤では鮮烈な赤と水色を大胆に使い分け、楽曲の展開と完全にシンクロしたライティングで魅せた。

そして、この日最大の見せ場となったのが“Valentine”だった。幻想的なイントロから始まるこの曲の途中、リンジーのギターにトラブルが発生。しかし彼女は動じることなく、ギターを手放したまま歌い続ける。その姿は、まるで最初から演出として用意されていたかのような美しさすら漂わせていた。やがて復帰したギターが轟音を響かせると、かすれた声で歌い上げる嫉妬と愛情が入り混じる歌詞が胸を強く打つ。細い儚さを持ちつつも、芯の強さとロックシンガーとしての迫力。ここまでダイナミックで力強いライブを見せるバンドだったのか。はじめて浴びるSnail Mailの生演奏は、自分の認識を鮮やかに塗り替えてくれた。

陽がゆっくりと苗場の山並みに沈んでいく時間帯。“Reverie”がその風景にそっと寄り添い、ライブは穏やかな余韻を残しながら終盤へ。そして最後を飾ったのは、もちろん“Pristine”。イントロが鳴った瞬間、ひときわ大きな歓声が上がる。最前列だけでなく、場内のあちこちから自然と歌声が重なり始める。代表曲で締めくくる完璧なフィナーレを迎えた。

リンジーの感情が少しずつ増幅していく過程そのものを体験させるライブだった。そして、リンジー奏でるのギターは単なる伴奏ではなく、彼女自身の”もう一人の語り手”として機能し、恋愛や喪失という私的な感情を、空間全体で共有される感情へと変えていく。繊細で力強い表現力に、ただただ圧倒された60分だった。

[写真:全10枚]

TAGS
7/24 FRIRED MARQUEEXSUMI