LIVE REPORT - RED MARQUEE 7/25 SAT
KELLY LEE OWENS (DJ)
Posted on 2026.7.26 06:48
ストイックなビートが描き出す、深夜の自由なダンスフロア
トモーラのライブを終えたばかりのトム・ローランズが、同じ時間帯に苗場食堂へ急遽出演!そちらもかなり気になりつつ、眠気と疲労をバッチバチの低音で吹き飛ばしたい僕らが向かうのは、やっぱりレッド・マーキー。この深夜の主役はケリー・リー・オーウェンスだ。
白黒のミニマルな映像から始まったフロアは、次第に鮮烈なライティングへと姿を変えていく。この日のDJセットはアッパーな選曲を軸にしながらも、大ネタを連発するような構成ではない。むしろ中くらいのピークを何度も丁寧に積み重ねながら、ストイックにビートを更新し続けていく。その流れの中で飛び出したベースメント・ジャックスの“Where’s Your Head At”は、この日数少ない大技と言っていい一曲。だからこそ、一気にフロアの熱量が跳ね上がる瞬間がひときわ鮮烈に映った。
「KLO」のビジュアルが浮かび上がる中、自身の“Higher (Oscar Farrell Remix)”などの楽曲も主役として大きく扱うのではなく、あくまでフロアの流れを途切れさせないひとつのピースとして機能させていく。フェイスレスの“We Come 1”やMPH & Æ、Skin On Skin, BEAM & Fred again..による“The Floor (Fred Remix)”など幅広い選曲を行き来しながらも、どこか一本芯の通った感触がある。かなりアッパーなのに、不思議と息苦しくならない。それは派手さよりもビートそのものへの誠実さが最後まで揺るがないからなのだろう。
ときにはDJ卓の前まで飛び出し、日本酒の瓶を片手にオーディエンスを思い切り煽る場面もあった。そんな熱気の中で飛び出したレディオヘッド“Everything in Its Right Place”のアッパーなリエディットは、この日のハイライトのひとつ。原曲の浮遊感を残しながら深夜のレッド仕様へ大胆に塗り替えられたサウンドに、フロアはさらに熱を帯びていく。
それでも、この空間は決して前へ前へと押し出されるだけではなかった。僕も途中で何度かオアシスへ出て、もち豚串を頬張ったり、ビールを買い足したり、またふらっとレッドへ戻る。それでもフロアはいつでも同じ熱量で迎え入れてくれる。クルーが何度もオーディエンスへカメラを向けていたのも印象的だったが、ケリー自身もどんなフロアを描きたいかをかなり意識しているのだろう。思い切り踊りたい人も、自分のペースで音を浴びたい人も、それぞれの距離感で自然とそこに居続けられる。ケリーの描くダンスフロアには、そんな懐の深さがあった。
終盤には“Born Slippy (Nuxx)”も飛び出し、思わず「DI MAMEZUKAかよ」と笑ってしまったが、前夜祭の締めくくりでもおなじみのあの一曲だけに、ブレイクで一斉に手が上がる景色にはやっぱりグッとくる。でも、それも大ネタに頼ってきたからではなく、ここまでストイックにビートを積み重ねてきた時間があったからこそ、あの瞬間がこれほど気持ちよく機能していたのだと思う。
ラストはステージへクルーも集まり、ケリーと抱き合いながら喜びを分かち合う姿も印象的だった。深夜のレッド・マーキーは、とことん踊りたい人だけの場所ではない。音に没頭する人も、ふらりと立ち寄る人も、それぞれのテンポで夜を楽しめる場所。その懐の深さこそが、この夜のいちばんの魅力だった。
