LIVE REPORT - FIELD OF HEAVEN 7/25 SAT
KOKOROKO
多文化主義のグルーヴが描く祝祭、「世界のすべて」が息づく街から苗場の森へ
黄昏に染まるフィールド・オブ・ヘブン。真裏のグリーンがFujii Kazeであるにもかかわらず、この場所に詰めかけた人たちは、きっとヘブン特有の心地よいオーガニックな響きを渇望していたに違いない。すでに出来上がっていたヘブンの空気感は期待に満ち満ちていた。定刻を過ぎ、緩やかなSEが流れる中、ロンドンを拠点とする8人組アフロ・ジャズ・コレクティヴ KOKOROKO のメンバーたちが登場。彼らがヘブンで魅せたパフォーマンスは、西アフリカの様々な音楽的要素とロンドン・ジャズシーンにある多文化的な音が躍動するダンスミュージック感をを瑞々しく交錯させ、夕暮れから夜へと移り変わる苗場の森を、歓喜と祝福のコミュニティへと塗り替えてくれた、とても鮮烈な体験だった。
オープニングを飾ったのは、アフロビートの巨匠エボ・テイラーのカバー曲 “Love And Death” だ。UKジャズみのあるダンサブルかつ重厚なポリリズムと熱気溢れるブラスラインが放たれた瞬間、フロアの空気は一変する。バンドリーダーのシーラ・モーリスグレイ(Tp/Vo)が鮮やかなトランペットと歌声で観客を惹きつけると、MCを挟んで投下されたのは 『Could We Be More』 収録の “Something’s Going On”。ソウルフルかつサイケデリックなグルーヴが深緑の森にじわりじわりと溶け込み、観客は心地よく身体を揺らした。続いてフェンダー・ローズ(Tb/Vo)の揺らめく歌声が持つ音色が甘美な “Closer To Me”、そして70〜80年代を代表するアメリカのR&B/ソウル/ファンクグループ ブラッドストーン の名曲を洗練されたアフロ・ソウルへと昇華させた “Natural High” のカバーへ。ヴォーカルの重なりが放つ官能的な多幸感に、観客はうっとりと酔いしれていく。ステージ上のKOKOROKOの面々もまた揃えて穏やかな笑みを浮かべていて、ヘブンのエリア全体が連帯感に包まれていくのを確かに肌で感じた。
演奏が終わると、パーカッションのオノメ・エッジワースが、グループの根底に流れるアイデンティティを静かに語りはじめた。「多様な背景を持つ私たちが育った場所、それがロンドンです。そこには、世界のすべてが息づいてます」と。ロンドン・ジャズシーンを隆盛に導いた背景を一言で言い表したその言葉が、深く胸に突き刺さる。イギリスの移民社会が抱える複雑な情勢は看過できないけれど、それぞれの地が育んだ固有の文化が巨大なコミュニティとして結実し、この国の音楽シーンを鮮やかに彩ってきた事実は、何物にも代えがたい真理なのだと感じさせられた。
そんなMCを経て、ステージはさらに濃密な領域へと深化していく。2ndアルバム『Tuff Times Never Last』からの “Idea 5 (Call My Name)” では、センシュアルなメロディと軽快なハイハットの音が交差し、客席からは自然と歓声が上がる。そして圧巻だったのが “I’ll Stay” だ。ファンカデリックの名曲を、RHファクターがディアンジェロをフィーチャリングゲストに迎えたカバーにあるスモーキーで甘美なネオソウル・アプローチをKOKOROKO流に再解釈。レイドバックした重厚なビートと叙情的なホーン・セクションが交わされる瞬間、ヘブンには濃密でメロウな空気が満ちていった。
間髪入れずに繰り出された “Time and Time” ではJ・ディラを彷彿とさせる揺らぎのあるグルーヴで都市的な叙情を描き出すと、洗練されたアンサンブルが際立つ “Three Piece Suit”、さらにイギリスのバンド アイ・レベル “Give Me” のカバーでは、80sポップ・ソウルの華やかなポップネスを爆発させる。ヨーハン・ケベデ(Syn/Key)のMCを挟み、ライヴはいよいよ終盤に突入する。軽快なブラスリフが弾ける “Da Du Dah” へとなだれ込むと、ラストの “Sweetie” では、西アフリカのディスコ・エッセンスが躍動するアップリフトなビートへと昇華。シーラが歌う《Sweetie, make my heartbeat bounce》のフレーズに合わせ、シーラと客席が一体となって屈伸ダンスを繰り出す光景は、まさに圧巻の一言だった。弾けるような多幸感と温かなグルーヴに貫かれたその空間は、苗場の深緑に抱かれたヘブン全体を、祝福に満ちた巨大なダンスフロアへと塗り替えていった。
ルーツへの深い敬意と現代的なポップネスを高次元で融合させ、多様な感情を祝福に変えてみせたKOKOROKO。夜のフィールド・オブ・ヘブンに広がったあの温かくも情熱的な祝祭空間は、音楽が持つ本来の包容力と繋がりの美しさを、私たちの心に強く焼き付けた。
<セットリスト>
Love And Death (Ebo Taylor Cover)
Something’s Going On
Closer To Me
Natural High (Bloodstone cover)
Idea 5 (Call My Name)
I’ll Stay (RH Factor feat. D’Angelo version’s cover)
Time and Time
Three Piece Suit
Give Me (I Level cover)
Da Du Dah
Sweetie
[写真:全10枚]









