LIVE REPORT - FIELD OF HEAVEN 7/25 SAT
LA LOM
LA LOM、ヘブンをロサンゼルスの街角へ
今朝まで苗場を叩きつけていた豪雨はどこへやら。空はすっかり夏の色を取り戻し、照りつける陽射しが容赦なく汗を誘う。山の天気は本当に気まぐれだ。しかし、その移ろいこそがフジロックらしい。YUUFが極上のサウンドで森そのものを音楽へと変えてみせたあと、フィールド・オブ・ヘブンに現れたのは、ロサンゼルスからやってきた3人組、LA LOM。
ポマードで撫でつけた黒髪に、赤、黒、オレンジといった原色のシャツをまとった姿は、どこか古き良きロックンロールの匂いを漂わせる。柔らかな空気をまとっていたYUUFとは対照的に、こちらは無骨で色気のある佇まいだ。オープナーは”Maravilla”。スペイン語で「素晴らしい」「驚異」「奇跡」を意味するタイトルが、この場の高揚感にぴったりとはまる。何より目を奪われたのはNicholas Baker(ニコラス)のプレイだ。左手ではコンガを軽やかに叩きながら、ドラムセットでは鋭くビートを刻む。その異なるリズムが絡み合い、クンビアやボレロ、ロックンロールまで飲み込んだLA LOMならではのグルーヴを生み出していく。
Jake Faulkner(ジェイク)のベースは終始どっしりと土台を支え、その上をZac Sokolow(ザック)のヴィンテージギターが艶っぽく泳ぐ。リバーブをまとった音色は妖しく、それでいてどこか懐かしい。ヘブンが、一気にラテンの街角へと姿を変えていく。
ジェイクは「ハッ! ハッ!」と威勢よく声を上げ、ハンドクラップを促し、ときにはウェーブまで巻き起こす。観客を置いていかず、常にステージへ引き込んでいく巧みなパフォーマンスは見事だ。一方のザックは寡黙にギターを弾き続け、その対照的な二人の役割がバンドを絶妙なバランスで支えている。
ザックが笑顔で語りかける。「コンニチハ! ここに来れてうれしいぜ! 俺たちがカリフォルニア州ロサンゼルスからやってきたLA LOMだ!(We are LA LOM from Los Angeles, California!)」その言葉を聞いた瞬間、1997年、初開催のフジロックでRage Against the Machineのザック・デ・ラ・ロッチャが放った「We are Rage Against the Machine from Los Angeles, California!」という第一声を思い出したフジロッカーも少なくなかったのではなかろうか。
続いて飛び出したのは、コロンビアの名曲”Los Sabanales”。照りつける太陽の下、流れる汗とともに浴びるこのリズムがなんとも心地よい。まるで南米へ瞬間移動したような感覚だ。それにしてもニコラスのプレイは不思議だ。ドラムとコンガ、それぞれ異なるビートを同時に刻みながら、一切の無理がない。どうやって演奏しているのか、思わず目で追ってしまう。ザックはギターを高々と掲げて弾き、ジェイクは櫛で髪をかき上げる。その仕草ひとつで客席から「かっこいい!」と歓声が飛ぶ。自然体なのに絵になる。
「みんな調子はどうだ?」ザックのギターは、南国の風景をそのまま音にしたようだ。情熱的で艶があり、流麗なメロディのなかへ、さらりと驚くようなフレーズを忍ばせる。その技巧を決してひけらかさないところに、この人の格好良さがある。やがてニコラスは上半身のシャツを脱ぎ捨て、鍛え上げられた身体でさらにビートを叩き込む。ザックは演奏中にペグを回してチューニングを変え、そのまま次の曲へ流れ込む。そのラフささえ様になってしまう。
クンビア、ボレロ、チチャ、ロックンロール……世界中の音楽を行き来しながらも、その芯には間違いなくロックンロールがある。リンク・レイを思わせる荒々しいギターリフやガレージロックの粗削りな衝動が随所で顔をのぞかせ、自然と腰が動き出す。
マーチングバンドを思わせるスネアから始まる楽曲では、ニコラスが軽快にリズムを組み立て、ジェイクはベースを弾きながら指をくるりと回す合図とともに、自身もその場で一回転。観客を笑顔にする遊び心も忘れない。そしてザックはギター一本で、メキシコ、コロンビア、ペルー、アメリカへと世界旅行へ連れ出していく。この三人だからこそ成立する音楽だ。
“El Cascabel”ではザックとジェイクがフラメンコさながらにステージを踏み鳴らし、そのリズムに呼応するように大きなハンドクラップがヘブン中へ広がっていく。ザックは腕まくりをしてギターをかき鳴らし、場の熱気をさらに押し上げる。
ラストはスカを思わせるバックビートが疾走するキラーチューン。クラッシュシンバルが炸裂し、コンガが畳みかけ、本編でもっともスピード感あふれるフィナーレへ突き進む。危険な香りをまとったロックンロールのリフがヘブンに鳴り響く。演奏を終えると、集合写真も記念撮影もない。ただ大きく手を挙げて一礼し、颯爽とステージを去る。最後まで飾らず、粋だった。
[写真:全10枚]









