LIVE REPORT - FIELD OF HEAVEN 7/26 SUN
never young beach
終わらない夏を生き続けるバンドが見せた2026年の豊穣
同じ時刻にグリーンステージでMassive Attackが究極に誠実な世界の憂慮すべきニュースを、警告を発している時、フィールド・オブ・ヘブンではnever young beachが夏に輝く命を全面的に祝福している。どちらも真剣。この多様性がフジロックだし、単に多様なだけじゃなく3日目の各ステージの大トリにはそれぞれの重みがある。
苗場食堂に始まりグリーンステージも経験したネバヤンは彼ら自身が本気のフジロッカーだ。ヘブンの大トリの特権(!?)として90分の長尺を担う彼らがどんなテーマで臨むのか。それは全員オレンジのスーツで登場した瞬間、判明したのも同然だった。そう。完膚なきまでに徹底したネバヤン流のエンターテイメントだ。
巽啓伍(Ba) 鈴木健人(Dr) 岡田拓郎(Gt) 下中洋介(Gt) 谷口雄(Key)の後、おもむろに安部勇磨(Vo/Gt)が登場すると幸せな気分で弾けたいヘブンのオーディエンスは大歓声を送る。フジロック最後の夜をネバヤンで決めたい人多数なんである。オープナーは“らりらりらん”。「楽しんで行ってちょうだい!」、往年の司会者めいた安部の口上もエンタテイメントそのもの。オーセンティシティと新しさを共存させる辣腕ギタリスト2人もネバヤンにおいては驚くほどバンドマンだ。下中のロックなソロを挟む“STORY”、安部を含むトリプルギターのジャムっぽさに沸く“哀しいことばかり”、ところどころドスを効かせる声色と岡田のコミカルなフレージングが口角を上げる“ちょっと待ってよ”は当初のサイケデリックな色合いより、明快に曲の良さが伝わる音像に更新されている。安部がまたも名司会者風に「ギター、下中洋介さんです!」とギターソロを盛り立てるのももはやデフォルト。演奏はシームレスに繋げながら、「今日は最後なんだから喉がちぎれるほど歌って、疲れ果てるまで踊ってって!」と煽る安部の言葉には、ライブは見上げられるものじゃなく、自分たちを使ってみんなが好きなように楽しむもの、そんな意思が窺えるのだ。プロっぽいプロはわざわざ言葉にしないけれど、ショーの極意を詳らかにした上で実際誰でも楽しめるライブをやるのはなかなかラジカルだと思う。イントロ一発で「夏来たな〜と、すでに東京で溶けるような猛暑を体験しているにも関わらずそんな独り言が出てしまう“気持ちいい風が吹いたんです”まで一気に7曲をプレイ。このペースだと30曲いけるんじゃないか?と一瞬思ってしまった。なんせ後のMCで「みんながくたばるまでやる」と言ったんだから。
トーンを変えて、照明もシックに変化したところで祈りのような“蓮は咲く”が届けられる。つくづく、安部勇磨が声の表現力核心を伝えるボーカリストになった感慨が押し寄せる。あなたの柔らかなところを知っているーー振り返る切なさに包容力が加わった“やさしいままで”も声だけで癒される。さらにその旋律と音色がまさに柔らかな心を映すようなピアノと歌のみで始まる“愛の星屑を”が放つ昭和の名曲のような普遍性。加山雄三を思い切りナイーヴにしたような飾らないメロディの良さはネバヤンというバンドのパーソナリティでしか成立しないんじゃないだろうか。
フジロックでこれまで出演してきたステージを振り返りつつ、下中に「明るい時間は出たくない」という安部の本音も暴露される。否定しつつも昼間のステージがトラウマだったのは事実らしい。念願の夜のステージである。そりゃ戸惑いなく全力なわけだ。
中盤以降はイントロごとにありえないぐらいの歓声、嬌声が巻き起こるアンセムが続く。そんな中にも今のバンドだから際立つプレイが続々出現。岡田がウィルコ・ジョンソンばりに弾きまくる“夏のドキドキ”、発明レベルのギターリフが完璧なユニゾンを聴かせる“なんかさ”の何かが起きる予感にせき立てられる体感。もう馴染みすぎているけれど庭に犬を走らせるなんて歌詞を何千人レベルで大合唱するなんて革命だろ?と小雨の中で泣き笑いする“あまり行かない喫茶店で”。好き勝手に手をあげたり踊ったりしているオーディエンスのドリンクのカップはすべからく空っぽだ。なんなんだこの雨の大宴会は。
ちょっとブルースを感じる歌詞が顔を出す“Hey Hey My My”を挟み、再びもう自分の歌なのか?ぐらいファンもそこまでファンじゃない人も歌えてしまう“どうでもいいけど”、“明るい未来”とアンセム級の演奏が続く。これをアンセム級にしてしまったネバヤンという新しい価値を思い出す。ああしろこうしろと言わない、エモいストーリーもない。日本のロック、ポップスになかった価値観と珍しい歌詞が、特に彼らの同世代や少し若いリスナーがアンセムに育てた側面も大きい。それがおおよそ10年を経てエバーグリーンになった、そんな景色を今見ている。“明るい未来”では不動の男、巽まで大移動して暴れていることに感動してしまった。リズム、コード進行がネバヤンには珍しいザ・ロックンロールな“Oh Yeah”まで爆走したところで、安部が大事な発表があると切り出す。期待と緊張の数秒の後、2度目の日本武道館公演を発表した。意表を突く内容だったけれど、この発表に最適な幸せな空間だったと思う。
「フジロックは特別だね。今日のことは一生忘れません」という安部の感謝は、フジロックの意味を彼の言葉を通じて自分の中にも落とし込めた気がする。ラストはこれをバンドとオーディエンスが互いに交歓するのは最高に似合っていた“だよ”。こんなに大好きだよと大声で歌えるメロディ、曲にしてくれてありがとう、という気分だ。
これじゃなだ終われない、まだ持ち時間あるんじゃない?とつい今歌った《だいすきだよ〜》をアンコールがわりにシンガロングするオーディエンス。案の定、時間が巻いたらしく、“SURELY”で永遠がないからこそ美しい時を彩り、“帰ろう”がそれぞれの日常への帰還を示しつつ、“お別れの歌”が再度をフロアに火をつける。終わりたくない気持ちがヘブンからはみ出している。終わりたくないから、大人になった彼らもnever young beachという夏を生き続けているのだろう。
