踊るポップ職人
去年の朝霧ジャムにも出ていたので、ぐっと身近な存在になったトッド・ラングレン、去年はロバート・ジョンソンのトリビュートという企画だったのけれども、今回は自分のソロを思いっきりやってくれる「らしい」。「らしい」というのはフタを開けてみないとわからないのが、トッド御大なのだから。
そして、5000人が定員といわれているフィールド・オブ・へヴンがほぼ満員になって御大が登場する。ステージ下手からドラムス、ベース、ギター、キーボードが並ぶ。ちなみにベースは盟友カシム・サルトンである。まずは、”Real Man”でスタート。腹あたりに貫録が出て巨体化が進んだ御大は、ステージを駆け回り、飛び跳ねたりと元気ぶりをみせつける。声もよく出ている。元気がありすぎて、ちょっとラフかなぁと思うときがあるけど。
さすがに年だからか、椅子を用意させて”Can We Still Be Friends?”。名バラードに反応する人多し。ペットボトルに入った水を少しだけ残して捨てて、「これをマラカスにするんだ」とペットボトルを振りながら”Espresso”。こういう臨機応変な小技ができるから職人といわれるのだ。そしてユートピア名義の曲”Love Is the Answer”。これも名バラードで、トッドは客席に拍手を求める。
”It Wouldn’t Have Made Any Difference”は、まさかのボサノヴァ・ヴァージョン。名バラードが軽快なボサノヴァに改造された。こういう改造も大好きなのが御大である。中盤のハイライトはソウル/R&Bメドレー。”I’m So Proud”~”Ooh Baby Baby”~”La La Means I Love You”と、アルバム『Wizard a True Star』に収められたのと同様の流れでソウル・バラードを連打していく。声もパワフル。さらにマーヴィン・ゲイの”I Want You”をカヴァー。
”I Saw the Light”で客席を沸かせてからは、元気なトッドへ。”Drive”なんかは、もはやハード・ロック・ヴァージョンといってもいいくらいのゴリゴリのロックとして演奏された。さらにハードな”Couldn’t I Just Tell You”フロントの3人がコミカルな振りをして喝采を浴びていた。さあ、そしてあともう一曲。アノ曲で今日は終わりでしょう。パズルの最後のピース。これだけ名曲連発のライヴでやらないってことはないでしょう。さあ、”ハロー……”??? あれ??? 終わり??? えええええーーーーやんないの??? いや、なくても素晴らしいライヴだったけど、でも、やらないことで、モヤモヤ感を胸に抱えてヘヴンを後にするのだった。
写真:北村勇祐(Supported by Nikon)
文:イケダノブユキ