アトミック・カフェトーク【坂本龍一、高橋幸宏、細野晴臣、加藤登紀子、澤井正子、羽仁カンタ】

Gypsy Avalon | 2011/07/31 19:35 UP
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斉藤和義、中村達也によるMANNISH BOYSのライブでただならぬ熱気となったアバロンフィールド。司会として現れたNGOビレッジ村長でもある大久保青志の口から紹介されたトークのメンバーは、耳を疑う顔ぶれだった。加藤登紀子、坂本龍一、高橋幸宏、細野晴臣、原子力資料情報室より澤井正子、そして羽仁カンタ。

アバロンフィールドという、客席とステージがほとんど地続きのような場所に坂本、高橋、細野が登場するというだけでもとんでもない事件だったはずである。それが、この事態。フジロックマジックの計り知れなさに呆然としたのは私だけではなかったようだ。びっしりと人が詰まった客席の空気が、ほとばしる高揚感とピンと張りつめた集中力でただならぬムードに変容していく。

昨日も話したのだけど…と前置きをしたうえで、加藤登紀子が放った言葉は「今日このくらいのエネルギーがあれば日本は変わる」というものであった。そして「日本はおじいが幅をきかせすぎている」と笑った後、20代30代は選挙にあまりいってないかもしれないけど、でも、国を変えるのはその若い世代だ、と話してくれた。その姿からは凛とした美しさと暖かい包容力がひしひしと伝わってくる。「みんなを愛しています」「幸せになってね」「みんなを守りたいです」といった言葉がまっすぐに伝わってきたのだろう、私の隣にいた20代とおぼしき女の子がタオルで目元を拭いていたのが印象的だった。

続いてマイクを受け取った坂本龍一は斉藤和義の”ずっとウソだった”に触れながら、ぼくは前から嘘だと思ってたけどね…と東海村JCO臨界事故での事故被曝に触れ、原発推進派は実際に死亡者が出ている点から目を背けていると指摘。イラクでは劣化ウラン弾の影響で白血病の発症率が高いことを紹介しながら、日本の子どもたちの将来を心配していると話していた。「日本が大好きです」と語り、日本を汚す原発政策は必要がないことを語る姿はいつも動画で見ている坂本龍一とあまりにも同じで、ここは本当に苗場なのか…と不思議な感覚にさせられる。「僕は国を憂いています。本当に」と結ぶ坂本の姿に、さまざまな形で情報発信をしてきた人物の言葉の重みが感じられる。

細野晴臣は自身が「手放せない」と持ち歩いているガイガーカウンタを見せてくれた(ここで「でもそれ中国製だよね」とか「アメリカでもっとルックスがいいのを売っているのを後で見つけた」「安い割には結構正確でよかった」といったやりとりが展開し、YMOが目の前で話してる!と実感したファンも少なくないのではないか)。カウンターを持ち歩いていると、東京にいても、屋外より屋内の方が放射線量が高いといった状況が分かることを紹介した上で「そういう日々をもう過ごしている」と細野は話す。そして、ガイガーカウンタを自ら持ち歩くのは行政の数字が低すぎるためであること、数字が低く出る所を計測地点としていて頼りにできないと感じていることを紹介したうえで、こういう行動の背景には本能があるんだろうと語る。社会や国について語る坂本と対照的な視点に、はっとさせられた。さらに、「怖いということはとても大事なので、いっぱい怖がってください」と結んでいた。

地震が起きた時はぎっくり腰で臥せっていたという高橋幸宏は、さすがに起き上がらないとまずいと体を引きずって外に出たら誰もいなかった話題を紹介。ユーモアを交えた話し方に会場の雰囲気がやや弛み、この役割分担が絶妙だなあと改めて感じた。基本的には本当のことを知るより他なく、同時に心の傷を抱えながら日常生活も送っていかなくてはならないと高橋は言う。そして、これから何十年も続いていくことなので、子どものことを考えながらがんばっていこうと結んだ。

原子力資料情報室の澤井正子は、ustream視聴へのお礼を述べた上で、今回の事故が起きたことについて「私たちの運動がなまぬるかったと反省している」と話す。あれだけの活動をしている人物のあまりにも真摯な、衝撃的な言葉に驚かされた。さらに、持参したガイガーカウンタで苗場の土の放射線量測定の実演がおこなわれた。その数字は0.09〜0.08マイクロシーベルト/時。サンプルとして持参した、セシウム137が含まれるという郡山の土は、0.24〜0.3マイクロシーベルト/時で苗場の2、3倍である。目の前で測定をされるだけでも緊張するが、放射線量を伝えるガイガーカウンタの電子音が苗場と郡山ではまるで違っていて、状況の深刻さを突きつけてくる。

羽仁は、人の言いなりにならないでまず事実を知ることと、そして原発を止めることが大切だが、それだけでは終わらないと話す。自然エネルギーに切り変えることが必要で、そのために政治家を動かさなくてはならない点を指摘していた。

原発を一日も早く原発を止めることが必要であるが、止めるだけでは不十分で貯蔵プールの廃棄物もそれ以上に危険である。澤井はその点に触れ、今朝の地震の影響が心配されるように、問題は現在進行形で「全然終わっていない」点を強調していた。

(文中敬称略)


文:永田夏来
写真:花房浩一
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