GREEN STAGE, | 2012/07/29 03:15 UP

THE TROJANS

「特別な夜の特別なザ・トロージャンズ」

ロンドンで最長の歴史を誇るクラブ、ギャズズ・ロッキン・ブルースからザ・トロージャンズが生まれたのは今から四半世紀ほど前の80年代半ばだった。デジタルデータで音楽を聴くなんぞ想像さえできなかったこの頃、普及し始めたCDに対抗するように、クラック・ノイズも平気に古典的な音楽のシングルやLPをスピンさせていたのがDJ、ギャズ・メイオール。当時はまるで忘れ去られていたかのような20年代から60年代のブルース、R&B、ジャンプやスカに再び命を吹き込み、大量生産された消耗品のような音楽に対する密かな抵抗が生まれていたのだ。

その彼が86年にDJとして初来日。彼が敬愛するスカの最高峰、ザ・スキャタライツが録音していた名曲「リンゴ」が、実は、美空ひばりのカバーだったことを発見するにいたる。大いなる発見をした彼は帰国後、ザ・トロージャンズを結成して、この「リンゴ」を日本語で歌うシングルを制作。翌87年、彼のレーベルからアルバムを発表していたスカ・バンド、ポテト5とスカのゴッドファーザー、ローレル・エイトキンが来日し、同行した彼がDJとして初披露したのがそのヴァージョンだった。

そんな歴史を知っているものにとって、今日のザ・トロージャンズは特別だった。実を言えば、あの「リンゴ」を録音したときのドラマー、そして、バンド結成時のメンバーがラッキー・ピート。現在、カナダのトロントをベースに活動するキングストン・ヒルビリーズの中核で、いうまでもなく、彼らが今年もフジロックに出演している。というので、この日、彼が飛び入りでドラムを叩き、この曲が演奏されているのだ。

ギャズのピアニカでイントロが始まるや興奮のるつぼと化したのがオーディエンス。それまでさえも大騒ぎしていた彼らが、あり得ないほどの興奮を見せながら踊り狂い、それに追い打ちをかけるように、ラッキー・ピートがタイトなドラムスではち切れんばかりのエネルギーを放つ。超満杯となった会場で、そのライヴを見つめているなかには当時からの仲間がいっぱいいた。フジロックではゴンちゃんの作者でアーティストとして知られるようになったゴードンが顔を見せていたし、ギャズの弟のジェイソンもいる。ギャズを経由して、オーセンティック・スカのバンドとして世界に名前が知られることになったスカフレイムスの大川氏も姿を見せていた。

「もう25年だよ」と、ゴードンが昔を懐かしむように語るのだが、同時にこうも続けているのが面白い。
「なんにも変わらないよね、同じことを続けてるんだから、俺たち」

でも、当時と違うのは、ロンドンの裏通りにある地下室のクラブで再発見された古典的な音楽が世界中に広まったこと。この日も午前3時過ぎに始まるというのに会場はぱんぱんにふくれあがった人の波で溢れんばかりになっている。当然ながら、入場規制された小屋で目に入ってくる人たちの顔も千差万別。年齢層も国籍もばらばらの彼らが満面に笑みを浮かべながら、幸せの絶頂を迎えているように思えたのだが、どんなものだろう?


写真:北村勇祐 文:花房 浩一
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