GREEN STAGE, | 2012/07/29 13:30 UP

百々和宏

軽やかにワイルドサイドを行け

たとえばこの年齢になって同窓会に出席したりすると、ほんと人生いろいろだなァーと思うわけです。結婚はもちろん、離婚話に病気自慢、リストラに子育て。あいつ最近見ないけどどうしたの、どうやら宗教にハマって行方不明だって…などなど。それはそれで、そんな生活を肴に、お互い楽しくお酒を呑む。そんな時つくづく思うのです。「あぁ、まこと人生で鳴らす音楽こそはブルースだよな…」と。

フジロック初日の苗場食堂にバンド編成の「百々和宏とテープエコーズ」として出演してくれた百々和宏。いつもならモーサム・トーンベンダー(MO’SOME TONEBENDER)のボーカリスト&ギタリストとしてステージに登場してくれる彼だけど、今年はソロとして、しかも三日目のジプシー・アヴァロンには単独で登場してくれることになっていた。

「じゃあ本番よろしくお願いします。暑いね。ここはあまり風通らんでしょう。カンカン照りはイヤやね。でも帰らんでね。」リハーサルでジョニー・サンダースのカバー”Sad Vacation”を軽く演奏すると、百々がそうお客さんに声をかける。初日のバンド編成と違って、今日は一人での弾き語りである。とはいうものの、テープエコーズの二人(ベースの有江嘉典、ギターの見汐麻衣)が仲良く観覧スタンバイを行っているのが見える。

ほどなくして、百々が再び登場する。開口一番、「こんにちは。…頭がちょっと痛い…飲み過ぎた…!(笑)」などと言いつつ、間髪入れずに「テキーラのソーダ割りはすごくおいしいですよ。」発言で泥酔マスターぶりをいかんなく発揮。そして中島みゆきのカバー曲、”悪女”からライヴは始まった。酔っ払いらしきお客さんのチャチャには「(ステージに)上がってきていいよ?」なんてうそぶき、「ブルースをやります」と言いながら”高架下の幽霊”で歌詞の通りの「調子っぱずれな口笛」を披露してお客さんをくすくす笑わせたりしてみせるのだ。そんな時、ステージで鳴らされているのは、間違いなくブルースである。

「わたくしモーサム・トーンベンダーという腐れロックバンドをやっております。」こう語りながら続く曲は懐かしい”東京ヘビー”。そして1980年代後半に活動していたという山本研二(現:山本無我)率いる福岡の伝説的なロックンロールバンド、LIK’A SPIDER(ライカスパイダー)のカバー曲”アナベル・リー(歌詞はエドガー・アラン・ポーの生前最後の詩)”、さらにT.REXのカバー曲の”デボラ”へと続く。

ライヴ後半、「一人でやるのさびしい!マイク持ってきてもらおうかな!テープエコーズのみなさんが、心配してかけ付けてくれました。」と百々が言い出すと、客席からステージへ、テープエコーズが登場。あだちはサックスとして直前までcero(セロ)としてフィールド・オブ・ヘブンに出演後、駆け付けてくれたらしい。鈴を手に持つのは見汐。なんにも持ってない(百々和宏談)有江はコーラスを担当する。ちなみにこのステージの出演ギャラは500円だそうだ(百々和宏談)。

ステージビールを所望すると、待っている間に、ということでルー・リードのカバー曲”ワイルドサイドを歩け”が演奏され始めた。歌詞は途中で日本語へと変化し、内容はバンド活動を志して挫折した男の話や、バンドマンのグルーピー女の話へと転がっていく。で、「ヘイベイブ、ワイルドサイドを歩きな。」と彼は歌うのだ。途中、アンプのボリュームを過激に上げて。ブルースだよなァ。ブルースなんだよな、これこそ!

ラストは”ながいおわかれ”"けだるいdays”でステージは幕を閉じた。「今日もみんないい一日になりますように。」こう言って百々は去っていく。うなりまくるギターの音に、身も蓋もない歌詞ばかりだったけれど、ライブ後の余韻はなぜかとてもすがすがしい。人生も同様に、そんなものなのかもしれないなーと思わせてくれるのだ。そう、彼の弾くブルースのように。


写真:近澤幸司/文:小田葉子
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