水橋春夫グループ
再び動き始めた時計
水橋春夫は、日本の伝説的なバンドであるジャックスのギタリストであり、ファースト・アルバム『ジャックスの世界』の発売前にジャックスを脱退し、その後はレコード会社の社員として横浜銀蝿やwinkを担当した。そして、ジャックス脱退から48年経った今年、ソロアルバム『考える人』を発表し、フジロック出演となった。
このアルバムには、ジャックスの谷野ひとし、音楽雑誌ロッキン・オンでおなじみの松村雄策が参加していして、今回のライヴにも登場。さらに、キーボードに門倉聡、ドラムに赤間慎などを迎えてプレーヤーは総勢5名、ヴォーカリストは先述の松村雄策と女性ヴォーカルのトモコがステージに立った。
グリーンステージでは、フー・ファイターズが演奏していてたくさんの人を集めていた。そのあおりを食らって、他のステージは少々さびしい状態。ロッキン・オンの読者はフーファイを観ているのだろうか。ジプシー・アヴァロンでも周囲のスペースが確保され快適にみられる具合、9割方のお客さんがそれぞれ持参したキャンプ用の椅子に座り観ていた。
アヴァロンに着いたときには、ちょうどリハーサル中で、松村雄策が「裏切りの季節」を歌っていた。約10分くらい押してライヴがスタートする。まずは、水橋がヴォーカルをとり、ジャックスの「マリアンヌ」、以降ソロアルバムの曲などか演奏される。ギターはレコーディングされた作品以上にノイジーでラウドでサイケデリックだった。だけど、水橋は48年ぶりの野外ライヴであり、緊張しているとお客さんに向かって告げる。そして中盤、それまでステージ袖で踊っていた松村を呼び出す。松村は「どうも、ポール・ロジャースです」とボケて、先ほどリハーサルで歌っていた「裏切りの季節」、谷野の作品である「薔薇卍」、そして松村の作品の「黒い鳥」。力のこもった熱唱で松村の狂気がにじみ出る。
水橋は間違えたことを詫びて恐縮し、「メロメロになってしまった」と悔やんでいたけど、演奏には迫力があったし、ジャックス時代の名曲も聴けたし、いうほど失敗したステージとは思わない。観にきていた人たちもそう感じていただろう。最後は、水橋はwinkにもカヴァーさせたジャックス時代の曲である「時計をとめて」で、静かに余韻を残して終わったのだった。