“三浦孝文” の検索結果 – FUJIROCK EXPRESS '18 | フジロック会場から最新レポートをお届け http://fujirockexpress.net/18 FUJI ROCK FESTIVAL(フジロックフェスティバル)を開催地苗場からリアルタイムでライブレポート・会場レポートをお届け! Wed, 17 Jul 2019 08:24:01 +0000 ja hourly 1 https://wordpress.org/?v=4.9.8 雨ニモマケズ、風ニモマケズ、灼熱の太陽ニモマケズ…  http://fujirockexpress.net/18/p_10468 Tue, 07 Aug 2018 03:00:19 +0000 http://fujirockexpress.net/18/?p=10468 「おかえり!」と声をかけると「ただいま!」と戻ってくる。今では恒例となった、前夜祭はレッド・マーキーで行われるオーディエンスの記念撮影。満面に笑みを浮かべたフジロッカーズが堰を切ったように、ステージ前に雪崩れ込んでくると、それを粋な選曲で受け入れてくれるのがDJ Mamezukaだ。そして、その光景をステージから楽しそうに撮影しているのがスタッフの面々。オーディエンス同様にスタッフもこの瞬間を待ちわびていたのがよくわかる。彼らの顔も嬉しそうだ。

 今年は「おかえり!」に続いて、「ニイハオ」、「アンニョンハセヨ」、「オラ」「ハロー」「アロ」…と、たまたま覚えていた中国語や韓国語にスペイン語なんぞも交えて呼びかけてみた。言うまでもないだろう、ここ数年、飛躍的に増えているのが、遠路はるばる海外からやって来る人々。正確な数はわからないが、一説には、台湾からは500人近い人々が来ているんだそうな。しかも、多くが「ラインナップ」に引き寄せられたのではなく、フジロック・フェスティヴァルそのものに魅せられているという。それを証明してくれたのが6月に台湾で開催されたフジロッカーズ・バー、フジロックを愛する人たちが集まるパーティだった。

「フジロックが体現しているものを形にしたかった」

 と、これを企画してくれたのは、過去10年ほど、毎回家族でフジロックにやって来る人物だ。台北の華山1914と呼ばれる公園の一角にDJ用のテントを設置。そこから数々のDJが音楽を流し、時には生演奏も楽しむことができる2日間のイヴェントだった。踊っている人もいれば、芝生の上でのんびりと時を過ごす人もいる。大切なのは人々が繋がり、互いをリスペクトしながら、時間と空間を共有すること。フジロックをキーワードに、そんな動きが海外でも生まれていることがどれほど嬉しかったか。

 また、2001年の出演から17年を経て、苗場に戻ってきたアイルランドのバンド、ホットハウス・フラワーズのメンバーとの会話でも同じようなことを感じることになる。

「クリーンなフェスといっても、ルールやマナーを守らなければいけないってことより、互いが互いをリスペクトして、気遣う姿勢がそんな結果に結びついてんじゃないかな。それがすごいと思うんだ」

 そう話してくれたものだ。山に囲まれ、川が流れるという自然の素晴らしさが、そうさせるのかもしれない。また、長年にわたって環境問題やリサイクルを訴え続けるiPledgeや主催者、fujirockers.orgによるキャンペーンも後押しているんだろう。が、なによりも会場の主役となる観客が動かなければ、それが形になることはない。その結果が「世界で最もクリーン・フェスティヴァル」というイメージに結びついているのだ。

 もちろん、すべてがバラ色なわけはない。昨年のエキスプレスではこのゴミの問題を取り上げなければならなかったし、今年はスリや置き引きといった都会の犯罪が流れ込んでいるという話しも伝わっていた。それでも大きな事故や事件も起きることなく今年のフェスティヴァルが幕を閉じたのは奇跡ではなかっただろうか。

 特に気がかりだったのは台風だった。全国を灼熱の太陽が照りつけ、史上最高気温を記録していた開催前、接近中の台風が下手をすると苗場を直撃するのではないかという憶測も流れていた。1997年の第一回からフジロックに関わっている仲間が想起していたのはあの時の惨状だ。どれほどの人が覚えているかわからないが、あの時、台風が上陸したのは遙か西だったと記憶している。が、それでも本部からステージの上までもが野戦病院のようになっていた。そんな経験を踏まえて、フェイスブックといったSNSを通じて、充分な装備を訴え、開催期間中も台風情報を発信しながら、注意を呼びかけていたのだが、それがどこまで届いただろうか。

 雨がひどくなり始めた土曜夜から、スタッフが更新作業を進める本部テントも強風と雨の影響を受け始めていた。キャンプ場でテントを張っている人たちは大丈夫だろうか? この風雨に耐えられる丈夫なテント、ペグを使っているだろうか… 予定されていた取材が大切なのは言うまでもない。が、あの時、僕らはもっと臨機応変に対応しなければいけなかったのではないだろうか。おそらく、フェスティヴァル慣れしている多くの人々が準備万端で挑んでいたからだろう、21年前の悲劇は繰り返されることはなかった。が、それでもキャンプ場の3割ほどのテントが全半壊し、急遽用意されたプリンス・ホテルの一角に避難したのは約250人。もっと彼らに寄り添うべきではなかったのか… もっともっと必要とされている情報を発信すべきではなかったか? 反省すべきことは、今年もいっぱいあったように思う。

 それでも振り返ると、楽しいことばかりが思い出される。エキスプレスに登場したオーディエンスのひとりが口にしていたように、すでに「ホーム」のようになったのがフジロック。ここに来れば、必ず会うことができる仲間もいれば、何年ぶりかに懐かしい顔をみつけて昔話に花を咲かせることもある。子供を連れて遊びに来ている昔のスタッフや友人もいたし、ずいぶん昔、子供に連れられてここにやって来たおかぁさんとも再会。「夢は3世代でここに来ること」という、彼女の夢が現実になるのは、そう遠くはないだろう。

 ラインナップがどうのこうの… 文句を言うのも、おそらく、楽しみのひとつで、毎年のこと。でも、通りすがりに目にしたアーティストの演奏に聞き惚れたってことも少なくはなかっただろう。有名無名を問わず、ジャンルなんぞ「どこ吹く風」で世界中からミュージシャンからオーディエンスが集まってくるフジロックは、苗場での20回目で成人期に突入したのかもしれないとも思う。

「大きく育った木を根っこから掘り起こして、植え替えても根は張らないよ」

 その昔、フジロックが始まった頃、グラストンバリー・フェスティヴァルの主催者、マイケル・イーヴィス氏にそれを伝えると、そんな言葉をかけられたのを思い出す。おそらく、それは彼からフジロックへのアドバイスだったんだろう。今のフジロックを彼に体験させてみたいものだ。フジロックは苗場にしっかりと根を下ろし、根を張り、確実に成長を続けているのがわかるはずだ。それは年々と整備充実されている施設や、今回の台風への主催者の対応を見れば、一目瞭然だろう。

 1970年に始まったあのフェスティヴァルも、もう少しで50周年。面白いのは… 10数年前だったか、彼の大好きなヴァン・モリソンが上機嫌で演奏した後、「喜んでくれたよ、ステージで笑ってたからね」と話してくれたんだが、実は、同じようなことが今年のフジロックでも起きていた。「ボブ・ディランやドノヴァンが歌っていることへのロマンティックなアプローチ」がグラストを始めるきっかけと、彼が語っていたんだが、そのディランがステージを終えて、にっこりと笑って幸せそうに会場を離れたんだそうな。日頃は、にこりともしないらしいんだが、この日は上機嫌だったと、あの時、ステージにいたスタッフから聞いている。

 さて、雨ニモマケズ、風ニモマケズ、灼熱の太陽ニモマケズ、今年のフジロックを体験されたみなさん、いかがでしたか? 実際には足を運ぶことができず、自宅でモニタを見ていた方、あるいは、初めて実現したYouTubeのストリーミングでライヴを見ていたみなさんもいたかと思います。でも、この現場にあるのは、モニタからはけっして伝わらない「幸せ」。それを体験しにやって来ませんか?一度はまると抜けられませんよ。

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 苗場で20回目という節目もあって、今年は幾度もスタッフが苗場入りして、数多くのレポートを、このエキスプレスの根っこである、fujirockers.orgにアップしてきました。フジロックという「祭り」の魅力は、そこでもみつかると思います。お時間があれば、そちらもぜひチェックしていただければと思います。また、例年、主要部隊が会場入りするのは、開催前の火曜日ですが、今年はその遙か前から、準備期間を含めて取材活動をしてくれたスタッフもいました。ありがとう。あの灼熱と雨と嵐の中、熱中症と向き合いながら、一方で、ずぶ濡れになりながら、会場の内外を走り回ってレポートを続けてくれたのは以下のスタッフとなります。まだまだ未熟でいたらない点があることは否定できませんが、彼らを叱咤激励していただければ幸いです。記述に情報等の間違いがあれば、それを修正し、ご報告いたします。ただ、彼らが残した記録はアーカイヴとして、これからもずっと残していきます。

■日本語版(http://fujirockexpress.net/18/)
写真家:森リョータ、古川喜隆、平川啓子、北村勇祐、安江正実、アリモトシンヤ、粂井健太、岡部智子、MITCH IKEDA、MASAHIRO SAITO、木場ヨシヒト、Yumiya Saiki、高津大地、Yusuke Baba(Beyond the Lenz)、白井絢香、HARA MASAMI、陳彦伶、上村理穂、つちもり

ライター:阿部光平、あたそ、石角友香、イケダノブユキ、梶原綾乃、長谷川円香、三浦孝文、若林修平、卜部里枝、近藤英梨子、平井ナタリア恵美(Paula)、増田ダイスケ、松原充生子、Masaya Morita、Masako Yoshioka

■英語版(http://fujirockexpress.net/18e/)
Laura Cooper, Sean Scanlan, Patrick St. Michel, Park Baker, Jonathan Cooper, Dave Frazier, James Mallion

フジロッカーズ・ラウンジ:飯森美歌、関根教史、小幡朋子、町田涼、藤原大和

ウェブサイト制作&更新:平沼寛生(プログラム開発)、酒田富紗葉(デザイン)、坂上大介、迫勇一

スペシャルサンクス:本梅あさみ、坂本泉、土橋崇志、本人(@biftech)、熊沢泉、藤井大輔、Taio Konishi、三ツ石哲也、丸山亮平

プロデューサー:花房浩一

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BOB DYLAN & HIS BAND http://fujirockexpress.net/18/p_1602 Mon, 30 Jul 2018 11:19:49 +0000 http://fujirockexpress.net/18/?p=1602 7月29日(日)午後6時半過ぎ。2006年のレッチリに匹敵もしくはそれ以上の人でグリーン・ステージ一帯が埋め尽くされている。レッドマーキー、ホワイト・ステージ、フィールド・オブ・ヘブンという他の主要ステージがほぼ空いているという裏が無いということもあるのだろう。フジロックに集った音楽ファンの多くがあの真の伝説の男を目撃しようと詰めかけてきている。満を持して、ボブ・ディランが登場するのだ。

今朝から随所で降り続いた雨も止み、今は晴れ渡って涼しい風が吹いている。この見慣れたグリーンステージにディランが出てくるなんてまだ信じられない。「NEXT UP BOB DYLAN & HIS BAND」の表示がデカデカと表示されると、ここまで歩みを進めて来たフジロックに想いを馳せ、ジーンと来てしまった。

1978年の初来日から40周年となるだとか、ノーベル賞受賞後の日本公演101回目はフジロックだとか、しかもあまりフェスティヴァルに出演しないあのディランが!と各音楽情報機関が色々と書き立てていたが、ディランはきっとどこ吹く風だろう。では、私は、今、この瞬間にディランを存分に体験して感じるだけだ。

開演5分前になると、パタッとバックに流れていた音が止んでしばし会場が静謐に包まれる。みんな真剣にディランの登場を待っているのだ。アコギの優しいフォークミュージックの音色が響き渡り、バンドに続いてディランが登場し、ステージに向かって右側に置かれたピアノの元へ。全身黒のスーツでキメている。パンツに輝いている白い星がイカしている。映画『ワンダー・ボーイズ』の主題歌の‟Things Have Changed”から開演。人々は狂っている。妙な時代なってしまったと警鐘を鳴らすかのような曲だ。中盤のディランが奏でるピアノの調べが胸を打つ。椅子に座らずに、立ったままピアノを叩き真っ直ぐ見据えて歌っている。

お次は、カントリー度がグッと増した‟It Ain’t Me Babe”。今日のお昼にハインズが、初めて演奏したのがこの‟It Ain’t Me, Babe”だったと語り、「やってくれるかしら?」とディランのステージを楽しみにしていたのを思い出した(演奏してくれたね!)。続けて繰り出されたのは、ブルージーでロックンロールなドライブ感がたまらない‟Highway 61 Revisited”。ディランが「ハイウェイ・シックスティーワ~ン!」とキメる度にオーディエンスから渾身の大歓声が飛ぶのだ。

ここで、ディランが座ってゆっくりと鍵盤を押さえていき、涼しい風が吹く今にぴったりな‟Simple Twist of Fate”を披露。ファンの間でも最高傑作との呼び声高い『Blood on the Tracks(血の轍)』からの曲だ。ここ一番の感動的な音がグリーン・ステージ一帯に響き渡る。今、ここで、目の前でディランのステージを観ているという事実に思わず目頭が熱くなる。控えめに鳴るギターやドラムやベースのリズムセクションもディランの歌の旨味を更に引き立てるべく巧みな演奏で応える。最後にディランが立ち上がり、ピアノを叩くように弾いて壮大に締めくくった。

カントリー調のスライドギターが響くと、軽快なリズムが絡んで‟Duquesne Whistle”がはじまった。最も新しいオリジナル・アルバム『Tempest』からのリードトラックだ。ウッドベースがノリの良いこの曲を巧くリードしている。ただひたすら楽しく進んでいった。

これまた美しいピアノの調べからはじまったのは‟When I Paint My Masterpiece”。ザ・バンドのカバーで有名で、私が傑作を描きあげたら良いことが起きると、苦悩するアーティストたちをそっと抱きしめてくれるかのような曲だ。中盤に入る、チャーリー・セクストンのギターソロが曲の持つ壮大さに輪をかける。

真っ暗に暗転し、ロックンロールなフレーズが刻まれてはじまった‟Honest With Me”。演奏も音もシンプルな構造な分、ディランの圧倒的な唯一無二のしわがれた声がダイレクトに耳に入り込んでくる。ギターの小気味好いカッティングからはじまった‟Tryin’ to Get to Heaven”。ディランが歌に入る展開に合わせて真っ暗な状態から徐々に照明が明るくなっていくのも素晴らしい演出だ。何の仕掛けもないミニマルな照明だがしっかりとディランの音楽を盛り立てるのに一役買っているのが見て取れる。

暗闇の中、ディランのピアノの出だしに合わせるのに、他のメンバーがしばらく時間をかける(きっとセットが明確には決まっていなかったのだろう)。それが‟Don’t Think Twice, It’s All Right” だと気づき、大歓声が上がる。カントリー主体だが、中盤のセッションはジャズのニュアンスも香る。この曲が本来持つ楽しいメロディが倍増したようなアレンジだ。ドラムがドカドカと打ち込まれると、小気味好いリズムとともにブルージーなロックンロール‟Thunder On the Mountain”がはじまる。ディランが叩く調子っぱずれなピアノがかえってロックンロール創世の頃の生々しさを感じさせる。やっぱりここでも光るのはディランの声。黒くも白くもない。ただそこにはディランの声があるだけ。リトル・リチャードに憧れたティーンエイジャーの頃のロックンローラーたるディランがはしゃぎまわっているかのようだ。

暗闇の中、フォーク時代の軽やかなハーモニカの音色が響き大歓声が沸く。アデルもカバーした、儚く美しい音色が満載の‟Make You Feel My Love”を披露。この曲は何と言ってもディランのハーモニカだ。とっぷりと落ちた苗場の夜に感動的に響き渡る。深ーいスライドギターが繰り出され、ジョン・リー・フッカーのようなリフが刻まれると‟Early Roman Kings”がはじまった。この腰にくるブルーズマナーに忠実なミドルテンポの進行がたまらない。「アメリカの音楽ってのはこんなにも素晴らしいんだぜ」ってディランがドヤ顔で教えてくれているかのようだ。

“Desolation Row”の最初の「They’re selling postcards of the hanging…」のラインが聞こえただけで大歓声が上がる。ディランによるピアノの荘厳な響きにはゴスペルのニュアンスも感じられる。途中のディランの流麗なピアノソロは涙ちょちょ切れもんの素晴らしさ。やっぱり名曲はどう料理しようが、名曲ということだ。

悲しげなレゲエ調のギターのカッティングが入り、‟Love Sick”がはじまった。一段と憂鬱な面持ちで歌うディラン。愛に妄信したラヴソングで溢れた世界にうんざりしているのだろうか。そして、いきなりはじまったという感じの‟Ballad of a Thin Man”。半音ずつ降りていく伴奏が不気味な残響を与えるこの曲。「事態をわかっちゃいないだろ、あんた?」と「Do you?」付加疑問でじわじわと迫り、問い詰められている感覚に襲われる。寂しくそして力強いハーモニカの音色が響かせ、ラストは手を広げ、「どうだ!」とでも言っているようなキメのポーズで締めた。

バイオリンの音色が優しく鳴り、ディランが奏でるピアノの軽快なメロディであの曲だとすぐに気づく。「How many roads…」と‟Blowin’ in the Wind”を歌いはじめるディラン。色んな時代を表し、生き抜いて来た曲だ。それがたった今、本人の口から語りかけられているのだ。「友よ、答えは風の中に」と。

‟Blowin’ in the Wind”の後、ディランとメンバーがステージ前に並ぶ。仁王立ちしたディランはお辞儀もせずステージを後にした。「あれ?」ってなほどあっけなく終わってしまった。勝手に伝説だとか息巻いていたのは我々だけ。やっぱりどこ吹く風だったね、ディラン。だが、これでフジロックに新たな1ページが刻まれたのは間違いない。例年以上に広い世代が参加したであろう今年のフジロック。多くの老若男女がいて、色んな価値観が集まり交じり合うとそれだけ可能性が拡がっていく。未来は今を生きているみんなの手で、風に舞っている答えを探し求め、もがいて前に進んでいくしかないのだ。ディランの終演後にそんなことをふと感じた。

イラスト:伶彥陳

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SPECIAL GUEST : G&G Miller Orchestra http://fujirockexpress.net/18/p_1608 Sun, 29 Jul 2018 18:08:33 +0000 http://fujirockexpress.net/18/?p=1608 いよいよ、フジロック2018の終わりの時間が近づいてきた。2016年の20回目のフジロック以来、恒例のグリーンステージ締めのアクト、ジー・アンド・ジー・ミラー・オーケストラ登場の時間となった。フロント・ページ・オーケストラやビッグ・ウィリーズ・バーレスクが合体した総勢18名の混成ビッグバンドだ。

ステージが暗転し「A列車で行こう」が流れ、クリス・ペプラーが登場してバンドを紹介すると、まずはグレン・ミラーの‟Pennsylvania 6-5000”で幕を開ける。このタイトルはグレンが長期出演して有名になった、カフェ・ルージュがあるニューヨークのホテル・ペンシルヴェニアの電話番号なのだ。のっけからウィリーがドラムがドカドカと叩き込んでいる。

昨年同様にエルヴィス・プレスリーに扮したアービー・ガスコンが呼び込まれ、怒涛のロカビリー・ショーがはじまる。‟監獄ロック”、‟All Shook Up”、‟Shake, Rattle and Roll”といった誰もが知る曲で、みんなツイストしたり自由にダンスしている。

次のゲストとして登場したのは、T字路sのお二方。伊東妙子が渡辺マリの‟東京ドドンパ娘”を十八番のハスキーボイスで歌い上げる。スカートをはためかせながら可憐に踊りつつ。バックのホーン隊のスイング感がたまらない。続くロックンロールチューンで「ダイナマーイト!」と雄叫びを上げ、投げキッスを飛ばしてステージを後にした。

ストリングスが壮大に鳴り響き、真紅のドレスに身を包んだお登紀さんこと加藤登紀子が登場した。‟愛の賛歌”を壮大に歌い上げる。集まったお客さんの3日間を労わり、特別でかけがえのないフジロックに出演し今ここにいることに感謝を述べ、ピート・シーガーの‟Where Have All the Flowers Gone”の日本語カバー曲‟花はどこへ行った”を披露した。今ここで最高の時間を共有している奇跡に目頭が熱くなる。「素晴らしく生きようね。どんな時も。またフジロックで会いましょう!」とステージを後にした。

レイ・チャールズの名曲‟What’d I Say”がはじまり、ウィリーがファンキーに歌い上げる。「ウー!」、「ホー!」のコール&レスポンスが楽しさに拍車をかける。
この後、アービー・ガスコンが革ジャン、革パン姿で再登場し、「日本人はベストピープルでベストな聴衆だ!」と‟Blue Suede Shoes”に‟Hound Dog”を立て続けに投下。やっぱり締めはご機嫌なロックンロールに限るねぇ!スタンドマイクを斜めに倒し、腕を振り回すアービーに女の子たちがノリノリなのだ。ソフトな低い声で‟Love Me Tender”を感動的歌い上げ、空間に憂愁を創り上げていく。

クリス・ペプラーが再登場し、メンバーを一人一人紹介した後、「まだまだ行きたいですよね?」と煽り、‟All Shook Up”とリトル・リチャードの‟Tutti Frutti”でフロアは再度狂乱の渦状態に。楽し過ぎる!まだ終わってほしくないフジロック!

ラストは‟Moonlight Serenade”を壮大に披露し、グリーンステージ一帯が感動に包まれた。今年も最高の3日間だった。しばしフジロックの余韻に浸っていたい。では皆さん、また来年、苗場の地で!

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BEN HOWARD http://fujirockexpress.net/18/p_1679 Sun, 29 Jul 2018 10:10:06 +0000 http://fujirockexpress.net/18/?p=1679 昼下がりのフィールド・オブ・ヘブン。先ほどまで降りしきっていた豪雨と打って変わって、ここは晴れ渡っている。今は晴れているというべきだろう。山だから天候が変わりやすい。苗場の天気はいつでも気まぐれだ。

これからヘブンに登場するのは、イギリスからやって来たシンガー・ソングライターのベン・ハワードだ。デビュー作からマーキュリー・プライズとアイヴァー・ノヴェロ賞にノミネートされるという才能の持ち主だ。今年リリースされたばかりの新譜『Noonday Dream』を引っ提げ、このフジロックのステージが初来日公演となる。

ステージには2ドラム、キーボード3台、ヴァイオリンにビオラ、ギターやアンプやらがゾロゾロと機材が所狭しと並んでいる。新譜の『Noonday Dream』がアコースティックな音色主体だった前二作からアンビエントでシューゲイザーな音に一変していたので、それを再現しようという意気込みが感じられる。

開演時刻を過ぎたが、機材トラブルが発生したのかだいぶ押している。約10分遅れでバンドメンバーがステージに姿を見せ、グラサンをかけてクールな雰囲気を醸し出しているベンがで登場し、横を向いて座ってマイクに向かってヴォコーダーがきいた柔らかな歌声で祈るように‟Towing the Line”を歌いはじめる。爪弾かれるアコギにギターがアームを駆使し浮遊するようなアンビエントな鳴りで絡み、会場が静謐な感動に包まれた。曲を終えるとベンがフロアに向かってウインクを飛ばし、上がった大歓声に応えた。

ベンを含めたアコギとエレキの総勢5名のギターアンサンブルから始まり、中盤に至るに連れて、2ドラムのぶっといビートが飛び、ギブソンレフリーレスポールが重厚に鳴り響く中盤が超絶かっこいい‟A Boat To an Island On the Wall”。ベンのバンドメンバーは楽器を何役もこなすミュージシャンシップが高い人ばかりだ。‟Nica Libres At Dusk”の間奏部、何とも気持ち良さそうな表情を浮かべる。サウスポー特製のギターを手に寡黙に演奏を続けていたベンだったが「最高の景色だね。マジカル!もっと早く来るべきだったよ」とコメント。笑顔の聴衆と広がる豊かな山々。気持ちが良いに決まっている。‟Someone In the Doorway”も色んな音が飛び交う。バンドが控えめな演奏しているからか、色んな音の粒子が心地よく耳に届くのだ。

ステージにベースと、ベンの二人だけになり、ベンの浮遊し流れるようにリフレインフレーズが印象的な‟Conrad”をじんわりと終えて、バンド全員がステージに戻り、‟Small Thing”で巧みなバンドとともに濃く、壮大なグルーヴを醸成して本セットを締めくくった。どの楽器の音もはっきりと聴き分けられるような、粒度がとても高く音の雨をヘブンに降らせた。「いや~、ジャック・ジョンソンを蹴ってこっちに来てよかった!」、「めちゃめちゃカッコよかった!」といったポジティブな感想があちこちから聞こえてきた。フジロックでの初公演は大成功と言って間違いないだろう。

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HINDS http://fujirockexpress.net/18/p_1646 Sun, 29 Jul 2018 09:45:36 +0000 http://fujirockexpress.net/18/?p=1646 フジロック2018最終日、レッドマーキーに登場するのは、スペインのロック・バンド史上初めて全世界でブレイクしたと言われる4人組ガレージ・ガールズ・バンドのハインズだ。話題のバンドを一目観ようと。ステージ後方までぎっしりだ。

エルヴィス・コステロの名曲‟Pump It Up”が鳴り止むと、ザ・プロディジーの‟Stand Up”が鳴り響き、笑顔でいっぱいの4人が飛び跳ねながら登場した。バックには、ハノイ・ロックスを思い起こさせるような一輪の薔薇が描かれ「HI WE’RE HINDS AND WE CAME HERE TO ROCK(ハイ!私たちはハインズよ。ロックしに来たわ)」と明記されている。

ステージの中央を陣取るボーカル・ギターの一人、カルロッタ・コシアルスが「ハロー!」と可愛らしく叫び!「美しい国のスペインから来たハインズよ!ロックしにきたわ!」とセカンド・アルバムのリードトラック‟The Club” を披露し、‟Chili Town”に続く。可愛らしい曲だが、ベースがズシッときてライヴはワイルドに響く。終わると「カワイイー!」と叫び「来れて嬉しいわ!日本が大好きなの!」と嬉しさ爆発といった感じで喜びを伝える。

お次は‟Sober land”、曲が進むに連れてどんどんワイルドな演奏になってくる。シラフ(Sobar)といいながら、酒が進んで酔っていくような演奏だ。ケヴィン・エアーズの軽快なロックンロール‟Caribbean Moon”の中盤で、前方のカルロッタ、もう一人のボーカル・ギターのアナ・ガルシア・ペローテとベースのアデ・マーティン3名が左右を行き来し、同じアクションを可愛らしくかまして会場が沸かせる。

「10月20日、21日に東京と大阪に戻ってくるわ!」とアナウンスするカルロッタ。まだ100%確かな状態じゃないのに言ってしまうあたりが自由な彼女らしくて微笑ましくなる。嬉しくて言いたくてしょうがなかったんだろうね。そして、ジーザス・アンド・メリーチェンっぽいフレーズが個人的にドツボな‟Easy”。比較的ソフトなこの曲も終始ワイルド。飛ばし過ぎてカルロッタの息があがっているほどだ。

フワフワしたギターが心地よく、リズムセクションが特に前に引っ張っていく‟Bamboo”の後、「オドロウヨ!」とカルロッタ、「オドリタイ!」とアナ。二人が絶妙なやり取りをしたところで‟Tester”になだれ込む。ガレージパンクな悪ノリでカルロッタがこれでもかと髪を振り乱してギターを弾き倒して更に会場の熱を上げていた。

ここでアナが3つのコメントをした。まず、日本を愛してるということ。ライヴ後に行われるサイン会のPRと、そしてグッズの宣伝だ。ここでカルロッタがグッズのTシャツ見せようとスタッフを無理やりステージに連れて来る。登場曲のザ・プロディジーの‟Stand Up”を口ずさみながら。底なしに自由で本当に素晴らしい!

「後2曲で私たちのステージが終わるけど、今日はボブ・ディランが出るのよ!」とアナ。演奏をはじめた時に最初にカバーしたのがディランの‟It Ain’t Me Babe”だったというエピソードを語る。ライヴで聴く‟New For You”はほんとにワイルドで最高だ。ヴァースを全員でがなり立てまくる感じがたまらない。‟New For You”が終わったあと、4人がお辞儀してしばしの静止。アナから順に、カルロッタ、アデ起き上がってフレーズを奏でて、ラストの一打、‟San Diego”をドロップして本セットを締めくくった。終演後に10月の再会を約束して、にこやかにステージを後にした。会場満杯のオーディエンスもとても満たされた表情を浮かべていたが、何より一番楽しんだのは彼女たちのはずだ。彼女たちのアルバムのタイトル『Leave Me Alone』(ほっといてよ)と『I don’t run』(マイペースにいくわ)そのまんまの自由さにあふれたライヴだった。彼女たちのようなスタンスのバンドは今後のトレンドになることだろう。今、彼女たちのライヴに立ち会えたことにただ感謝したい。

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鼓童 http://fujirockexpress.net/18/p_1607 Sun, 29 Jul 2018 05:37:15 +0000 http://fujirockexpress.net/18/?p=1607 早くもフジロック2018の最終日。「おはよう」の文字がスクリーンに表示され、忌野清志郎の‟田舎へ行こう!Going Up The Country”が流れ、会場の笑顔が映し出される。一昨日から毎日聴いたこの曲も今日で最後。1発目からもう寂しく感じてしまったのは私だけではないだろう。

フジロック最終日の1発目を飾るのは、佐渡を拠点に全世界で活動する太鼓芸能集団、鼓童だ。12年ぶりの帰還だが、苗場開催20回目を祝してのどんぴしゃなタイミングでの出演だ。日本伝統舞台芸術「雅楽」 もそうだが、こういう和な音楽を演奏するアーティストが今や世界を代表するフェスティヴァルのひとつとなったフジロックに出演してくれるのが本当に嬉しい。

定刻にメンバーが姿を見せ、「エイヤッ!」との掛け声から長胴太鼓がドカッ!入り、ズラッと並んだあらゆる太鼓から繰り出される原始的なビートに軽快なチャッパの鳴りが絡み、一瞬で場が熱き「祭り」と化す。メンバーが笑顔であらん限り太鼓を叩きつける。これぞ我々日本人のグルーヴだ!無条件に身体が反応してしまう。「血沸き、肉躍る」。6月からスタートした特別公演2018「道」、このキャッチコピーに鼓童のすべてが物語られている。

和太鼓といっても色んな種類があり、音も鳴りも違う。組み合わせによって、そして構え方、バチの振り方、打ち込む場所によって無限のグルーヴを創り出せるのだ。木琴やドラムといった音色をビートにミックスさせて、いわゆる「和」にこだわらない自由な鼓童ならではの音に魅せられる。更に三味線や縦笛、琴といった「和」な音色が入ると「祭り」感にどんどん拍車がかかってくるのだ。

よくお祭りで見かける煽りも最高だ。この韻を踏む感じ、ラップの元祖と呼んでもいんじゃないだろうか。「ワッショイ!、ワッショイ!」のコール&レスポンス。横殴りの雨が降りしきる中でも海外から来たお客さんがノリノリで踊っていて、見ていてこちらも嬉しくなってくる。更にばちをクルクルと空中で回して、キャッチしそのまま打ち込むようなパフォーマンスも飛び出すものだからフロアは大盛り上がりだ。

男声と女声の混声唄には本当に心打たれた。あの瞬間、苗場一帯が静謐な感動に包まれていた。涙を流して聴いている人もいたほどだ。

大太鼓のソロにもしびれた。上半身裸のたくましい男が出て来て、ぶっといバチを掲げてドカドカ打ちつける。鼓膜をダイレクトに叩かれているような過去に体感したことのない衝撃のビートだ。叩く場所や、叩くペース、叩く力量を緩急自在にアレンジし瞬間ごとにビートの色合いが変わる。「お見事!」の一言だ。

ラストは、すべての太鼓が勢揃いし、それこそ花火のような音で盛大に打ち上げ、祝祭ステージの幕引きを行った。フジロック2018最終日、最っ高の幕開けだ!最後の最後まで楽しもう!!

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FISHBONE http://fujirockexpress.net/18/p_1617 Sat, 28 Jul 2018 20:24:00 +0000 http://fujirockexpress.net/18/?p=1617 個人的に今回のフジロックで最も楽しみにしているアクトのひとつがフィッシュボーンだ。彼らはレッチリを超える評価を受けてしかるべき元祖ミクスチャーバンドであり、アメリカ社会における黒人のあり方をシリアスかつストレートに表現してきた、ある意味ミュージシャンの立場で「Black Lives Matter」へのリンクも示したとも言える偉大な存在。それでいて毎晩、世界中で楽しすぎるライヴを繰り広げるのだ。2010年以来、8年ぶりの待ちに待った3度目のフジロック出演。観ないわけにはいかないだろう。

雨が強く降りしきる中、不穏なキーボードのピコピコ音が鳴り響き、今の天気そのまんまなタイトルの‟Sunless Saturday”からスタート。バンドが渾然一体となった怒涛のグルーヴでハードロッキンに迫り来る。フロントマンのアンジェロ・ムーアが所狭しと暴れまわっている。のっけからフルスロットルだ。

そのまま疾走するパンクチューンの‟Subliminal Fascism”になだれ込み、ブレーキが壊れた暴走列車のように加速が止まらない。3曲目に披露された‟Bonin’ in the Boneyard”で本セットのひとつの山場を迎える。ホーンセクションの小気味いい鳴りとともに「イエー!イエー!…」の掛け合いでバンドもフロアもガンガンに盛り上がる。アンジェロがラストでテルミンやヴォコーダーを駆使して音遊びを加えた。こういう粋なスパイスを入れて来るのもフィッシュボーンを唯一無二の存在にしている理由のひとつと言えるだろう。

バックビートが楽しいレゲエ調の‟Housework”をドロップし、‟Everyday Sunshine”ではケタ違いのグルーヴに裏打ちされたファンクネスでこれでもかと盛り上げていく。それにしても、ジョン・ノーウッド・フィッシャーのベース、音圧、音量、スキル、すべてが完璧だ。このベース音はほんとに生で聴いてほしい。

‟Ma & Pa”から‟Lyin’ Ass Bitch”のスカチューンの2連打でフロアが一気に加熱し、大雨の中でスカダンスを繰り出すオーディエンス。何て楽しく、幸せな光景だろう。飛び交う歓声も一段とボリュームアップしている。‟Lyin’ Ass Bitch”のラストでアンジェロがノーウッドのぶっといベースをバックにドープな高速ラップを披露するのだ。何をしても様になる(ずるい!)。

ブンブン鳴るノーウッドのベースが最高な‟Cholly”。コミカルで大好きな曲だ。グルーヴィーなアンサンブルにフロアのみんなでジャンプし、かけがえのない楽しい時間を共有する。スペイシーなラップ部を挟み、オーセンティックなルーツ・ロック調の‟Pray to the Junkiemaker”でフロアをロックした後、ノーウッドの「Going to the Ghetto!」の叫びからはじまったのは、トロンボーンの調子っぱずれな音を主体としたぶっといビートが突き進んでいく‟Ghetto Soundwave”だ!土砂降りな中、どこまでもずぶすぶとディープに突き進むグルーヴがたまらない。

‟Alcoholic”の前にジョン・ビガムのギターがいなたく鳴り響くブルーズタイムのお時間。「I got blues this morning…」お決まりのフレーズが飛び出す。‟Alcoholic”のヴァースを歌い上げ、バックビートになだれ込んでまたもやフロアはスカ天国に一変させ、そしてそのまま‟Skankin’ To The Beat”になだれ込むという違反技を繰り出す。フロアは踊りをまったく止められるない。

アンジェロの「Party!」の叫びからあのフレーズがゆったりと流れてしばらく焦らしてくれる。さぁ、あの爆発の瞬間はもうすぐ!「Are you ready, FUJI!?」とドッカーンとドロップ!前方はモッシュとクラウドサーフだらけの状態と化す。終わってほしくないこの瞬間!フロアをこれでもかとぶち上げまくって、全員満足気にステージを後にした。豪雨の中、踊りすぎて身体が火照るほどの熱い歓喜のステージを繰り広げてくれた。今年のベストアクトはもうフィッシュボーンに決まっちゃったんじゃないの?

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ASH http://fujirockexpress.net/18/p_1619 Sat, 28 Jul 2018 11:04:03 +0000 http://fujirockexpress.net/18/?p=1619 アッシュの3名は筆者と同世代。今回のフジロックに彼らの名前が掲載された瞬間にテンションがアガッたのを今でも覚えている。デビュー以来、ずっと走り続けている彼らの姿を見る度に励まされてきたのだ。特に、『Twilight of The Innocents』が最後のアルバムとなるとの言葉を撤回し、前作『KABLAMMO!』がリリースされた時は飛び上がるほど嬉しかった。「まだまだ俺も頑張れる!」という気持ちにさせてくれるかけがえのないバンドなのだ。同じように感じている同世代も多いのではないだろうか。

2015年のフジロックで、レッドマーキーを新旧織り交ぜたエバーグリーンな名曲ばかりの神セトリでファンを歓喜させた彼ら。今回はリリースされたばかりの新譜『Islands』を引っ提げての絶妙なタイミングでの苗場帰還だ。

ロケット打ち上げ許可の音が鳴り響き、ティム・ウィーラー、マーク・ハミルトンにリック・マックマーレイの仲良し3人組がステージに姿を見せた。バックに「ASH」の文字がドーンと明示されると瞬時に「キターッ!」となる。そして、のっけから‟A Life Less Ordinary”でくると。そう来ましたか。今回も神セトリになる匂いがプンプンする。ティムの愛機、フライングVでの変わらぬイケイケなかき鳴らしっぷりにすでに大満足。締めでフライングVを高々と掲げる様に感涙してしまう。

続けてファン泣かせな‟Goldfinger”を披露した後、「フジロックに戻ってこれて嬉しいよ!」との挨拶を入れ、新譜『Islands』から‟Annabel”を披露した。『Free All Angels』時代の頃を思い出させる蒼い音が散りばめられていて、名曲群の中に違和感なくはまっている。ここで‟Kung Fu”投下でジャッキー・チェンを呼び込み、狂乱の渦を醸成すると、瞬時にホワイトステージ名物の砂埃が巻き上がった。ラストのティムのこれでもかとギターを弾き倒す姿に悶絶死だ。この次に前作『KABLAMMO!』のリードトラック‟Cocoon”を放り込んでくる。キラッキラのザ・パワーポップなフレーズにオーディエンスが腕を突き上げ、シンガロングしている。どうやらこの曲もアッシュクラシックの仲間入りをしたようだ。

新譜からの‟All That I Have Left”で集ったファンで楽しくハンドクラップをした後は満を持して‟Shining Light”を披露。入りのギターの音色だけで目頭が熱くなってしまう。音楽はいつでも傍にいてあなたの背中を押してくれる。「あぁ、音楽ってやっぱりいいなぁ」とあらためて感じさせてくれる曲だ。そして、新譜から2曲を連続ドロップ。‟Confessions in the Pool”と‟Buzzkill”だ。 特に‟Buzzkill”はイイね!音源ではアンダートンズのダミアンとマイケルもバック・ボーカルで参加していて重たくてキラキラしたアッシュ印いっぱいの佳曲だ。今回のセトリには新譜からの曲が結構含まれていて、その自信のほどがうかがえる。

ラスト2曲は当然のごとく名曲の嵐が吹き荒れる。‟Orpheus”でティムがフライングVでザクザクと刻み、ベースのマークがここ一番の動きで魅せる。頭をガンガンに振りまくり、ガバッと股を開いて、ジョニー・ラモーンのような出で立ちでバキバキとベースを掻き鳴らすのだ。ティムがホワイトステージのクルーとオーディエンスに感謝の意を述べ、「フジロックを楽しんで!また戻ってくるよ!」と‟Burn Baby Burn”で思い残すことなくとことんやり切った!マークがお茶目なリックを肩車し、何とも仲よさそうに3人並んでオーディエンスに手を振り、再会を約束してステージを後にした。「最高!」以外の言葉が見つからない。

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STARCRAWLER http://fujirockexpress.net/18/p_1620 Sat, 28 Jul 2018 08:23:26 +0000 http://fujirockexpress.net/18/?p=1620 フジロック2018の2日目。めちゃめちゃに晴れ渡った昼下がりのホワイトステージの3発目に、今年3月の東名阪のソールドアウトツアー以来のステージとなるアメリカはLA出身のスタークローラーが姿を見せる。フロントウーマン、アロウ・デ・ワイルドの鮮烈なパフォーマンスを中心とした話題の若手バンドということもあり、多くの人がステージに詰めかけている。

うだるような暑さの中、ゆったりと会場に流れていたマムフォード&サンズの‟Monster”を中断し、ディズニー映画でお馴染みの‟ヨーホー(カリブの海賊)”が高々と鳴り響いた。アメリカの国旗が巻かれたアンプの上に置かれている奇妙な犬と思われる人形にスポットライトが当たってそちらに目を奪われていると、後ろに「祭」の文字がでかでかと描かれた法被を着たギターのヘンリー・キャッシュが「カンパーイ!」と叫び、ドラムのオースティン・スミスと、ベースのティム・フランコが加わり、一斉に音をかき鳴らす。アロウが満を持して登場し、ハンドクラップをオーディエンスに要求して場に一体感を創り上げていく。ズシッと腹に来るベースとドラムが生々しい‟Castaway”からスタート。髪を振り乱して目玉をひん剥き暴れまわるアロウ。のっけからオジー・オズボーンにインスパイアされたマッドマンっぷりをさらけ出している。

このバンドの魅力は、誰が聴いても観ても納得する「ロック」を体現しているところと言えるだろう。特にギターのヘンリーがロックの歴史に忠実なのだ。‟Different Angles”におけるチャック・ベリー顔負けのロッケンローなギターソロに、AC/DCのアンガス・ヤングのようなノリノリのダックウォークを繰り出したりする。その歴史がたった今目の前で再現され、目撃している事実に問答無用に魅了されてしまうのだ。

そして、このバンドを唯一無二の存在にしているのは、アロウによるフルボリュームのカリスマ性に裏打ちされたシアトリカルなパフォーマンスだ。ホワイトステージ一帯の目をその一挙手一投足に釘付けにしてしまう。何度もステージ上に倒れ込んで痙攣したり、近くを飛んでいるトンボを捕獲しようとしたり、そしてあの十八番の特大ブリッジ。‟Train”では、血糊を口に含み、顔面に塗りたくってラストは満面の気がふれたような笑みで聴衆を見渡すのだ。本日ラストの‟Chicken Woman”ではアロウとヘンリーがステージ下に降りて来て、狂乱の渦を生み出し、ヘンリーの「カンパーイ!」の残響を残してステージを後にした。

カリスマ性あふれる、ロックファンの血を一瞬で沸騰させるクラシカルなロックンロールはいつの時代も必要だ。今日、ここでステージを目の当たりにして衝撃を受けたキッズが次のシーンを切り開いていくのだから。ロックのバトンは今、スタークローラーの手にある!バトンをしっかり手に握りしめ、次のロックスターに渡すべく未来に向かって走り切ってほしい。

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MORE THE MAN http://fujirockexpress.net/18/p_1640 Sat, 28 Jul 2018 08:14:20 +0000 http://fujirockexpress.net/18/?p=1640 フジロック2018、2日目!朝、パラパラと雨が降ったりしていたが、今は晴れ渡っている。ここ、レッドマーキーはこれからここで繰り広げられるであろうスカ天国で踊り倒す気満々のオーディエンスの熱気でムンムンだ。

ルイス・キャパルディの次にここに登場するのは、 元東京スカパラダイスオーケストラの冷牟田竜之が結成したスカバンドのモア・ザ・マンだ。このバンドには前進のザ・マンというバンドがあり、2016年に活動休止すると聞いた時はガッカリしたものだが、すぐにモア・ザ・マン始動の知らせを聞いて安堵したのを覚えている。しかもザ・スペシャルズを思わせるそのネーミングにニヤリとしたのは私だけではないだろう。

Fanfare Ciocarliaの‟007(James Bond Theme)”が会場に鳴り響くと、白で統一したキメた装いのメンバーが一斉に姿を見せた。フロアに集った全員で手を叩いて迎え入れる。何の前触れもなく、ザ・マン時代のGood Gravyでゆったりとステージをキックオフ。暑い日に聴くのにもってこいはゆるーいバックビートとホーンセクション4組のセクシーなフレーズが絡み心地よい。

ギターのトロピカルなカッティングに乗ってハンドクラップが心地よく響き渡ると、誰もが知るザ・チャンプスの‟Tequila”だ。元晴がステージ前方に出てきて豪快にサックスをブロウし、冷牟田が「Oi! Oi! テキーラ!」とキマりすぎのアジテートでガンガンにフロアの熱を上げていく。続いて披露したのは、ステージのバックにも映し出されている新EP『Eyes Wide Shut Part.1』からのトラック‟Attack of Flame”だ。オーセンティックなスカビートに歓喜し、フロアのそこかしこにスカダンスの嵐が巻き起こる!メンバーが次々と繰り出すソロに観客の反応もどんどんと前のめりになっていく。そのまま‟High Roller”になだれ込み、「Oi! Oi!」アジテートで更にフロアを加熱。エキスプレスでの過去の記事(ドーベルマンザ・マン)で何度も書いたが、やっぱりスカとフジロックはベストマッチなのだ!フジロックてのは年1回、踊り倒して、何もかも笑い飛ばして、生きてるってのを感じる場所だろ?スカはそれにストレートに応えてくれる音楽だ。

冷牟田が「皆さん、フジロックへようこそー!今日も爆発しよう!」とフロアで踊る腕白な少年少女へ向けた‟Hey Boy Hey Girl”でロッキンなスカを投下。この後、ホーンセクションのメンバーが一旦はけ、キーボードが軽快なタッチで、テレビドラマ「傷だらけの天使」のサントラ‟天使の享楽”をまったりと奏でてしばしの小休止。リズムセクションがぶっとくビートを刻みはじまった、‟Charles Bukowsky”。ドイツ生まれでアメリカ育ちのパンクな作家・詩人にインスパイアされた曲だ。元晴がいなたくサックスを吹き上げ、昭和の男臭さ漂ういぶし銀のナンバーに会場が酔いしれる。年配の夫婦と思われる二人が目を閉じて音を感じ入っている。何かを思い出しているのかもしれないし、ただ、今目の前で鳴っている音を楽しんでいるだけかもしれない。ライヴという今この瞬間は生きることそのもの。過去と未来につながっているのだ。

冷牟田とWataruがステージに戻り、疾走スカコアチューンの‟Smash”でフロアを瞬間沸騰させる。モア・ザ・マンの魂が乗り移ったかのような有無言わせない凄い音圧、音量で迫ってくる。ここで、黒のスーツでビシッときめた、冷牟田お気に入りのイエロー・スタッズのフロントマン、野村太一が登場して‟さえずり”をワイルドに歌い上げる。ステージ前方に出てきて、カリスマ然とした超絶シャウトをかまし、フロアを更に沸かせた。

‟Ghost Dog”でまだまだスカ天国が続くと思いきや、今度は‟Body Heat”で会場をガンガンにファンクする。ラストは悪ガキなロッケンローリフが超絶かっこいい‟Reaper”で渾身の音を叩きつけ、ロック野郎どもの尻を蹴り上げて約50分のステージを締めくくった。終演後に「あ~、スカッとした!」とジョークのようなことを飛ばしているオーディエンスがいたが、まったくもって同感だ!

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