FUJIROCK EXPRESS '22

LIVE REPORTRED MARQUEE7/30 SAT

GRAPEVINE

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Photo by suguta Text by あたそ

Posted on 2022.7.30 22:53

デビュー25周年。見る者すべてを魅了し尽くした贅沢な時間

「はい、フジロック!こんにちは、GRAPEVINEです!」という田中和将(Vocal/Guitar)を合図にし、層のように重なるギターのサウンドに乗る金戸覚(Bass)の低音、まず1曲目は“CORE”だった。重心を真下に落としていく亀井亨(Drums)のドラム、突き刺すような西川弘剛(Guitar)のギターに、滑らかに伸びていく田中の声に会場も揺れる。間髪入れずに“光について”のあの心を鷲掴みにされるイントロが流れると、会場からは歓声が起こる。あの、2曲目から飛ばしすぎなんじゃないでしょうか?会場の空気をじっくりと味わうようなそれぞれの音に、その場に立ち尽くしながら耳を傾ける。背後に光るオレンジの照明が美しく、歌詞やメロディに相まってギターソロやアレンジの入ったドラムは、瞬きすらも惜しいほど。

ライブが始まる前、「GRAPEVINEは今年デビュー25周年だそうで、おめでとうございます!フジロックも同じ25周年なんですよ!素晴らしいステージになるでしょうね!」と司会の方は言っていた。25年も何か同じことをしていると、老いを含めた変化というものが誰しも必ず起こるのだと思う。でも、どうしてなんでしょうかね。田中の声はデビュー当時から変わらない。それどころか、年々艶っぽさは増していき、表現力もどんどん広がっているような気がする。聴く度に好きになってしまっている。

最新アルバムから“目覚ましはいつも鳴りやまない”、そして「25年もやってると、夏の名曲もあるんですよ。」という言葉と共にアコースティックギターの温かいイントロから始まる“風待ち”。ミラーボールもゆっくりと回り、心をくすぐるようなギターの音も気持ちがいい。どこか懐かしく爽やかな音に乗る不器用な歌詞を、じっくり聴き入ってしまう。自然豊かな苗場の地でこの曲を聴けただけで、フジロックに来た意味があるような気がした。転調の気持ちいい“NOS”のあとは、ゆっくりとしたドラムから入る“ねずみ浄土”。一曲の中の無数にちりばめられた無音の一瞬が美しく、寄り添うようなコーラスとともにじっくりとステージから聴こえる音楽に身を委ね、釘付けになってしまう。そこからの“Gifted”の流れもたまらなかった。背後で支える高野勲(Keyboards)の不安を覚えるかのような音、「神様が匙投げた」という歌詞に耽美な照明がマッチし、神々しさすら感じる。

今までは胸をグッと掴まれるようないい意味で苦しみを帯びていたが、打って変わってアップテンポな“Alright”には観客たちが左右に揺れ、ハンドクラップも起こる。会場全体がGRAPEVINEに魅了され、一体になっていく。そして、聴き馴染みのあるイントロからの“FLY”。このワクワクするような、じりじりと何かが始まりそうなメロディに田中のシャウトが混じり、全ての音が放出するような始まり方が好きだ。伸びていく声はタイトルの如くどこまででも連れて行ってくれそうな気がしてしまう。

これで終わりなのかな、そう思った瞬間、なんと演奏がはじめられたのは“エレウテリア”。あー、本当にこれは……この曲をフジロックで聴けるとは……。まるでSnail Mailを蹴ってまで見に来た観客たちへのささやかなプレゼントみたいだ。意識的にテンポを落としているのだろうか、音の洪水に飲み込まれながら、ゆっくりとひとつひとつの音を堪能する。狂おしいほどのギターが響くアウトロにも惚れ惚れしつつ、彼らがライブバンドであることを改めて実感する。

往年の名曲から新曲、普段なかなか聴くことのできない曲まで、GRAPEVINEを余すことなく堪能した贅沢な時間だった。誰にでも忘れられないライブとか、記憶にずっと残っている演奏というのは、音楽を好きになった人なら誰しもあるはずだ。それが、今日だった。今日のあの瞬間を、私はこれからの未来に何度も何度も思い出すのだと思う。

[写真:全10枚]

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7/30 SATRED MARQUEE