FUJIROCK EXPRESS '22

LIVE REPORTRED MARQUEE7/30 SAT

崎山蒼志

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Photo by suguta Text by 石角友香

Posted on 2022.7.30 13:48

ここにいる誰よりフジロックの影響を受けてアウトプットした人物

金曜日から苗場入りし、さまざまなライブを見て喰らい、そのせいか緊張して眠れなかったとMCで話してくれた崎山蒼志。いや、間違いなく出演者の中で最もこの場で音楽や人々のヴァイブスを吸収し、すぐに反映しているのはまさに彼なんじゃないかと思った。今年のフジロックに出演しているアーティストだけでもJPEGMAFIAや石崎ひゅーいからも影響を受けている19歳。8月31日にようやく二十歳という脳の新陳代謝抜群な人生の季節を目撃した。

サディスティック・ミカ・バンドの“よろしくどうぞ”をSEに登場し、まず弾き語りで“ソフト”を演奏し始めるのだが、ギターと体が連動して一人でバンドのような大きなグルーヴを作り出す。オーディエンスは圧倒され気味。背が伸びるようにパフォーマーとしてもどんどん大きくなる時だ。もはやアコギのカッティングがすごいとか、そういう域じゃないすごさ。レッドマーキーに人が吸引されてきた。なんだかすごく愉快な気分だ。

サポートメンバーの有島コレスケ(Ba)、GOTO(Dr)、渡辺シュンスケ(Key)も加わり、ラテンのリズムが特徴的な“舟を漕ぐ”と“通り雨、うつつのナラカ”を披露すると、偶然少し風がテントのなかを吹き抜ける。“嘘じゃない”ではエレキギターに持ち替え、ソロもテンプレなフレーズは弾かずにSE的な音を鳴らし、動きも全く読めない。受けたばかりの影響がいい意味で消化されないまま出ているか、もしくは崎山のフィルターを通すと独特になるかのどっちかだ。いずれにしても初めてのなにかを見る気分である。

「ヘイヘイヘイ、ヘイヘイ」とハンドマイクでマイクチェック調に声を発すると、彼の作品の中でも音源ではアブストラクトな宅録シリーズである“Pale Pink”がバンドの生演奏と崎山が操作するサンプラーを融合したアレンジで届ける。このシリーズの自由度は異様に高く、エレクトロやテクノのトラックメーカーには良くも悪しくも作れないフリーキーさがある。それをGOTOの音数を絞ったキック&スネアや、効果的なシンバルなどで生音の奥行きも加えていく。ハンドマイクで音に反応して動く崎山は何をしでかすか全然読めない。走る、飛ぶ、ステージを転がる。運動神経が良さそうに見えないのに(失礼)、実は身体能力も高い人なのかもしれない。

最近の崎山を見ていない人を大いに驚かせたところで、「めちゃめちゃありがとうございます」と感謝を伝え、冒頭の「緊張で眠れなかった」ことも告げた。そして「So Hotですが、ちょっと涼しい曲を。次の曲は撮影OKなので」と、またも新しい側面を世に送り出したばかりの“I Don’t Wanna Dance In This Squall”でファルセットも聴かせてくれた。

さらに昨日からフジロックを楽しんでいるが、一人しか気づかれなかったと話す。「それは別にいいんですけど、こんなにすごい音楽ばかりで、それを楽しんでいる人がいて、すっかり喰らってしまって」と、緊張のワケはそういう柔らかすぎる心にもあるのだろうと、この発言でぐっときてしまった。

その後、演奏したのが15歳のときに作られた“A Song”だったこと、その曲が芯の部分を変えずに音像は変節と遂げているのも嬉しかった。彼の曲で最もポピュラーな存在であろう“Samidare”もそうだ。現在のサポートメンバーである有島やGOTOらが崎山の感性の赴くままに摂取する音楽と、その影響の理解者であることも型にハマらないステージを現実のものにしていたと思う。終演時にはレッドマーキーの最後尾まで人でいっぱい。小学中学年ぐらいの女の子が「楽しかった」と、家族と他のエリアに移動していく様子に、続いていく未来を勝手に見た。新しい世代に幸あれ。

[写真:全10枚]

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7/30 SATRED MARQUEE