LIVE REPORTFIELD OF HEAVEN7/29 FRI
KIKAGAKU MOYO
最初で最後の、そしてここからはじまるステージ
ついにこの日がやってきた!年内で無期限の活動休止を発表している彼らにとって初出演にして最後となるフジロックはフィールド・オブ・ヘブンでのステージ。Austin Psych Fest/LevitationやDesert DazeといったサイケフェスからBonnarooにRoskilde、Glastonburyまで数々のフェスに出演し世界中の音楽ファンを唸らせてきて満を持して苗場に登場だ。
ステージMCのジョージ・ウィリアムズによる「最初で最後になるステージ!いいライブになるのは決まってるよね!幾何学模様!」との紹介挨拶からメンバー5名全員が向き合ってノイズの地下水からじんわりと汲み上げて一斉に音を放出してはじまった“Gatherings”。バンドが一体となって縦横無尽に迫ってくる暑苦しい音の塊は、晴れ渡りうだるような天気と相まって、幾何学模様の世界に一気に持っていかれてしまったのは私だけではないだろう。キメキメのギターソロといい、ワウを踏んでのワカチョコが入ってくる絶妙なタイミングから、ダウド・ポパルの髪を振り乱してのロックスター然とした華があるステージアクションまで、すべてが完璧でヘブン一帯を完全にロック!「カッコいいー!」との歓声がフロアから幾つも飛び出す。ここまでノックアウトされてしまったら、もうそうとしか反応しようがないのがよく分かってしまう。
なぜこのバンドのグルーヴがここまで圧倒的なのか。10年をかけて世界に相手に表現し続けてきた実績に裏打ちされているのはもちろんのことだが、ドラムでバンドリーダーの黒沢剛とベースのコツ・ガイが向かい合ってお互いの刻むビートを確かめ合っていた“Dancing blue”や、“Smoke and Mirrors”で音がとぐろを巻くような極上サイケデリアを生み出しきった後に見せた全員の自然な笑顔にその所以が垣間見えた気がした。それぞれが自由自在にプレイしているようでいて、互いの音をどこまでも聴いて支え合っている。そして、どこまでも自分たちの奏でる音に真っ直ぐなバンドだということが伝わってきた。
そして、ライヴという一期一会な場をオーディエンスと一緒に創り出していることも彼らの非凡なところ。それも特に煽ることなく、自然とやり遂げているのだ。緩急の激しさは聴衆に飽きさせずに参加させる仕掛けだと感じた。ロック愛好家たちなら十人中十人が膝を打つであろう先述のバンドのあり方もオーディエンスに寄り添ったオープンな表現の形なのではないだろうか。胸に手を当ててお辞儀をするダウドにヘブン一帯を埋め尽くしていた聴衆から送られた拍手と歓声のやり取りには思わず目頭が熱くなってしまった。
ラストは言葉遊びの面白さと和謡の調べ、歌の響きにシティポップの親しみやすさも感じさせる“Monaka”。ラストアルバム『クモヨ島』のリードトラックだ。これからが楽しみなこの曲で締めくくってくることに、彼らが足を止めてしまうことがないこと、未来の創作がこれからどう変貌し拡大していくのか楽しみになってきたのは私だけではないだろう。本当にここに居合わせている全員が気持ちよさそうに手をあげ盛り上がっている。終演後も鳴り止まない拍手と満面の笑顔で、方々から「めっちゃカッコ良かった!」「最高だったね!」と興奮が抑えられない様子だ。最初で最後のフジロックが大勝利に終わったことは火を見るよりも明らかだろう。そして、12月3日に東京で最期のライヴが行われることがサプライズ告知された(場所は目黒パーシモンホールとのこと)。幾何学模様としての最期の雄姿をみんなで刮目して堪能しようじゃないか。
[写真:全10枚]