LIVE REPORTFIELD OF HEAVEN7/30 SAT
KYOTO JAZZ SEXTET feat.森山威男
父なる森よ
フジロックで楽しいのは、やっぱりロック・ファンが見逃していたようなアーティストだったり、素晴らしいテクニックを持つジャズ・ミュージシャンに出会えることだと思う。今回、KYOTO JAZZ SEXTETとの出会いも、まさに衝撃的だった。
沖野修也によるアコースティック・ジャズ・プロジェクト、KYOTO JAZZ SEXTETは、日本のジャズドラマーの大御所、森山威男を迎えたアルバム『SUCCESSION』を今年4月にリリースしている。フジロック5年ぶりの出演は、そのアルバムと森山をフィーチャーしたステージとなった。夕方のフィールド・オブ・ヘヴンには、上手から沖野修也(SE,MC)、平戸祐介(P)、小泉P克人(Ba)、類家心平(Tp)、栗原健(Sax)、森山威男(Dr)が並ぶ。沖野が森山の名前を大きく叫び、「いっしょに盛り上がっていきましょう!」と言うと、会場が一気に湧き、そのまま1曲目“Father Forest”がスタート。
この曲は沖野が、森山をイメージして書き起こしたという。森のトンネルをくぐっていくような、神秘的な楽曲だ。類家&栗原の力強いメインフレーズが先陣を切ると、森山は祭囃子のような、にぎやかなドラミングで応える。ここで鍵盤の音がぐっと前にやってきて、トリルしたりスタッカートしたり、力強いアプローチでもって弾ませる。そんななかで森山は、穏やかな、優しい顔をしながらバンドと向き合う。ピアノ・ソロ中、ずっと小泉を見つめ、次の展開を読んでいた。きっとジャズでは当たり前なことなのかもしれないけど、プロの技をしっかりと見せてもらった気がする。
MCでは、「森山のドラムはフジロックで聴きたい」と言われたことがある、という話を披露。このヘヴンの盛り上がりを見て、その意味がよくわかったのだそう。また沖野は森山のことを「出演者の中で最高齢なのかも」と紹介していたが、きっと加山雄三に次いで2番目に高齢の出演者なのではないだろうか(※)。1位2位など関係なく、レジェンドの鳴らすものをこの目で、体で、直接楽しめるのは素晴らしい機会だ。ありがたい。
ごきげんなウォーキングベースと、渋みのあるサックスの音色が重なる“Forest Mode”は、類家&栗原の音のリレーが光る1曲。まずは栗原がどこまで出るのか、未知数なハイトーンで場を盛り上げると、それをにこにこと見ていた類家がバトンをキャッチする。頬を丸くたっぷり膨らませて(すごい!)爆発的なサウンドをメイクしている様子には思わず息を呑んだ。最後、メインテーマに戻ったあとは、森山のソロへ。繊細で堅実な高速連打にオーディエンスは釘付け。大きな盛り上がりを魅せた。
“Kaze”で沖野が、風が吹くような音を響かせたり、“Sunrise”では、森山と栗原の激しいセッションから、音がじゃれあっているような、そんなイメージが空間を駆け抜けた。日も落ちてきた頃に披露されたラスト・ソング“Watarase”は、ラストにふさわしく、しっとりと始まり壮大に消えていった。
「やっぱり、ジャズとロックは野外に限ります」そう言い残して去っていった森山。なんとクールなことか!ときには鬼のように、ときには優しい父のように。レジェンドが教えてくれるジャズは、決して難しいものではなく、懐の深いものだった。
※その後追記……6月24日に87歳の誕生日を迎えた、テリー・ライリーが最高齢。
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